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溺愛幼なじみ未満  作者: 阿衣真衣


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キャラメル

「どうしよう……。やっぱ聞いた方がいい? でもこういうのは聞かないであげた方がサプライズ感あっていいかな…。私の時もそうだったし。っていっても、どれがいいか………」

香水、アクセサリー、キーホルダーなど年中使えるもの。この季節ならではのもの……

一ヶ月後の柊斗(しゅうと)の誕生日でプレゼントに何を渡すか悩んで、メンズ雑貨のお店をウロウロ。


「険しい顔してどうしたんですか?」

「柊斗への誕プレ?」

急に後ろから声が聞こえて振り向くと、にっこり笑って小首を傾げるレオンくんと、いつの間にか隣にマリちゃんも立っていた。

「ビッ……クリしたぁ~…。相変わらず仲いいね。なんでここに?」

「普通に買い物ですよ。そしたら麻琴(まこと)さんが見えて」


「あげるの決まってるの?」

「ううん。まだ……」

「手伝いましょうか? 同じ男だし、さらに従兄弟だから参考になれると思いますよ」

「ありがとう。気持ちだけもらっとく」

「…麻琴さんって、いつも断りますよね。さすがに断られてばかりだと傷つくな~」

「いや、そんなつもりはないんだけど……」

「冗談ですよ。そうだ!もし時間あったら一緒にスタバ行きません? ちょうどマリと行こうかなと思ってて」


見てピンとくるものもなく、この状況で断るのも何だかな~って感じだし、三人ならいいかってことで一緒に行くことに。

「やっと麻琴さんとゆっくり話せそうでよかった」

「……はは~」



私はマリちゃんと並んで座り、レオンくんは対面に。

「聞きたいなと思ってたことが色々あって。この際だから聞いていいですか?」

「…なるべく答えやすい質問でお願いします」

新作のドリンクを一口飲むと、キャラメルの甘さが口にふわっと広がった。


「じゃあ早速。俺のことどう思います?」

「マリちゃんのお兄ちゃんで、柊斗の従兄弟だと思ってます」

「そうじゃないでしょ…」

「正直苦手だと思ってます」と言うのをグッと耐えて続柄を言ったんだけど、すかさず隣からツッコミが入った。

「ん~…外見だけでいうと、美形だな~と思うよ」


「え~嬉しいな~。性格は?」

「変わってる?」

しまったと思った時にはもう遅くて、隣からマリちゃんの吹き出す声が聞こえた。



◇


部活が終わって、自転車で家に向かう。街はクリスマス一色。

(プレゼントは決めたから、あとは当日をどう過ごすか……)

去年は麻琴たちが家に来て、俺の誕生日も兼ねてパーティーをしたけど、今年は付き合って初めてのクリスマスだから、二人でどっか行ったり……。


クリスマスらしさと、麻琴が好きそうな場所を色々考えていると、あっという間に家の近くに。

「柊斗おかえり~」「おかえり~」

声がして顔を上げると、前から麻琴と母さんが並んで手を振って歩いてきた。

「……ただいま…。なんで二人で?」


「買い物してたんだけど、そしたら柊斗のお母さんに会って」

「そうそう。それでね、クリスマスの予定を聞いてたの。私としては、去年みたいにパーティーしたいけど、ほら。二人は付き合って初めてのクリスマスじゃない?柊斗の誕生日だし。もう予定とか決めてるのかな~って」

(あぁ…。やっぱ早めに決めとけばよかった……)


母さんが去年みたいにしたいんだろうなってのは、薄々気付いていたけど、そんなこと麻琴に言ったら、俺と二人でっていうのが飛んでいきそうで黙ってた。けど、まさか二人が会うとは……。


「……あの~…、一つ提案があるですけど。柊斗と二人で出かけたあとに、パーティーをするというのはどうでしょうか?やっぱり、柊斗のお母さんとお父さんも誕生日お祝いしたいと思うし。

 それに、その方が長く一緒にいられるかな~と思うんだけど……」

「うん。そうしよ。俺は麻琴と一緒にいられたらいいから」

「ありがと…うございます」

安心したような、嬉しそうな、少し恥ずかしそうに笑う麻琴の手を、母さんが握った。


「麻琴ちゃん、ありがとね! 食べたいものあったら何でも言って! 

