12年目
新学期。
今日は午後に入学式があるため、午前中で学校が終わり。部活もないということで、六人で喫茶店へ。
「二人とも久しぶり~」
中に入ると、涼子と彼氏がテーブル席に座っていた。
バイトは辞めても予定が合えば、たまに一緒にここで話したいということで、早速実現した。
そして、せっかくだからと四人を連れて会うことに。
「あ」
涼子の彼氏が柊斗の顔を見て驚き、声を出す。
「暁翔、どうした?」
「いや、実は…」
暁翔は、自分が美容師をやっていて、柊斗がお客さんであることを説明。
(こんな偶然があるんだ… 世間は狭いな)
軽い自己紹介をして、食事をしながら話していると、ほとんど初対面だったにも関わらず盛り上がった。
「あの子が、言ってた子だよね? うまくいってよかったじゃん」
「…はい。その…いろいろありがとうございました。」
(次会ったときはいい報告したいなと思ってたけど、本当に出来るとは…)
柊斗と暁翔がコソッと話していると、向かいの席に座っていた天音と桃花が二人を見て呟く。
「それにしても、二人並ぶとすごいね…」
「うん。キラキラしてる…」
二人の言葉に、結月と朝陽も黙って頷く。
彼氏を褒められた二人の彼女は、少し身を乗り出し隣に座っている二人の顔を見る。
「「ほぉ~」」
((―…まじ、そういうとこ!))
普段顔をしっかり見てくれない彼女から見られて、二人は彼女の可愛さと、気恥ずかしさから上を向く。
同じ動きをする二人に、みんなが笑う。
「そういえば、麻琴ちゃん新しいクラスどうだった? 藍葉くんと付き合ってるから、何かされたりとかない?」
天音の疑問に、みんながたしかに、と麻琴を見る。
「それが…
―
「白木さん、私達これからも藍葉くん見て騒ぐことあるけど、あくまでアイドル的な感じだから、恋愛感情はないから安心して」
「藍葉くんは、見れるだけでいいって言うか…」
「実は、後夜祭で二人見たときから応援してた!」「私は藍葉くんが白木さん助けたとき、こうなったらいいなと思ってた!」
「白木、ありがとう。藍葉に彼女ができたら、俺たちにも女子が回ってくるよ」
「イケメンに彼女できるの賛成!ありがとう!」
―…って感じで、よくわかんないけど嫌がらせとか全く…
逆に応援?してくれてるみたいな感じだったよ」
『それはそれは…』
まあ、柊斗は顔はいいけど、愛想ないし、話しかけても無反応だし、麻琴以外興味ないから、女子達は鑑賞的な感じなんだろう。
男子たちからしたら、女子の関心がいつまでも柊斗一人にあっても困るから、麻琴と付き合ってくれてありがたいんだろうな。
麻琴の話から、朝陽、結月、桃花、天音は、そのことを察した。
「平和でいいね」
「……あん時はマジで、すみませんでした…」
「? なにが?」
涼子の言葉に、申し訳なさそうにしている暁翔を見て、この二人は色々あったんだろうな…と察するみんな。当の本人は、なんで謝られているのか分かっていない様子。
(暁翔さんモテそうだから、涼子さん大変だったのかな?)
