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幼なじみ未満。こじらせ初恋に決着を  作者: 阿衣真衣


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20/22

初デート

初デートの服装で大切なのは清潔感と、爽やかで、優しい印象。というのをネットで見て、クローゼットを開けるが、入っているのは白黒ばかり。

(爽やかって、何色だ?)


午前中の部活を終え、急いで帰り出かける準備をする。

悩みながら選んだ服に着替え、髪を整え、玲華(れいか)からもらった香水をつけて、何とか約束の時間に準備が間に合った。

(変じゃないよな…)


(この格好でいいよね… 変じゃないよね?)

遊園地に行ったときは、急遽五人で行くことになったし、クリスマスの時はまだそこまで柊斗(しゅうと)のことを意識していなかったから、髪型や服装もそれなりだったけれど、今回は初デートという特別な日なので、服もお気に入りのものを出して合わせて決め、髪型も調べて、服に合わせて何度も結び直して、ようやく決まった。


(5分前… 一応、柊斗に準備大丈夫か聞いてみよう)

〈部活おつかれ。出かけられそう?〉


〈準備できたよ〉

〈了解。じゃあ、降りるね〉

(こういう時、家が隣っていいな…)


返信が来たのとほぼ同時に降りてきた麻琴(まこと)の髪はハーフアップで、袖が少しふわっとした淡いピンクのトップスにゆったりしたデニムの春らしいコーディネートだった。


(―…可愛い… いや、いつも可愛いけど)


(やっぱ、かっこいいなぁ…)

コーチジャケットに白のTシャツと黒パンツのカジュアルだけど落ち着いたコーディネートは、柊斗の雰囲気にぴったり。


何度かお互いに私服は見ているが、今日は特別緊張してしまう。


「おつかれ」

「…かわっ… ……なんか、洋服が春って感じで…いい……」

(なんだいいって… なんで素直に可愛いって言えないんだよ……)

心の中では何度も言っているのに、口に出そうとすると、照れてどうしても言えない…


「あ、ありがとう…ございます… 柊斗もかっ……シンプルで似合ってていいね!」

(ダメだ…かっこいいって言いたかったのに、恥ずかしくて言えない…

でも、洋服いい感じって言ってくれて嬉しい…!)


(照れて敬語になってる。 いいってことは、この格好も大丈夫そうだな)

「ありがと… それじゃ、行こっか…」

お互い照れてしまい、沈黙のまま歩き出す。


((早く素直に、可愛い・かっこいい って言えるようになりたい……))



(―…やばい、緊張して何から話せばいいか…

 でもまずは、どこに行くか伝えないと。言わないまま着いて気分じゃないとかだったら困るし…)

「あのさ、水族館行こうと思ってるんだけどいい?」


目的地を聞き、顔を少し上に上げ、柊斗の顔を見ながら「水族館……」と呟くように言う麻琴。

(もしかして、気分じゃない? やっぱ事前にどこ行きたいか聞いとけばよかった……)

麻琴の反応に失敗したと反省していた柊斗だったが、


「いいね。水族館! 小四以来行ってないかも。行き先考えてくれてありがと!」

楽しみと言いながら笑う顔を見てホッとした。

(よかった… 意外だったから驚いただけか)


「なんで水族館に行こうと思ったの?」

「Haruが好きって言ってたから、麻琴も興味あるかなと思って」

観覧車の時もそうだったけど、麻琴はHaru関連には敏感だし、積極的になる。

だから、どこに行こうか考えたとき、ここなら喜んでくれるんじゃないかと思った。


「そう!実は行きたいなと思ってたんだけど、一人で行くのも何だし、かと言って誘う人もいないから、どうしようかと思ってたんだよね」

「…そういうときは俺誘って」

「―……ああ!うん。ありがとうございます。 じゃあ、その時はよろしくお願いします」


麻琴は照れたり、恥ずかしいと思うと返事が敬語になる。これは、話すようになって気付いた。

(わかりやすくて、可愛い)


