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溺愛幼なじみ未満  作者: 阿衣真衣


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隣は君しか

週明け、マリちゃんがもう柊斗のことは好きじゃないと話題になり、そのことに男子は喜び私はまた謎に感謝された。

なぜか恋愛相談されることが多くなったけど、アドバイスなんて大層なことは出来ない。

そもそも相談してくる人って、本当は自分の中で答え決まってて、後押しして欲しいって人が大半だから、アドバイスなんてしない方がいいんだよね。

そのアドバイスが求めてるものじゃなかったら、ただただ対立するだけだし。だから私は、こうしてみたら?とかじゃなくて、相手の言っていることをまず肯定して、あくまで私だったらって感じで話をしている。

(ていうか、逆に私が色々聞きたいけどね。どうしたら、いちいち照れないで話せるの?とか)



◇


「麻琴さ~ん」

(……げっ)

休日、頼まれたおつかいを済ませてスーパーを出ると、ちょうど入って来たレオンくんと鉢合わせた。

アイドルですか?と聞きたくなるほどキラキラの笑顔をしていて、それを見た周りの人の頬が赤く染まっている。

休日に知り合いに会うなんてほとんどないのに、ましてやレオンくんに会うなんて想像もしていなかった。柊斗でさえ滅多に会わないのに…。

「…どうも。それじゃ……」

会釈をして帰ろうとすると、パシッと腕を掴まれる。

「ちょっと待ってくださいよ。なにもそんなすぐ行く必要ないでしょ。少し立ち話くらいしません?」


2リットルのペットボトルが入っている買い物バッグを持ってまでレオンくんと話す義理もなければ、話すこともない。

「ここで話すのも邪魔になっちゃうし、重たいから申し訳ないけど…」

「じゃあ俺が持ちますよ。このあと柊斗の家に行く予定だし。俺らの家族と柊斗たちでご飯食べるんですよ。それで買い物頼まれちゃって」

「そうなんだ~…でもマジで重いから。それに私、自分のもの人に持たれるの無理な人だから。それより早く買い物して柊斗の家に行った方がいいよ」

掴まれた腕をやんわりほどき、バッグの持ち手を両手でギュッと握ると、「早く中に入れ」と思いながら、自分でも分かるくらい引きつった笑顔でレオンくんに会釈する。

「それじゃあ、早く買い物して追い付きますね」

「(早歩きするしかないな)あはは~…それじゃあ、買い忘れがないようにご(・)ゆ(・)っ(・)く(・)り(・)……」

キラキラスマイルで手を振ってくるレオンくんに背を向けて、私は家に向かってできるだけ早く足を進めた。


足が疲れてきたなと思い始めたとき、また意外な人と会った。

「…古川くん久しぶり」

「うん。久しぶり」

古川くんと会うのは天音ちゃんと涼子さんと喫茶店で話したとき以来。


天音ちゃんは夏休みに古川くんに告白したけど、「そういうのまだ分からないから」と納得いかない返事だったので、天音ちゃんは、

「このまま友だちではいてほしい。そして、そういうのが分かったら、付き合うか、ずっと友だちのままか教えて欲しい」

そうお願いしたみたい。

『好きな人がいるから付き合うのが無理とか、友だちとしか思ってないだったら諦めつくけど、あの返事じゃ諦められないから。それに、これからは私がそういう風に思ってるって意識してもらえるでしょ?

 チャンスがあるなら足掻きたいし、諦めるならスッキリしたい』

そう言った天音ちゃんの顔はすごくかっこよかったし、可愛かった。


(古川くんは今、天音ちゃんのことどう思ってるんだろ……)

「すごい急いでるみたいだったけど大丈夫?」

「え?……ああ、うん。大丈夫。まさかこんな所で会うとはね~…。

 あ、学校祭来てくれるんだよね?天音ちゃんから聞いたよ。えっと…それじゃあ、私はこれで―」

カバンを肩にかけ直して足を踏み出そうとすると、古川くんが、そっと私に尋ねた。



―流星Side


「あのさ、藍葉と付き合ってどんな感じ?」

「ん?」

「その…聞いたかもしれないけど、俺、相原さんから告白されて、でもそういうのよく分かんなくて……嫌いではないけど……

 白木は?どうして藍葉と付き合おうって思った?」


自分でもいきなり何聞いてんだろうと思ったけど、白木は嫌な顔せず照れくさそうに笑った。

「……言われたとき嬉しかったし、好きだなと思ったから。

 私もそういうの分かんなかったんだけど……いや、分からなさすぎたというか…。

 柊斗に告白された日、たまたま柊斗のお兄さんと一緒にいて、そこに柊斗が来たんだけど、そしたら今まで見たことないくらい怖い顔してて、その時になんか知らないけど柊斗の手掴んでお店出てたんだよね~

 柊斗のこと何も思ってなかったら、そのまま普通に湊さん…柊斗のお兄さんと一緒にいたと思うんだけど。

 その前に、他の子が柊斗からホワイトデー貰ったって聞いたときにモヤッとしたし。あと、付き合うってなったら絶対にじゃないけど話をしたり、手を繋いだりするじゃん?それで想像したときに、柊斗がいいなって。

 そりゃあ、みんなそうだろって思うかもしれないけど、柊斗のお兄さんでも想像してみたの。そしたら違ったんだよね…かなりおこがましくて失礼だけど…」


白木は「あはは…」と笑いながらチラッと俺の顔を見ると、軽く咳払いをした。

「あ~…だから、何言いたいのかっていうと、天音ちゃんが他の男子と一緒にいるのを想像してみて胸が痛くなったり、天音ちゃんと手を繋ぐ想像をしてみていいなと思ったら、それは好きに近いってことだと思うし、私みたいに他の人でも想像してみて比較するのも気持ちを知るヒントになると思う……って、これが答えになってるか分かんないけど…」