―
「二人とも話しやすくて楽しかった~」
「まさか、涼子ちゃんの彼氏がカウンターに座っていた人だったなんてね~」
「あの人と柊斗と仲良さそうなの意外だった。お前、ああいうタイプ苦手そうなのに」
「まあ…」
「なんか、涼子さんと麻琴、何となく似てる感じした」
「そう?好きなのが一緒だからかな?」
(それだけじゃない…)誰も口には出さなかったが、心の中では一致していた。
「難しいかもだけど、また集まれたらいいね」
~
「まさか、暁翔のお客さんが麻琴ちゃんの彼氏だったとはねぇ~」
「俺もビビった」
(まさか、イケメンくんの彼女がカウンターに座ってた子だったとは…
ちょくちょく話聞いてて、この子も鈍感だなと思ったけど、まあ、うまくいってなにより)
「また今日みたいに集まれたらいいね」
「だな。俺ももっと話したいし。じゃあ、久しぶりに飲みに行くか!」
「あっ、じゃあ凜に聞いてみよ」
「―…どうぞ…」
―
結月と朝陽と別れ、二人で家へ向かう。
「今日もまた、お家にお邪魔します」
「ん。なんか、母さんがハマって呼んでるけど、無理してない?」
「いやいや、ありがたいよ。 逆に、毎回いいのかなって… 家族全員じゃなくて、お兄ちゃんだけでいいんじゃないかと思うんだけど…」
今日は、颯汰と湊の入学祝いとして藍葉宅で夕食会の予定。
柊斗の誕生日、二人の卒業、合格、入学パーティーと続けてお世話になっている。
「……俺は、来てほしい」
「…ありがとうございます。まあ、今日が終わったらしばらくは、何もお祝いないしね。
それに今日は、玲華さんの誕生日も一緒にお祝いできるから楽しみ」
(誕生日…)
「あのさ、今度の日曜日…一緒に出かけたいんだけど、予定とかって…空いてる?」
(めっちゃどもった… もっと普通にサラッと聞きたかったのに…)
初めてデートに誘う緊張と、断られたらどうしようという不安から言葉に詰まってしまった。
(―…… “一緒に出かけたい”ってことは、いわゆるデート!?)
「日曜日って13日だよね。 空いてるよ!」
(よかったぁ~… やばっ、嬉しすぎてニヤけそう… 耐えろ、耐えろ…)
「じゃあ、その日…」
―絶対に、つまらないって思われないようにしないとな… 麻琴は、どんな格好が好きなんだろ…
―絶対に、空回ったり、ウザいと思われないようにしないと… 柊斗は、どんな格好が好きとかあるのかな…
―
「ただいま」
「おかえり~ って、麻琴ちゃんは?一緒じゃなかったの?」
「着替えてから来るって」
「「柊斗おかえり~」」
リビングには、湊と一緒にソファーでくつろぐ颯汰もいた。
(たまに、この人ここに住んでんじゃないかと思うわ)
「…どうも」
それから少しして、着替えた麻琴が両親と一緒に来た。
「玲華さん、おめでとうございます」
誕生日プレゼントにと、玲華の好きなコーヒーショップのギフトカードと小さな花束を渡す。
「ありがとー」
「どっちも柊斗と二人で選びました」
少し恥ずかしいので、玲華にだけ聞こえるようにコソッと伝える。
(二人からなんて……夢みたい…)「ほんっとうに、ありがとね!」
二人からのプレゼントに感激した玲華は、麻琴を横からハグして頬をスリスリ。
ソファーに座っていた柊斗にも同じようにやりたいのをグッと堪え、頭をかき回すように撫でた。
「俺らには?入学祝い」
颯汰が催促して、柊斗が二人にプレゼントを渡す。
「三人で買ったから、大事にしてね」「おめでとうございます」
二人には事前に、何がいいか聞き、颯汰にはTシャツを二枚、湊にはパスケースを買った。
「サンキュー」「ありがと」
三人にプレゼントを渡し終えると、食事会が始まった。
「今日も本当にありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ。いつも来てくれてありがとうございます。
どうして今までやらなかったのか、ちょっと後悔してるんです。また何かありましたら、やりましょうね」
この二ヶ月の間に三回もパーティーをすると、親同士もすっかり仲良くなっていた。
『ありがとうございました』
麻琴達が帰ると、玲華は柊斗のもとへ。
「さぁて、柊斗くん。麻琴ちゃんの誕生日は考えているのかな?」
(前にもこんなことあったな…)
一ヶ月前の卒業式の日を思い出す。
「付き合って初めての誕生日だからねぇ。あと一週間しかないし」
前回はいなかった湊まで話に入ってくる。
「しかも、付き合って一ヶ月でもあるじゃん?」
麻琴の誕生日は4月14日。だから、一日早いけど前日の13日に誘った。
「……わかってる」
((これは、もう準備してあるな…))
弟の様子から、心配するまでもなかったと感じた二人は、じゃあ頑張ってね。と一言残し、部屋を出て行った。