「それじゃあ、柊斗もそういう時誘って! どっちかが誘ってばっかだと気遣うから」

「わかった」

(誘われるし、誘ってもいいって…それ俺にしか得ないけど)


他にどこに行ってみたいとか、何をしてみたいか話していると水族館に着いた。


「おぉー 久しぶりに来たー」

誕生日プレゼントだからと、柊斗がチケット代を出してくれた。

「行こ」

「うん。ありがと」

チケットを受け取り、水族館の中へ入る。


「きれー…」

静かに水槽を見つめる横顔には笑みが浮かんでいる。

麻琴は、水槽下の説明を読みながら頷いたり、魚を見てホントだと呟いたり、面白いことが書いてあったのか笑ったりしている。

(正直、麻琴見てる方が楽しい)


「この魚~なんだって」と説明文を読んで聞かせてくれたり、隠れていたり、面白い動きをしている魚を見つけると、指さして見せてくれる顔は、ずっと笑っていて、楽しんでくれているのが伝わってくる。

(ここにして正解だったな)

そう思うと自然と笑みが溢れた―




(私は楽しいけど… 柊斗は楽しんでるかな?

ずっと私のペースだし、話しかけたら反応はしてくれるけど…)


「これ」

水槽を見ながらそんなことを考えていると、隣にいた柊斗がスマホの画面を見せてきた。

「?」


見せてくれたのは、石の後ろに魚がいる写真。

「あれ、こっちからは全然見えない。 視点でこんな違うんだ… おもしろいね~」

(魚探して、思ったより楽しんでるみたいでよかった)


撮った写真と水槽を比べている麻琴。

(撮ってよかった。石の後ろにいた魚に感謝だな)



館内の水槽をすべて回り、グッズコーナーを見ることに。

ぬいぐるみや文具、雑貨、アクセサリーなど、可愛いものから面白いものまで様々ある。


「何か買う?」

「ん~…」(いいのあったら、柊斗にお礼で買いたかったけど… それに…)


(可愛いって言ってるのは結構あったけど、そこまで欲しいってのはなさそうだな…

 ―…コレ、いつ渡そう…)


「ごめん、ちょっともう一回あっち見てくるね」

「うん」


(これさっき、可愛いって言ってたな)

麻琴の後ろを歩いていたが、麻琴が可愛いと言っていた、水色とピンクのグラデーションカラーのクラゲのキーホルダーが目に入った…


麻琴は文具コーナーへ。

(あっ、これ柊斗っぽい。普段使えるし。これにしようかなぁ……

 ん~… 柊斗何見ても反応薄いから、どんなのが好きかいまいち分かんなかったんだよな…)

商品を手に取り、柊斗のいる方を見ると、商品を見て悩んでいるようだった。


(もしかして、欲しいのあった…? さりげなく見に行こうかな…

 でも近づいたら気付きそうだし、声かけたら何でもないって言いそうだし、それで別行動しようって言ったら変だよね…

 やっぱ、こっそり買うなら今がチャンスか…… よし!)



会計を終え、さっき柊斗を見かけたところに向かうがいない。

どこだろうと、キョロキョロしながら店内を歩くと、レジのところに柊斗がいた。

(嘘、欲しいのあったの…? もう買っちゃったんですけど… 完全に先走った…)


会計を終えると、レジの出口のところに麻琴が立っていた。

(袋持ってる… やっぱり付いていけばよかった… それか、俺が買うからって言えばよかった…

 でも、そんなこと言ったら遠慮するんだろうな…)


((一緒に来て、内緒でプレゼント買うって難しい…))


「待たせてごめん」

「いえいえ。 欲しいのあってよかったね…… ちなみに、何買ったの?」

(今後の参考にしよう…)


麻琴に聞かれた柊斗は商品の入った袋をスッと差し出す。

「麻琴に… 本当は欲しいのあげたかったんだけど…」

?「―…え? 私に?」

「うん」


「ありがとう… 中、見ていい?」

聞くと、黙って頷く柊斗。

(てっきり自分の買ったと思ってたのに、私にだったの? あれ…これって)

