ダブルデート
「それで、デートは楽しかった?」
夏休みに入って一週間が過ぎた頃、サッカーの試合を観に結月と一緒に来て、柊斗とプラネタリウムに行った時のことを聞かれる。
「楽しかったよ! バーって星が広がって、ゆっくり観られて、音楽も流れてさ~ あれがHaruの曲だったらヤバかったわ! そうだ!ちゃんと写真も撮ったよ~」
前回のデートでは写真を撮らなかったが、今回はちゃんとツーショットを撮ったことを結月に見せる。
「いいじゃん! 若干距離あるけど…まあ、そこが二人らしいか~」
「はは… お互い写真慣れてなくて…」
「あぁ~それ分かる。 特に自撮りだと、ちょっと緊張するよね~ 私も得意じゃないし。 でも、これから写真増えてくといいね」
「うん」
―
試合が終わり柊斗と朝陽と合流すると、四人で駅に向かって歩く。
「明日部活休みになったんだよね? もし、予定なかったら一緒にどっか…」
「行ける」
麻琴が言い終わらないうちに返事をした柊斗は少し恥ずかしそうな顔をした。
「よかった!じゃあ…」
(今のなんか可愛かったかも… 柊斗には言えないけど)
「楽しそうなところごめんね。 明日、朝陽と出かける話してたんだけど、よかったら二人も一緒に行かない?
ちなみに、ショッピングモール行く予定なんだけど」
柊斗と話をしていると、後ろから結月が声をかけてきた。
「い… あっ、でも…」
(行きたい…けど……)
結月に返事をするのを躊躇い、チラッと柊斗の顔を見る。
(行きたそう… 本当は二人がいいけど…まあ…)
「―…麻琴が行きたいならいいよ。 ある程度四人で回ったら、二手に分かれて回るのもいいし」
「! ありがと~ ということで、行きます!」
「やった! そしたら~…」
麻琴と結月が明日のことについて話始めると、朝陽が柊斗の肩に手を置いた。
「悪かったな。 なんか、どうしても二人と一緒に行ってみたいって…
まあ、俺も二人が一緒にいるところ見たいから止めなかったんだけど」
と、いたずらっ子のようにニカッと笑う朝陽。
「麻琴も楽しそうだし別に…」
「ホントか? 顔はそう言ってないけど?」
―
二人と別れたあと、家まで手を繋いで歩く柊斗と麻琴。
「明日なんだけど、ゆづが朝陽くんの誕プレ買いたいんだって。
それで、一緒にお店回りながら朝陽くんの欲しいもの探って、買うときは離してほしいって言ってて、柊斗にも協力してほしいって」
(なるほど。それで一緒に行きたがってた訳か…)
「その…お願いしていいですか?」
パチンと両手を合わせてお願いする顔は真っ直ぐと柊斗の顔を見上げている。
「―…いいよ。 俺も何買おうか考えてたし」
「ありがと。 じゃあ明日は、ゆづのためにも朝陽くん観察しないと」
真っ直ぐ見ていた顔は、すぐに進行方向に戻ってしまった。
(なんか楽しそうだな。 でも友だちの為とはいえ、それはちょっと…… 早めに聞き出すか)
「じゃあ、また明日」
「うん。明日…」
柊斗がそのまま見ていると、アパートの階段を上がった麻琴がクルッと振り返り、恥ずかしそうに笑って手を振ると家に入っていった。
(今日もやってくれた…)
離れたくないなと思いながらも、この瞬間が幸せで楽しみになっている。
「ただいまー」
(いつも最後まで見送ってくれるけど、その時の顔が……顔が良すぎる!
なに?あのちょっとニコッと笑う感じ! しんどいって!)