「……ありがと。参考になった」

「ならよかった。それじゃあ、私帰る―」

「麻琴!」


声のする方向を二人で見ると、藍葉がすごい形相で俺を睨んで近づいてきた。

(やっぱ嫉妬深そうだよな……)

「あ~悪い…俺が―」

「柊斗おつかれ。買い物してきたんだけど、古川くんとたまたま会って、それで話ししてたんだけど、古川くんに学校祭の話と、なんで私が柊斗と付き合ったかの話してて―」

俺が引き止めたことを説明しようとすると、隣に立っていた白木が藍葉に手を振りながら一気に話し出した。


「え?いや、ちょっと待って。速攻で全部話すの?」

あまりにも普通に話し出すから、驚いて止めてしまった。

「あ、ごめん。でも柊斗は人に言いふらすことはしないし…それに、二人で何の話してたかちゃんと言わないと、万が一誤解されたらイヤだから。大丈夫。そこまで深く柊斗は聞かなよ」

ニコッと白木が笑うと、それを見た藍葉の顔が柔らかくなった。

(そういえば相原さんが……)


『二人ってね、色んな事何でも話すの。それで麻琴ちゃんに、わざと内緒にして藍葉くんにやきもち妬かせたり、駆け引きしたりしないの?って聞いたら…

 「信頼なくすし、不安にさせるからそんなことしない」って返ってきたの。でも言われたらそうだよね。つい試したくなっちゃうけど、試されたらちょっとイヤだもん。信頼されてないのかなって。

 それに、きちんと話せば済むことをしないのは、自分から亀裂を入れにいってるようなものなんだって。話さないと分かるはずないし、なにですれ違いが起こるか分からないから。

 聞く側って不安だし、なんで話してくれなかったんだろうって疑っちゃうでしょ?だから、どんな小さなことでも後回しにしないで、話そうって二人で約束してるみたい。

 それに、「柊斗はちゃんと聞いてくれるから!」って、最後はのろけられて…』


「(たしかそんなこと言ってたな…こんなすぐに話すとは思わなかったけど)あ~…うん。藍葉なら」

(それに…あの時のままだと思われたら余計にヤバくなりそうだし)

相原さんから話は聞いてるけど、やっぱり二人が一緒にいるの見慣れないな。まず藍葉のこの顔が信じられないっつーか……

でも、俺もこんな風に―…あ。



◇


「荷物を持っていただきありがとうございました」

「いや、カゴに入れてただけだから」

古川くんと別れた後、柊斗の自転車のカゴに買い物バッグを入れてもらって一緒に帰ってきた。

その間にお店でレオンくんに会ったことも言われたことも全部話した。これから二人会うし、レオンくんが変な言い方しても困るから。

「……それじゃあ、また明日…」

(せっかく会えたからもう少し一緒にいたいけど……そうもいかないよね……)

カゴの中の買い物バッグに手を伸ばすと、柊斗の手が重なった。



たぶん、もう少ししたらレオンが家に来る。でもあと1分、いや10秒でもいいから一緒にいたくて、気付くと買い物バッグを持とうとしている麻琴の手を掴んでいた。

「俺はずっと麻琴の隣にいたいって思ってたし、これからも麻琴以外考えられない」

すぐ言ってくれるから安心するし信じてるけど、それでもやっぱり他の男といるのは見たくないし、声をかけられたって言われると少なからずイラッとする。こんなこと言ったら重いのは分かってるから言わないけど、想像だとしても妬く…


「それは私も同じ…です……。柊斗以外考えられない」

その一言が、どれだけ俺の心を満たしているか分かってる?

「あの―」

「あ~やっぱり追い付かなかったか~… あ、柊斗じゃん。おかえり~。 って、二人で手繋いで何してるの?」

レオンが声をかけてきた瞬間、麻琴がバッグを持ち上げ、その手を掴んでいた俺の手も一緒に上がって妙な恰好に。

「え!? あ、いや、別になにもしてないよ。柊斗ありがと。それじゃあ、私はこれで。食事会楽しんでね」

そう言って小走りで階段に向かい、いつものように家に入る前に振り返って手を振ってくれた。


「え~最後のあれなに? 可愛いね」

(こいつマジで苛つく)

「麻琴に話しかけるなって言ったよな」

「でも、無視するのも変じゃない?」

「無駄に話すな」

「はいはい。ホント麻琴さんが絡むと別人みたいだね。まあ、なるべくそうするよ。でも俺だけ話してないのは寂しいな~。そうだ!マリも一緒に三人で話すのは許可してくれる?二人仲良くなったし。それか四人でもいいよ。どうせ付いてきそうだし」


ヘラヘラ笑って言ってくるレオンに一言言ってやろうと振り向くと、逃げるように家に入っていった。

麻琴はレオンのことをかなり苦手に思ってるから、そういう心配はしていないけど、麻琴がイヤな思いをするのも、あいつが付きまとうのも耐えられない。

(湊よりたち悪い)

さっきまで麻琴と一緒にいて幸せだったのに、レオンのせいで不快な気持ちが混ざってしまった。



「ただいま~…」

「おかえり。買ってきてくれてありがとね」

買い物バッグをテーブルに置き、あとはお母さんに任せてソファーに沈む。

(彼氏がイケメン過ぎると毎日ドキドキして大変だ)


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