サプライズ
ドキドキだった体育祭と後夜祭が終わり、すっかり日常に戻った。
(やっぱ、こうなるよな…)
体育祭が終わると、委員会という接点がなくなり、また話さない日が続いた…。
(手繋いだから、少しは意識してくれるかなとか思ったけど… 別に普通だし…
まあ、流れで仕方なくやっただろうから、意識するも何もないか…)
いつもと変わらない様子の麻琴を見て、手を繋いだのが、夢だったんじゃないかと思い始める柊斗。
二人に何も進展がないまま、12月に入り、世間はすっかり、クリスマスモードになっていた。
三人に予定を聞くと、結月は特に予定はないみたいだが、桃花は彼氏と、天音は家族と過ごすらしい。
(クリスマスか~ いつも通り家でご飯食べるくらいかな…)
帰り道、ありこちで飾られているツリーを見ながらそんなことを考えていると、電話が鳴った。
「もしもし」
「麻琴ちゃん、久しぶり~
あのさ、クリスマスイブって何か予定とかある?」
電話の相手は玲華だった。
「お久しぶりです。予定ないですよ~」
「ホント?もし、よかったら一緒に…」
内容に驚きはしたが、楽しそうだし、今しか出来ないと思い、誘いに乗ることに。
「―…はい。ありがとうございます。じゃあ、24日。よろしくお願いします」
(あと一週間か…どうしよう、何がいいかな…
そうだ!ゆづも誘っていいって言ってたし、聞いてみよう)
家に帰り、結月にラインを送ると「参加したい」と返信が来た。
(よかったぁ。ありがと)
―
明日から冬休み。麻琴と天音は、天音のいとこがバイトをしてる学校近くの喫茶店に向かった。
「いらっしゃいませ」
「「こんにちは」」
二人でカウンターに座り、天音はカウンター内で作業をしているいとこの涼子と少し話をする。
「涼子ちゃん成人式あるんだよね? 振り袖?」
「うん。一応ね」
「成人式か~ 憧れるなぁ。 久しぶりに会ってかっこよくなってる人とかいたりして!」
「あはは~ だといいね」
(成人式か… 四年後、どうなってるんだろ)
「麻琴ちゃん、今日Haruのブログ更新されたけど見た?」
「見ました! 年明け、新曲リリースするって」
涼子とはHaruのファンということと、推しているキャラが一緒という共通点があり、二人で感想を言い合ったり、情報交換したりしている。
(そういえば、柊斗もHaru聴いてるっていってたな… 新曲出すの知ってるかな…)
―
部活を終え帰る時、朝陽は柊斗にあることを聞いた。
「そういえば、誕生日は家でやるの?」
「別になにもしなくていいって言ってる」
12月24日は柊斗の誕生日。去年までは家で祝ってもらったが、上二人も高校生からは友だちと祝うようになったので、
自分もそうすると親に伝えていた。
「仕方ない。俺が祝ってやるよ。家に行くから」
「…別にいいよ」
「遠慮すんな! ちゃんと待っとけよ!」
「はいはい」
適当に返事をした柊斗は、朝陽の企みにはまったく気付いていなかった…
―
「おじゃましま~す」
宣言通り、家に来た朝陽は柊斗の横を通り抜け家に上がる。
「…どっか行くんじゃねぇの?」
「今日の主役に聞いてからがいいと思って」
朝陽とリビングで話をしていると、インターホンが鳴り、上から湊が
「颯汰かも!柊斗出て~」
と声をかける。
自分で出ろよ。と思いながら、しぶしぶ玄関のドアを開けると、颯汰もいたが、
玲華、結月、そして麻琴もいた。
(―……は?)