―
「やっぱ夏休みは人多いね~」
駅で待ち合わせをして、ショッピングモールに着いた四人。
「麻琴… 昨日お願いしたことなんだけど…」
「大丈夫! 柊斗にも頼んどいた」
「ありがとー 助かります」
自信満々に結月にオッケーポーズをしてニコッと笑う麻琴。
「…なんか、後ろからすごい視線感じるんだけど…後ろ何か変?」
「別に変じゃないよ」
結月が後ろを歩く麻琴をチラッと見ると、真剣な顔で朝陽を見ていた。
(麻琴に頼んで大丈夫だったかな… まだお店にも入ってないんだけど…)
初めは心配していた結月だったが、二人の協力もあり無事プレゼントを買うことが出来き、四人はフードコートでお昼にすることに。
「こうやって四人で出かけることになるなんて思ってなかったな~
そういえば、二人っていつも家の前で待ち合わせてんの?」
「うん」
朝陽からの質問に食べながら答える麻琴。
「へぇ~」
「でもさ、漫画とかで家が隣同士の二人が初デートの時、待ち合わせしてみたいって言ってやるじゃん? いつもと違う感じがほしいとか、待ってる間ドキドキみたいな。ああいうのしたいとか思わないの?」
「…わかってないなぁ~」
結月に言われた麻琴はため息を吐きながら首を振った。
「待ち合わせして、柊斗が先に着いて囲まれたり話しかけられたりしてたら… その中に行くなんて、想像しただけでも怖いよ。 てか、待たせるのも申し訳ないし。 まあ、私が先に着いとけばいいと思うんだけど、そしたらなんやかんやで同じタイミングで家出るか、途中で会いそうだし必要ないかな~って。
その前に、家の前で会うなんてこともなかったから、いつもと違う感じとかないし」
「…なるほど。めっちゃ納得」
「ああ~…たしかに。 二人は家の前でが一番いいかもな」
ニヤッと笑いながら柊斗を見る朝陽。
「…」
フードコートを出て、別々に行動をすることにした四人。麻琴と柊斗は気になるお店を見て回った後、朝陽へのプレゼントを買いに行くことに。
「そうだ! 私も、ゆづの誕プレ買おうかな。朝陽くんの誕生日終わったらすぐだし。 朝陽くんと色違いのものにしよ~。 あと、朝陽くんにはお菓子渡そうかな。 柊斗のと一緒に入れていい?」
「いいよ」
朝陽が欲しそうにしていたカバンを見ながら、それぞれに似合いそうな色を選び購入した。
プレゼントを買い、お店を出ると麻琴に向かって手を振りながら女性が近づいてきた。
「涼子さん!こんにちは~」
手を振っていたのは涼子で、隣には暁翔がいた。
「こんにちは。 もしかして…と思ったんだけど、当たっててよかった~。 デート?」
「まあ…はい。 あっ、今別行動してるんですけど、友だちも一緒に来てて…」
「ということはダブルデート!? いいね!いいね! 学生って感じ!憧れる!」
女子二人がキャッキャと話している隣で、男子二人はそれぞれの彼女を見つめながら微笑み、会話をする。
「やっぱさ、楽しそうにしてるの見るだけでもいいよな~」
「はい」
「いいな~ 学生って。 学校でも一緒で休みの日も一緒にいられるって。大人になったら難しいから、今のうち楽しんどいた方がいいよ。 上から目線だけど」
「いえ、分かります」
(ホントそうだよな。 家が隣っていっても、約束しないと会えないし、付き合うまで学校以外で会うことなかったし…
今こうやって一緒にいれるの大事にしないと…)
「久しぶりに会ったけど、麻琴ちゃんの彼氏やっぱイケメンだね~ 私の時、こんなイケメン学校にいなかったよ~」
「…涼子さ、それ彼氏の前で言うことか? 俺だって、中学の時まあまあモテてたよ?」
「そうだね。でも、その時の私はチャラい人苦手だったから。 今もチャラい人苦手だけど… やっぱ男は硬派がいいよね~?」
同意を求めるように涼子が言うと、麻琴は笑顔で頷いた。
「ですよね! 誠実で一途なのが一番ですよね~ だから私……」
麻琴が言いかけて恥ずかしそうにすると、柊斗は口を覆いながら遠くを見る。
そんな二人を見て涼子と暁翔はニヤニヤ。
