最高の夏休みになる予感
今日で一学期が終了するので、学校では朝から夏休みの話で盛り上がっていた。
「明日から夏休みだよ~ みんな、デートで忙しいと思うけど私とも遊んでください」
桃花が麻琴の肩に頭を乗せて甘えるように言うと、その桃花の頭に自分の頭をちょこんと乗せる麻琴。
「もちろんですよ~ どこ行く? 何したい?」
麻琴が桃花に聞くと、色々と話が出たので、向かいに座っていた天音と結月が、
「今のうち予定立てちゃう?」
「そうだね。とりあえず決めちゃって、あとから何かあったら連絡すればいいし」
と言い、そのまま遊ぶ日程を決めることに。
麻琴たち四人が夏休みについて話をしているのを少し離れた席から見ていた柊斗と朝陽。
「ま~た見せつけられてんな~ お前を揶揄う女子なんて、あの三人くらいじゃね?
まあ、俺的には見てて面白いけど」
まだ肩に頭を乗せたままの桃花は、柊斗と目が合うとニヤッとドヤ顔。
「―…っ」
「自分が出来ないからって、ヤキモチ妬くなよ~ ほら、明日から夏休みなんだから、二人でどこ行くか考えとけって。なんなら俺がアドバイスしようか?」
「……いらね」
(夏休みか… 顔見れるの減るから嫌なんだよな…… 小学生の時はラジオ体操あったからまだよかったけど… 中学とがほとんど会ってないし、去年も五回くらいだし…
でも付き合ってるから、さすがにいつもよりは… いや、約束しないと会える可能は性低い…
朝陽に言われたからじゃないけど、誘うために一応確認しておくか。そういえば前に、プラネタリウムに興味あるって言ってたよな。まずはそこで…
そういえば、前に誘ってほしいって言ったけど誘ってくれるかな……)
スマホにメモしていたスポットや、イベント、映画などの情報を見ながら朝陽と話をしていると、麻琴が近づいてきた。
「あの~話してるときにごめんね…」
「いいよ。どうした?」
「部活休みの日って、今分かる? みんなに聞いてみてって言われたんだけど…」
そう言うと、チラッと三人の方を見ながら、少し恥ずかしそうにした。
(話しかけてくるなんて珍しいと思ったら、あの三人か… まあ、話せるからいいや)
「うん。今のところ~…」
柊斗が部活が休みの日を伝えると、それを麻琴がメモする。
「ありがと! お話し中、失礼しました~」
(聞けてよかった~ これで、柊斗が休みの日に予定入れちゃうってこともないし、それに……
誘ってほしいって言ってくれたから、夏休みは絶対に…)
「戻るの早っ。 何か話したりすんのかなって期待してたのに~」
満足そうに三人のところへ戻って行く麻琴の様子を見ながら、朝陽がボソッと呟く。
「てか、このままじゃお前よりあの三人と会うのが多かったりして! まあでも、家隣だからいつでも会えるか。 いいな~」
「……」
「あれ?そうでもない感じ? どうする?俺たちもあっち行く?」
「聞いてきたよ~」
麻琴が戻ると、三人はニヤニヤしながらもどこか不満そうな顔をしていた。
「ありがとうだけど、帰ってくるの早くない? 休みの日聞いたついでにデートの予定とか話し合ってきなよ~」
「そうだよ! 二人が話してるの貴重なんだから、もう少し見せてよ~」
「……そんなこと言われても…」
桃花と天音は、何のために行かせたと思ってんの~と麻琴に詰め寄った。
「だから言ったでしょ~ 麻琴のことだからすぐ戻ってくるって。 朝陽もいたし、余計に話さないよ。
それより、麻琴が聞いてくれたし予定立てちゃお!」
(え? もしかして、ああいう時なにか話すべきだった? またやっちゃったか…)
麻琴は柊斗をチラッと見て、目をギュッとつぶった。
―
「それで、桃花ちゃんの家にお泊まりするし、四人でカラオケも行きたいね~って話して…」
横で楽しそうに話をする麻琴と一緒に、自転車を押しながら帰り道を歩く。
「そうだ!来週のサッカーの試合、ゆづと応援行くね」
「うん、ありがと。 でも、三年メインだから俺も朝陽も少ししか出ないと思うよ。出るかも分かんないけど」
「まあ、少しでも観られたらいいな~って感じで行こうって。ゆづが、一回は試合観てみたいんだって。私も観たいし。 …あ、でも来てほしくなかったら…」
「いや、来てくれたら嬉しい」
「…よかった」
(この流れなら…うん。言えそうな気がする。 でも、誘うのがこんなに緊張するものとは…帰り誘うのは大丈夫になったのに… いや、一緒に帰ってくれてる今がチャンスだし、よし、言おう…言いますよ…)
ドキドキする胸を落ち着けるように小さく深呼吸すると、パッと顔を上げて柊斗の顔を見る。
「―…あの…プラネタリウム行ってみたいなと思ってるんだけど、もしよかったら一緒にい…行きませんか?
その…柊斗が部活休みの日は予定入れてないから、柊斗が行きたい日で… 暇だなと思ったときにでも連絡くれたら…
あ、プラネタリウムが気分じゃなかったら他のところでも! 部活もあって忙しいと思うけど、せめて一回は一緒にどっか行きたいなぁ…と思ってます…」
緊張しているのか、返事をする隙も与えないほど早口で話をする麻琴の様子に、自転車のハンドルを握る柊斗の手に力が入った。
(…誘ってくれた! しかも、俺が休みの日は予定入れてないって……嬉しすぎる! でも…)
「じゃあ、明後日はどう? プラネタリウム」
「…いいの?そんな早く」
(早いって何だ?)
「うん。 それと…あの三人より俺の方が会う回数多い方がいいんだけど」
ニコッと微笑んでいた柊斗の顔が、少し不満そうな表情になり、麻琴はどういう意味だろうと考えた。
「三人…? ―…ああ!……はい。 じゃあ、また誘わせていただきます…」
「うん。俺も連絡する。 それで、明後日は大丈夫?」
「うん! よろしくお願いします」
柊斗がメモしていたプラネタリウムの施設を見ながら、明後日の約束をする二人。
(良さそうなところメモっててよかった。なんかもう楽しそうだなぁ。 プラネタリウム以外にも色々あるし、また誘おう。
夏休みなんてなくてもいいと思ってたけど、会う時間増えるならいいな。 せめて一回って言ったときは焦ったけど、さっきので意味分かってくれたみたいだし。 明後日は一緒に出かけられるって…最高かよ。)
(誘えてよかったぁ~ しかも、明後日には会えるって…嬉しい! 楽しみだな~ 色々メモもしてくれてて…
それに…ゆづ達より会う回数多い方がいいって…)
自然と上がってしまう口元に、嬉しさと照れを感じながら、今までで一番の夏休みになる予感がしている二人は、早く明後日にならないかなと考えながら、ゆっくり帰り道を歩いた。