「可愛いって見てたのだ… ありがとう!めっちゃ嬉しい! わぁ、やっぱ可愛い…」


(喜んでくれてよかった… でも、麻琴は何買ったんだろ。 一緒に回って見てたときは、このキーホルダーが一番反応よかったけど…)

早速カギつけよ。と言って、麻琴はバックからカギを取り出し着けはじめる。


「できた。 本当にありがと! その…実は私も柊斗に買ったんだけど…」

「……俺に?」

今度は麻琴が柊斗に袋を差し出す。


「今日のお礼と、一日早いけど……一ヶ月なので、記念になればと…

 でも、何が欲しいか分かんなくて、見た中でこれが柊斗っぽくていいかなと、思って…」

「…ありがとう。 俺も見ていい?」

「どうぞ…」


(自分のじゃなかったんだ… しかも、一ヶ月記念って… ホント、急にこんなことされたら、心臓持たないな…)

喜びを噛みしめながら、高鳴る心臓を抑え袋を開ける。

「…ボールペン?」

麻琴からのプレゼントは、サメのシルエットと水族館のロゴがシルバーで小さく入っているネイビーのボールペンだった。


「使えるものがいいかなと思って…

 でも、考えたら柊斗の好きなものとか知らないから、イメージで選んじゃったんだけど…」

(やっぱ、いらなかったかな… あんまこういうデザインが入ってるの好きじゃなかったかも…

 今からでも欲しいの聞いて、それ渡そう―)


「ありがとう。大事に使う」

その言葉を聞いて、柊斗の顔を見ると…

(バレンタインの時と同じ顔―)

「よかったぁ。どういたしまして。 でも、まさかお互いに買ってたなんてね」


安心したような麻琴の笑顔に、どんどん心が満たされていく。

十年思い続けて、付き合えただけでも幸せだと思っていたのに、一緒に出かけて、話して、笑って、プレゼントまでくれて、どんどん幸せが増えていく…。

(今まで見られなかった分、これからたくさん笑った顔が見たい…)


「―…あと、これ。 一日早いけど、誕生日プレゼント…」

「え? あ、ありがとうございます。 こっちも開けていい?」

また黙って頷くが、さっきより少し恥ずかしそうに横を向いていた。

(てっきり、水族館のチケットが誕プレだと思ってた…)

柊斗から受け取った箱を開けると、中にはピンクゴールドの桜のネックレスが…

「―……っ」


(何も言わない… え?気に入らなかった? 桜好きっていってたし、こういうデザイン好きそうだと思ってたけど…

もしかして、ネックレスってのが嫌だった? 初めての誕生日プレゼントでアクセサリーは重いとか? って、そういえばアクセサリー着けてるの見たことないから、元々好きじゃない…?

やっぱ、それとなく何が欲しいか聞いた方がよかったか………)

黙ったままの麻琴に声をかけれず、ただじっと見つめる事しかできなかった。



(―…めっちゃ好き… え?何でこんな私の好み、ど真ん中のプレゼント探せるの!?

ホワイトデーの時もそうだったけど、すごすぎる… こんな可愛いネックレス、見たことない…

やっばいな~ 嬉しすぎてちょっと泣きそうなんだけど… 柊斗がずっと想ってくれているってだけでも信じられないのに、付き合って、毎日夢みたいで…それなのに、こんな……)


「―………っ、嬉しすぎる! ほんっっっとうにありがとう! なんで、こんな私の好きなものドンピシャで見つけられるの? すっごい可愛い!」

急に顔を上げ、声を少し震わせながら言う麻琴の目は少し潤んでいた。


ネックレスの箱を両手で握りしめ、おでこに当てながら、嬉しい…本当にありがとう…。と呟き、全力で喜びを噛みしめているその姿を見ると、さっきの不安は全て消え去り、胸が熱くなる―


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