 ホント、家では無表情なのに、麻琴ちゃんの前だとこんな顔するなんてね~」

母さんから、玲華そっくりの言い方とニヤけ顔を向けられた。


そっから盛り上がった母さんが麻琴を夕飯に誘って、一緒に食べることに。

ついでっていうのも何だけど、その日の予定も立てた。

「じゃあ、水族館行って、イルミネーション見て、家ってことで」

「うん! ある意味リベンジだね」


ピロン。俺のスマホの通知音が鳴り、見てみるとレオンから。

〈今日、麻琴さんと一緒に話したよ。楽しかったって伝えといて〉

どういうつもりで送って来たのか、何となく察しがつくけど、残念ながらレオンが想像しているようなことにはならない。

なぜなら、麻琴から二人と会って話したことを聞いていたから。


「レオンからだった。麻琴に楽しかったって伝えてって」

「わざわざ? まあ、楽しかったならよかった。よく分んない質問に適当に答えただけだけど。

 それに、今日はマリちゃんがいたからあれだったけど、レオンくんだけだったら絶対行かないからね。まあ、もうそういうのはないと思うけど」


「二人ともご飯できたよ」

「ありがとうございます。手伝えなくてすみません!片付けはやりますので」

「いいのよ。それより、予定は立てられた?」

「はい!」


母さんに声をかけられて、ソファーから立ち上がる麻琴の背中を見ながら、レオンに返信した。



◇


「ありがとうございました! お邪魔しました」

「こちらこそ。片づけまでありがとね。 いつも静かな人たちと食べてるから、今日は楽しかったわ~。今度は柊斗の誕生日でね」

「はい。よろしくお願いします。 それじゃあ、また明日ね」

「送るよ」


「いや…。ドア開けたら、もう家みたいなもんだからいいよ」

「それでも」

「そうね。この一瞬の隙に誘拐されるかもしれないし。麻琴ちゃんが家に入るまで見送ってきなさい」


大袈裟すぎると思ったけど、二人の目を見たらそんなこと言って断ることもできず、徒歩20秒くらいの距離を送ってもらうことに。

だから当然、玄関のドアを開けて、門を出たら「じゃあ」って感じなんだけど…

「あの…ちょっと手を出してもらっていいですか?」



(手?)

何だろうと思いながら、とりあえず両手を出すと、手のひらに麻琴の手が。

「これ、キャラメルなんだけど、コーヒーと普通の味。よかったら、お母さんにも。今日買ったものだから」

「……ありがと」

ニコッと見上げる顔から目線を下ろすと、手のひらにはそれぞれの味が二つずつ乗せられていた。


(少し期待したんだけどな~……)

「あ。湊さんとお父さんの分も渡した方がいいよね。でもキャラメル食べる? 本当は袋ごとあげたかったんだけど、買ってすぐ開けちゃって。開いてるの渡すのはな~と思ったんだけど、一個ずつの方がケチくさいか」

バッグからキャラメルの袋を取り出そうとしている麻琴の手を止めるように手を重ねた。


「ありがと。俺と母さんの分だけでいいよ。麻琴の食べる分減るし。それにその方が、なんか母さんも喜びそうだから」

「そうなの? よく分んないけど、それじゃあ…」

そう言って、袋から離した手を両手で包むと、少しだけ体に力が入ったようにピクッと動く。


「……手乗せてきたから、握ってくれるのかと思った」

「え? あ、紛らわしいことしちゃっ……そっか。でも、歩いてなくても握っていいの?」

「バスで手繋いでる人たちもいるし、絶叫系で握る人たちもいるから、別に歩いてなくてもいいんじゃない? 

 それに、俺はそうしてほしい」

「そっか……そうだよね。では、私もそうしたいので……」


「なんか、向かい合って両手繋ぐってなかったから新鮮だね」

頬を赤らめながら、握っている手を見つめ「いつもありがとう。また明日」と言ってゆっくり手を離すと、照れくさそうに笑った。

そしていつものように、ドアの前で振り返り俺に手を振り家の中へ。


(なんであんなに可愛いんだろ…)


「しっかり送ってきたみたいね~」

含みのあるニヤけ顔をしながら言ってくる母さんに、麻琴から貰ったキャラメルを渡した。

「これ麻琴から」

「ありがと~。久しぶりにキャラメル見た。柊斗も貰った?」

自分の分を見せながら麻琴の話をすると、母さんの口角がさらに上がった。


「かわいっ。お父さんに自慢しよ~っと。あ、帰ってきた!」

母さんはキャラメルを見せつけるようにテーブルに置き、クリスマス料理の特集ページを開いたまま、父さんの夕食の準備をはじめた。

(キャラメルは、一緒にいると安心できる。だったな……)

たまたま持ってただけってのは分かってるけど、なんとなく嬉しかった。


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