こじらせ初恋に決着
もし麻琴がお返しの意味を知ったら…
やっぱ、やりすぎたか… 飴とキャラメルくらいにすればよかった?
そしたら、Haru関連で入れたかなとしか思わなかっただろうし…
いや、でもいつまでも伝えないのも…直接言えよって話だけど…
今年こそ。と決めたし、バレンタインも貰えて、ホワイトデーのお返しを口実に思いを伝えられるチャンスと思って、麻琴のことを想いながら用意して渡したけど…
正直、何とも思ってない人からあんな意味を持つお菓子貰ったらキモいって思うんじゃないか?
あげたときは喜んでくれて安心したし、ラインも来て嬉しかったけど…
(ハァー… 顔見るの怖…)
部屋にいると、気が滅入ってしまいそうだったので外に出ることにした柊斗。
(まあ、休みの日麻琴と会うことなんて滅多にないし大丈夫だろ)
…と思っていたのに、
(―…………な…んで、麻琴と湊が一緒に?)
恥ずかしそうに俯く麻琴に、笑顔で話しかける湊の姿を見ると、柊斗は何も考えることなく店に入り、一直線に二人の席に歩いて行った。
休日で人も多く、色々な話し声が飛び交って、二人の声は聞こえない。
湊の向かいに座る麻琴の顔は、手で覆われてはいるが耳まで赤く、微かに震えている。
「何してんの」
今まで聞いたことのない柊斗の低く冷たい声。座っている湊を見下ろし睨んでいる。
(怖っ…)「―…あの、柊斗…?」
湊が説明しようとすると、突然立ち上がった麻琴がカップを片づけて、湊にペコッと頭を下げ、そのまま柊斗の手を引いてお店を出た。
―
(―…え?何で今麻琴に手引かれて歩いてんの?)
さっきまで自分でも何を思っていたのか分からないくらい、色んな感情が入り交じり、考える時間もなく一直線に二人の席に行き、声をかけていたはずなのに、今は麻琴に引っ張られている。
前を歩く麻琴は、振り向くこともなく、ただひたすら歩いていた。
ドキドキとうるさい心臓と共に、早足になる。
(―…どうしよう… なんか、何も考えないで気付いたら手掴んで出てきちゃったけど、どうしよう…)
「麻琴」
柊斗の声にハッとし、手を離そうとしたが、その手を柊斗が強く握る。
「話したいんだけど、いい?」
麻琴が頷くと、手を繋いだまま横に立ち歩き出す。
しばらく歩いた二人は、公園のベンチに座り、話すことに。
「寒くない?」
「大丈夫」
(ずっと歩いてたし、緊張して暑いのか寒いのかよくわかんない… 心臓もバクバクして、何も考えられない…)
自分から話すか、相手が話すのを待つべきか考えて、口を開くのを躊躇う二人。
「……湊と、何話してたの?」
先に重たい口を開けたのは柊斗だったが、その声は小さく若干震えていた。
「いろいろ… その、昨日お返し受け取ったからお礼とか…」
そう言った麻琴の顔が嬉しそうで、柊斗の胸がズキッと痛んだ。
(そっか…麻琴は…)
「………湊が好きなの?」
自分で言って後悔した。
(そうだって言われたらどうすんだよ…)
「違うけど」
柊斗の問いに真顔で即答する麻琴。
「…でも、今嬉しそうだったから…」
「いや、それは…柊斗からのお返しを思い出して…」
「―………?」
「湊さんにお礼言ったあと、柊斗の話になって、それでホワイトデーのお返しには意味があるって…」
「……っ」(余計なこと…)
「ま、昨日お兄ちゃんからもその話聞いて調べたんだけどね」
(…ちょっと、待って。ってことは…)
「それで…」
「ちょっと待って。……その…直接言いたいんだけど…」
麻琴の言葉を慌てて制止し、深呼吸する。
バクバク…心臓の音が耳に響く。
(今言わないと、二度とこんなチャンスはない…色々かっこつけて言うより、ストレートに…)
「―…麻琴のことが好きです。付き合ってください」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
間髪入れず返事をし、ずっと離していなかった手をギュッと握り返す。
「―……ホントに?」
「ホントに。逆に、私の方がホントに?って思ってるよ。
見た目普通だし、頭も運動神経も並だし、特別優しいわけでもなければ、言葉遣い汚いときあるし、いつもニコニコ愛想がいいわけでもないし、面倒くさがりだし……え?ホントにいいの?」
「ふっ… うん。」
笑顔で返事をしたと思ったら、自分のことを言い始めてだんだんと険しく、最終的には疑いの顔へ変わっていった麻琴に、思わず吹き出す。
(そういう飾らない、嘘っぽくない素直なリアクションも好きだし、優しくないっていうけど、ちゃんと周りを見てるし、人の為に動くし、いざという時は思い切って行動できるところもいいと思う。
音楽を聴くと小さく体が動くところ、好きなことを楽しそうに話すところとかも可愛いって思う。)
「俺は、口数少ないから会話続かないし、表情分かりづらいし、独占欲強いから重いだろうし…」
「え?そうなの?」
(全くそんな感じしないけど…)
「聞いたら、多分引くと思う…」
信じられないというような顔をしていた麻琴の顔が徐々に緩んでいく。
(? 何で嬉しそうな顔してんだ?)
