これって…
「ただいま~」
「おかえり。はい、お返しのケーキ」
「やったー。ありがとー」
夕食を食べた後、颯汰が買ってくれたケーキを食べる。
「うん。おいしい。ありがとね」
「はいよ。それで、柊斗からお返しはあったか?」
「うん。湊さんからもチョコ貰ったよ」
「よかったね~。それで?柊斗からは何貰ったんだ?」
(みんな、やたら柊斗からのお返し気にするな…)
柊斗から貰ったものを説明すると、颯汰は溶けるんじゃないかと思うほど顔がニヤけていた。
「―…知ってたか? ホワイトデーのお返しには、菓子ごとに意味があるって」
「へぇ~そうなんだ。知らなかった。 ケーキはどういう意味?」
「特に意味はない。」
「無いのもあるんかい」
「ホント、こういうの疎いよな。」
「別に、美味しいの食べれれば何でもいいし、貰えるだけで嬉しいけど」
「…それはそうだけど。 ま、気になるなら調べてみ?」
気になり、すぐに検索する。
(ホワイトデー お返し 意味っと… ホントだ色々ある。
え!マシュマロって嫌いって意味なの!? 気を付けないと大変じゃん…
バウムクーヘンは、長く続く幸せ、幸せを重ねたい… なるほど、層を重ねてるからか。おもしろ。
あっ、マカロンは……… え?)
(―……っ これって…)
柊斗から貰ったお菓子を一つずつ見る。
キャンディー「あなたのことが好き」
キャラメル「一緒にいると安心できる」
マドレーヌ「あなたともっと仲良くなりたい」
マカロン「あなたは特別な存在」
(……いや、まさか… たまたまでしょ。 ホワイトデーのコーナーだったら、悪い意味のは置いてないだろうし…
でも、普通こんなにたくさん入れる?
キャンディーは、Haruとコラボしたお店のだから入れてくれたとして、キャラメルも、Haruの歌詞に出てきてことあったな… でも、それだけで入れる? まあ、二つはまだ分かる?として、マドレーヌとマカロンは何で?)
(それに…)
マドレーヌの味は、チョコ、レモン、抹茶、紅茶の四種類。
…他に何味があったかは分からないけど、選ぶとしたら自分でもこの味を取ると思うくらい好きな味。
マカロンも絵柄が付いていて、白いバニラ味には赤いハート、抹茶味にはクローバー。
…わざわざ絵柄付き?
袋のグラデーションの感じとか、Haruのアルバムのジャケットっぽいから、見かけたら買いそう…
正直、ただのお礼にしては一つ一つが好みに合いすぎているし、絶対に一カ所では揃えられない。
こんな、時間と労力をかけたお返し、恋人だとしてもやる人は多くないはず…
(これって、もしかして… いや、まさか…ね… だって…)
―
昨日でホワイトデーは終わった気でいたが、本当は今日がホワイトデー。
ショッピングセンターに行くと、ホワイトデーのコーナーが目に入った。
(男の人ってしっかり調べて渡すのかな… 受け取る女の人も、やっぱ事前に意味とか調べたり…)
ほとんど空になっている棚を見ていると、意外な人に声をかけられた。
「麻琴ちゃん?」
「―…こんにちは」
(今まで、たまたま会うなんてことなかったのに…)
「一人?」
「……はい。あっ、チョコありがとうございました。柊斗から貰いました。」
「どういたしまして。…ねえ、時間あったら、ちょっと二人で話さない?」
湊はすぐ後ろにあるカフェチェーンを指して、ニコッと笑う。
(うっ…顔面強っ… なぜ二人で…緊張して話せる気しないんだけど…)
目の前でちょこんと首を傾げる湊。
「………はい」
「よかった」
ニコッとして、じゃあ行こうか。と前を歩く湊についていく。
(この顔を断れる人いたら見てみたい…)
湊はコーヒーを、麻琴は抹茶ラテを頼んで座る。
「二人でこうして話すの初めてだね」
「……そうですね」
「颯汰と来たりする?」
「いえ、ないです。玲華さんとは来たことありますけど」
「あぁ~この店好きだからね。俺も付き合わされる」
(二人が来店したらヤバそ…)
緊張しながらも、湊が次々話題をくれるので気まずいということはなく、会話が続いた。
「さっき、ホワイトデーのところ見てたけど、何か気になるのあった?」
「…あぁ その、バレンタインとどう違うのかなと興味が湧きまして…」
「なるほどね。そうだ、柊斗からも貰った?」
ドキッ―「……はい。 色々貰いました…」
(やっぱ、聞かれるよね…)
「ふっ、そっか。まあ、ホワイトデーは三倍にして返すっても言うしね。 それか、何が好きか分からなくて、そうしたのかも」
(三倍どころの話じゃなかったけど…
でもたしかに、何が好きか分からなくて色々入れたのが、たまたまそういう意味だったのかもしれない…
? それにしては、味の好みが…)
「俺は颯汰からチョコ好きって聞いて、そうしたんだけどね。
そういえば、柊斗とこの話になったとき、お返しには意味があるって言ったら、調べたから知ってるって言われてさ…」
「え?」
(…調べた?知ってる?
ってことは、意味が分かってて選んでくれたってこと?
ん? でも、そうだとしたら柊斗が私のこと………“好き”って思ってるってことに…なる…よね…?)
調べたお返しの意味を考えて胸がキュッとなる。
(この反応、もしかして…)
「柊斗って、口数少ないし、表情もあんま変わんないから分かりづらいと思うけど、嘘つかないし、面倒くさがりで基本無関心だから好きでもない子に気を遣ったり、構ったりするようなタイプじゃないと思うよ」
トクントクン鼓動を感じる。
優しいとは思ったけど、クール、無反応、無関心、喋らない。それが柊斗のイメージだった。
でも、話しかけたらちゃんと反応してくれるし、話すときの口調も優しいし、ちゃんと話を聞いてくれる。
歩くときは歩幅を合わせてくれるし、観覧車に乗ったときは写真も撮ってくれた、委員会の時もよく声をかけてくれたし、大玉が転がってきたときは助けてくれた。
誕生日もバレンタインも、喜んでくれて…嬉しそうに笑っていた。
私が見ているからかもしれないけど、よく目も合う。
後夜祭で手を繋いだとき…
何でだろうと思っていたことが、柊斗からのお返しと、湊の言葉でストンと落ちていった。
―柊斗は、私のことを想ってくれている。
「……大丈夫?」
(色々言って混乱させちゃったかな…)
麻琴は、手で顔を覆ったまま、コクコクと頷き返事をすると、ゆっくり深呼吸した。
「何してんの」
覆っていた手を外し、声のする方を見上げると、湊の後ろに今まで見たことないくらい怖い顔をした柊斗が立っていた。