何でこの四人が一緒に家に来ているのか状況が分からず、停止する柊斗。
麻琴が「柊斗、誕生日おめでとう」と言うと、
家の中にいた朝陽と湊もいつの間にか玄関に集合していて、麻琴に続くように五人も「おめでとー」と言う。
「どう?サプライズは?」
玲華がドヤ顔で言うと、戸惑ってはいたものの柊斗は「ありがと」と小さくお礼を言った。
四人が持ってきた料理や飲み物をテーブルに置くと、キッチンにいた藍葉母も出てきて、作った料理を並べはじめた。
まだ状況を飲み込みきれていない柊斗に、朝陽が流れを説明する。
玲華が誕生日兼クリスマスパーティー企画し、湊と颯汰に話すと、二人は朝陽に、当日柊斗を遊びに誘うフリをして、家に留めるように頼み、
玲華は麻琴を、麻琴は結月を誘い、四人で買い出しをして家に来たというわけだと。
ちなみに藍葉母は、この話を玲華から聞いて張り切っていたらしい。
「ゆづ、来てくれてありがとね」
「こちらこそ。こんな機会もうないかもしれないし、誘ってくれてありがと。」
全てを準備が終わると、みんなでテーブルを囲み座る。
「じゃあ、改めて柊斗おめでとー」
朝陽の乾杯で始まった誕生日兼クリスマスパーティー。
話をしながら料理を食べ終わると、ケーキの前にプレゼントを渡そうということに。
朝陽からはキャップ、湊と颯汰の二人からワイヤレスイヤホン、麻琴はスポーツタオル、玲華からは香水だったが、渡すとき、みんなには聞こえないように「これ、前に麻琴ちゃんと出かけたときにいい匂いって言ってたやつ」と柊斗にコソッと伝えていた。
「私はプレゼントっていうか、差し入れって感じなんだけど」
と言って飲み物とお菓子を渡す結月。
みんなが柊斗にプレゼントを渡し、ケーキの準備をしていると、颯汰が何かを思い出したように声をあげた。
「そういえば麻琴、昨日作ってたクッキーは?」
「…… 一応、持ってきたけど…」(忘れてくれればよかったのに…)
颯汰に何か差し入れした方がいいか相談したとき、クッキーがいいじゃん。と言われて作って持ってきた。
「かわいい! こんなにたくさん作ってくれたの?」
「麻琴のクッキー久しぶり~ 今年のバレンタインにもくれたよね。美味しかった~」
「ありがと。お菓子っていったらこれしか作れなくて…」
「ホント、他のはいまいちだけど、これはうまいよな」
「…その、差し入れ持ってきた方がいいかなと思って作ったんですけど、タイミングがつかめなくて…」
(まあ、出せなかったら家で食べるか、ゆづにあげようと思ってたけど…)
「ありがとー。ほら柊斗、主役から先に」
玲華が言うと、柊斗は「ありがと」と言ってクッキーを一枚手に取った。
「あの、甘さ控えめで作ってるから、あんまり甘くないからね?」
(大丈夫かな…)
人に食べてもらうのは初めてではないが、緊張する。
(家族とゆづは美味しいって言ってくれたけど…)
何と言うのか気になり、みんなの視線が柊斗に集中する。
「おいしい。 あんま甘くなくて、いい。」
「……よかったぁ」(甘くないのが好きなのか)
「よかったな!それじゃあ、俺たちも…」
『いただきまーす』
「柊斗めっちゃ食ってるじゃん」
麻琴の作ったクッキーを食べ続ける柊斗を見て、みんなが笑う。
(気に入ってくれてよかった)
「麻琴ちゃん、クッキーありがとね。美味しかった」
「お口に合ってよかったです。それに、全部食べてもらって嬉しいです」
「ほとんど柊斗くんが食べてたけどね」
男子はテーブルの上やゴミを、女子は皿洗いを担当して、それぞれ片づけ中。
「意外だった!柊斗ってクッキー好きなんですね。お兄ちゃんもそれ知ってて作ったらって言ったのかな」
((たしかに美味しかったけど、あんなに食べてたのは麻琴・麻琴ちゃんが作ったからだよ!))
何かに納得したように頷く麻琴に、二人が心の中でツッコム。
「よかったね。手作りクッキーまで食べられて。ほとんど食べてたし」
「…ん」(マジでよかった。最高の誕生日だ)
「俺からの案に感謝しろ~」「こいつ、俺が食べようとするたび、めっちゃ見てきましたよ!」
いつも肩を組まれたらすぐ離すのに、機嫌がいいからか、二人からやられているのに気にしていない様子の柊斗に三人はニヤニヤ。
(((マジで嬉しそうだな!)))