「…なんか、柊斗とこんな話してるの変な感じ…
中学まで話したことなかったのに、委員会が同じになって話すようになって、遊園地も行ったし、初めて誕生日プレゼントとかバレンタイン渡して…体育祭の時も……」
(…ん?今考えたら、何度か周りが柊斗と接触させようとしていたような……気のせい? それに、やたら柊斗のこと気にしてたような…)
話している途中から、何か考え込んだ様子が気になり、どうした?と柊斗が聞く。
「いや… ちなみになんだけど、その… いつから私のことを…」
(高校入ってすぐとか?)
「小学生の時から」
「!? そんな前から!?」
「………引いた?」
全力で首を横に振り否定する。
「引いてない! びっくりしただけ! え?…ずっと?」
それから柊斗は十年間、思い続けていることを話した。
見ているうちに、いいなと思うところが多くなり、好きになったこと。
湊と颯汰は、中学の時も委員会が一緒になるように協力してくれたこと、玲華と颯汰と朝陽に麻琴の好きなものを教えてもらっていたこと、結月も気付いていて、揶揄われたこともあったこと… などなど。
「多分、川口と相原も気付いてると思う…」
(―…おっと… ゆづはともかく、二人は柊斗と喋ってないのに気付いたの? え?柊斗ってそんなに分かりやすかったの?)
自分だけが気付いていなかったという事実を聞き、頭を抱える。
「―…かわいい」
思いが溢れ、自然と口に出していた。
「……なんか、ごめん。いや、正直、柊斗が…って、全く思ってもみなかったから……その…ありがとうございます。」
柊斗の呟きは麻琴には届いておらず、話を聞いて恥ずかしそうに照れながら言う。
「…そろそろ帰ろ」
二人は、一度離したら繋がないかもしれないと思いずっと手を繋いだままでいた。
付き合うことになったと、今まで見守り協力してくれたみんなに報告した二人。
二人の話を聞いたみんなの第一声は「やっとか~」だった。
みんなから、柊斗のどこが好きなのか聞かれ、色々あるけど、まとめると素直で優しいところ。と麻琴が答えると、みんなは生温かい視線を柊斗に向ける。
((―…あぁ…うん。麻琴・麻琴ちゃんの前ではそうだね…))
―
「ホントよかったよな!」
「うんうん。それじゃあ、あとはこれだけだね」
朝陽と結月が指さしたのはクラス表。
明日から春休み。放課後、六人で新しいクラス表を見に来た。
「おっ!柊斗は1組だ。 一番だから探しやすいな… って、もしかして…」
「―………ない」
「麻琴は4組か… 二年でもクラス離れちゃったね。それにしても、12年同じクラスにならないって…」
「あはは~ ゆづは朝陽くんと同じクラスでよかったね! ももちゃんと天音ちゃんは2組だし… 一人かぁ…」
「麻琴さん、ここに無の男がいるんだけど、どうにかしてくれない?」
朝陽の横に立つ柊斗は、普段と変わらないクールな表情だけど、その瞳はいつもより悲しそうに見えた。
「まあ、同じクラスになれなくても、これから一緒にいるし……」
麻琴の言葉に、結月と朝陽は揶揄うようにニヤけ顔で二人をつつく。
「あら、いいこと言うねぇ~」
「そうだよ!ほら彼女がいいこと言ってんだからしっかりしろ~」
(―…考えたらめっちゃ恥ずいことを…)
柊斗を見ると、全身に力を入れて何かに耐えるように震えていた。
(この顔……
女子が苦手だからこんな顔してるのかと、ずっと思ってたけど…)
「じゃあ、みなさん部活頑張ってください。 二年でもよろしく!」
逃げるように走って行く麻琴の顔は、恥ずかしそうに小さく笑っていた。




