手を…
盛り上がった体育祭も、あっという間に終わり、印象に残ったことを話しながら、みんなで片づけをする。
片付けを終え、麻琴、結月、天音の三人は会場である体育館に向かっている。
出番がある桃花は、着替えがあると言って一足先に行った。
「さっ、いよいよ後夜祭だね」
「何するんだろ」
「ダンスと、バンド演奏があるってのは聞いたよ」
初めて”後夜祭”を体験する一年生は、どのような感じで行われるのか想像しながら、ソワソワ、ワクワクしていた。
会場は体育館だが、舞台横には見たこともない大きなスピーカー、舞台照明も置かれていて、まるでライブ会場のよう。
「ここら辺にする?」
出演した後、一緒に見る約束をしている桃花のことを考えて、合流しやすそうなところを三人で探し、端の少し後ろの方に座ることに。
「おつかれ~」
座る場所を決めると、颯汰、湊、柊斗、朝陽の四人が声をかけて、俺らもここに座ろう、と近くに座った。
「これで最後も上手くいくな」「あいつ何も知らないから」
「頑張れよ~」「…」
四人の話しているのが聞こえるが、何のことか分からなかった。
後夜祭が始まると、体育館の照明は落とされ、舞台だけが照らされた状態で、ダンス、バンド演奏、歌唱、マジック、お笑いなどが披露され、盛り上がる。
後半は、全校生徒が書いたアンケートをもとに、ミス・ミスター、面白い人、スタイルのいい人、マッチョな人などお題に合わせて学年別に発表された。
「一年生のミスター藍葉柊斗くん。二年生○○くん、三年生は藍葉湊くん。 兄弟でミスター!そして、藍葉兄は三年連続おめでとー」
司会の紹介にみんながワッと沸く。
(この兄弟すごいなぁ…)
舞台に上がった三人のミスター達の挨拶が終わると、次はミスの発表。
ミス、ミスター六人が一列に並び、写真撮影の時間が設けられた。
『おつかれ~ おめでと』
戻ってきた二人にみんなが声をかける。
「サンキュー」と言う笑顔の湊に対して、黙ったまま軽く頭を下げる柊斗。
「喜べ… 麻琴に聞いたら、お前の名前書いたってよ」
座るなり、隣の颯汰から耳打ちされた。
(マジか… 俺の名前を… ミスターとかどうでもいいけど、麻琴にそう思われてたってことが一番嬉しい)
後夜祭のプログラムが全部終わり、司会に言われるまま全員が立ち上がる。
「ラストは、後夜祭伝統! みんな隣の人と肩を組んで~」
司会の言葉に盛り上がる生徒達。
「何するんだろうね」と言いながら隣の結月と肩を組む。
「麻琴!早く組めよ」
右から颯汰の声が聞こえた。
?「組んだけど?」
「右にもいるだろ?」
(右…)言われて目線を上にあげると柊斗と目が合った。
颯汰は柊斗と肩を組み、「ほら早く」と肩に乗せた手で招くように笑顔で急かしてくる。
(そうは言っても…)
戸惑っていると、柊斗がそっと肩に手を置いた。
スッと肩を組んだのはいいが、柊斗の心臓は、緊張、不安、嬉しさで、今までにないほど早いスピードで動いていた。
(めっちゃ緊張する!聞いてはいたけど、マジか!近っ…
周りも組んでるし、不自然ではないと思うけど、嫌じゃないかな…腕重くないか?置き方キモいとかないよな…
てか、俺の心臓の音聞こえてるんじゃ…)
そんな柊斗の心の声に全く気が付かない麻琴。
(お兄ちゃんに言われて、柊斗も仕方なく組んでくれているし…)
緊張しながらも、柊斗の肩に手を置こうと伸ばすが…
「…ごめん、けっこうきついかも…」
身長差30㎝、柊斗の肩に手を置こうとすると、隣の結月に体重がかかってしまい、バランスをとるのが難しい。
((((((身長差!!))))))
ドキドキ、ニヤニヤしながら二人を見守っていた六人の心の声が見事に一致した。
「準備はオッケーですか?」司会のかけ声にみんなが「はーい」と答えると、曲が流れはじめた。
「なら、手繋ぐのは?」
そう言って結月は、麻琴と天音と手を繋ぐ。
「ほら」
それを見て、桃花と天音も手を繋いで見せる。
肩を組んでいた颯汰にトンっと体を押され、柊斗は麻琴の手をとり握った。
「…今だけだから」
(手、ちっさ…)
「……ん」
(手、でか…)
緊張と恥ずかしさと衝撃と色んな感情が交ざって、頷きながら返事をするのでいっぱい、いっぱい。
(肩組むより、こっちの方がヤバい… いや、肩組むのもかなりアレだけど…
でも、いきなり繋いだけど大丈夫だったかな…)
肩を組んでみんなが揺れながら歌う中、チラッと麻琴を見ると、楽しそうにしていた。
(楽しそうだな。それに…)
さらに目線だけ落として、麻琴と繋がれている自分の手を見る。
(返事したとき、握り返してくれた…)
(柊斗に緊張してるのバレないように、なるべく普通に…普通に…)
(麻琴に色々バレないように普通にしないと…)
繋いだ手から鼓動が伝わるんじゃないかと思い、なるべく相手に悟られないように、わざと気にしないフリをしていた二人。
曲が終わり、手を離すのが名残惜しく感じるも、そっと離し、何と言えばいいのかわからず、お互いにペコッと軽く頭を下げる。
見守っていた六人は、そのぎこちなさに微笑ましさを感じた。
(((照れてるぅ~)))(((もう少し繋ぎたかったね~)))
((((((よかったねぇ~))))))
見守っていた六人も、話が聞こえていた周りも、微笑ましい二人の様子にニコニコ。
繋いでいた相手の体温、感覚がまだ手に残っていてドキドキが止まらない。
バレないように普通を装うが、そう思えば思うほど意識してしまい、相手に向けた背中が熱く感じた。
―緊張しすぎて、何の曲が流れてたのか全然分からなかった…
―いつか、普通に繋げたら…