「―っ!かわいい! うん、うん!誠実で一途が一番だよね。 はぁ~今のきゅんとしたぁ~
いつも話聞いてるけど、実際に二人並んでるの見たら可愛い過ぎる!」
「俺の高校の時とは正反対だな」
「比べるのも間違ってるよ」
「ひどっ!」
二人のやりとりに、恥ずかしがっていた麻琴と柊斗も思わず笑ってしまった。
それから少し立ち話をしていると、朝陽と結月とも会い、カフェで話をすることに。
「なんか合コンみたい」
三対三で座ったので、朝陽がボソッと呟いた。
「柊斗が甘いものって珍しいね」
いつもコーヒーだけの柊斗がドーナツを頼んでいるのを見て、意外だなと思った麻琴。
「…どっちにするか悩んでたから。 俺が頼んだら二つ食べれると思って」
「あっ、ありがとうございます… じゃあ、半分しよ」
照れくさくてお互いの顔を見れないまま、スイーツを半分に切り、お皿に移す二人。
「シェアとは、仲がいいですね~」
二人の様子を見て結月がニコニコしながら言うと、他の三人も結月と同じような表情で二人を見ていた。
―
「楽しかった~ まさか、涼子さんたちにも会えるなんて! 色々話せてよかったなぁ~ 一緒に来てよかった!」
「俺も楽しかった。 それに……」
チラッと麻琴を見ると、結月への誕生日プレゼントを見ながら満足そうに笑っていた。
「それに……朝陽のも買えたからよかった」
「だね! 私もゆづの誕プレ買えたし! あと~…」
ずっと笑顔で今日のことを話しているのを聞きながら、柊斗は麻琴が涼子に言いかけた言葉を思い出す。
(それに…あの時ハッキリとは言わなかったけど、だから俺のことが…って思っていいよね?)
…
「可愛かったぁ… 学生時代戻りたいな~」
「俺も中学戻りたいな~ そしたら、席もずっと涼子の隣で授業も出て、付き合って…」
「それはない」
「なんで!?」
バッサリと切るような涼子の言い方に、思わず大きくなった暁翔の声が車内に響いた。
「いや、中学の時の暁翔、まったくタイプじゃないし。 もしそうなったとしても、そっちのメンバーに絡まれそうだから、嫌かも」
「―…あぁ~ たしかに。 そういうの嫌そう… じゃあ、俺戻らなくていいや!」
「うん。 まあ、私は戻りたいけど」
「えー?」
「冗談、冗談。 今が楽しいよ」
―
「今日もありがとうございました。 明日、部活頑張ってね」
「うん。 ありがと。 じゃあ、また」
「―…また…」
そう言うが、動く気配がなく俯いたままの麻琴。
「どうした? 気分悪くなった?」
俯いている顔を覗き込むと、急に麻琴が顔をバッと上げる。
「―…っ! その…涼子さんとの話で、誠実で一途な人がいいって話になった時…
あの時、だから私は柊斗がすっ…好きです。って言おうとしてました! ……以上。また連絡するね。バイバイ!」
顔を真っ赤にした麻琴は、早口で言い終わると、階段を一気に上がり、いつものように振り返って手を振ってから家に入っていった。
「―………っ… だから、そういうところだって…… はぁ~…」
いつも頑張って耐えていたが、この不意打ちには耐えられず、柊斗は頭を抱えたまましゃがみ込んでしまった。
(……心臓もたねぇ…)
「緊張したぁ…… ヤバッ、まだ心臓ドクドクしてる…」
机に突っ伏していると、自分の心臓の速さを感じる。
「いや、言わないでおこうとも思ったけど、言いかけてやめられた方は気になるよね… 勘違いとかあっても怖いし、ああいう小さなことからすれ違いとかはじまるし… うん、伝えられてよかった。 頑張った!」
独り言を言っていると徐々に気持ちが落ち着いてきた麻琴は、ふぅ~っと息を吐いて立ち上がった。
ピロン。立ち上がったと同時に通知音が鳴り、ビクッと肩が上がる。
「…ビックリしたぁ…… 誰だろ」
カバンからスマホを取り出して確認すると柊斗からで、落ち着いていた心臓がまた大きく跳ねた。
〈さっきの嬉しかった。ありがとう〉
「うっ……」
麻琴は柊斗からのメッセージを見て、また机に体が沈んでいった。
(やっと落ち着いたのに..)




