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幼なじみ未満。こじらせ初恋に決着を  作者: 阿衣真衣


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10/22

助けられてよかった。

「じゃ、委員会最後の仕事よろしくお願いします」


委員会の確認を終えて、麻琴(まこと)がクラスの控え場所に行くと、みんなの髪が二つ結びの様々なアレンジになっていた。

「麻琴ちゃんおはよ」

「おはよ。(天音(あまね)ちゃんも二つだ)」


「あのね、クラスの女子で二つ結びにしようって話になって、みんなでやってるんだけど」

(なるほど。それで)

「麻琴ちゃんの髪、私がやってもいいかな?」


いつも可愛いヘアアレンジで天音が学校に来るので、麻琴は天音がどんな髪型で来るのか、いつも密かに楽しみにしていた。

そして「おはよ。今日もかわいい!」「ありがと」二人の朝はこの会話から始まる。


「逆にいいんですか!? 嬉しい!よろしくお願いします」

「やった~ じゃ、ここに座って~」

すると天音はブラシ、くし、髪ゴム、ヘアワックスをカバンから取り出し、麻琴の髪をアレンジし始めた。


(すごっ、美容師みたい)「準備いいね。毎日持ってきてるの?」

「まさか~ 今日だけだよ。

 実は、いつも麻琴ちゃんの髪見て、アレンジしたいなと思ってたんだよね。

 行事だし、いいチャンスだなって」

「ありがと。天音ちゃんが触りたいときは、いつでも言って」

談笑しながら天音の手によって麻琴の髪は仕上げられていく。


「もも、ゆづちゃん、おはよ」「おはよ」

「「おはよー え!二人とも可愛いね!」」

ヘアアレンジが完成し、二人で結月(ゆづき)桃花(ももか)に会いに行った。


「ありがと。天音ちゃんがやってくれたんだよ。すごくない?ホント器用!」

二つに分けられた髪を上は編み込み、下は三つ編みを少し引き出して、ふわっとした印象に仕上げられていた。


(……可愛すぎないか? あんな髪型初めて見た)

四人のうち、ただ一人だけを凝視する柊斗(しゅうと)

「見とれてんのかな?」

その様子を見ていた朝陽(あさひ)が声をかける。


「俺らのクラスの女子が考えたんだって。みんなで二つにしようって」

(発案者に感謝だな)


―「そろそろ入場準備をしてください」


体育祭開始時間が近づき、アナウンスが流れた。


「あっ、じゃあ行こうか」

「天音ちゃん、本当にありがとね」

「どういたしまして。私も楽しかったから、またやらせてね」


体育祭が始まると、自分たちの出番以外は、次の競技の準備や片付けなど委員会の仕事があり、わりと忙しかった。


「次は三年生の借り人競争か」

柊斗と朝陽は、二年生の競技で使った道具を片づけていた。


「俺が投げるから、お前あそこらへんで待っとけよ」

大玉の片づけを担当していた二年生の会話が聞こえてくる。


「いくぞ!」

その投げた玉は全く違う方へ跳ねながら転がっていった。

「バカ!全然ちがうし」


(嘘だろ…)

その投げた大玉は、次で使うお題の入った箱を運んでいる麻琴と結月のところへ向かっていた。

(危なっ!)


玉が近づいてきたことに気付いた麻琴は、持っていた箱を結月に渡し、向かってきた自分の身長と変わらない玉を止めようとしていた。


そのまま両手を広げ受け止めるが、跳ねていたせいか持ち上げるような形になってしまい、大玉に押されて上半身が後ろに少し傾いた。

「うっ…(思ったより重っ! 倒れないように何とか前に…)」

その瞬間、頭が何かに支えられ、ゆっくりと体の傾きが直される。


つぶっていた目を開け上を見ると、柊斗が背後から、麻琴の持ち上げられていた玉を支えていた。

そのままゆっくり下ろす二人。


「大丈夫?」

「…うん。ありがとう」


「本当にごめんなさい!」「大丈夫だった!?」

この事態を引き起こした二人が、焦りながら謝ってきた。


平謝りの二人に、「大丈夫です」と麻琴は少し困ったような表情で繰り返す。

二人は先生や、周りにも怒られたので反省して、今度はおとなしく片づけて行った。


近くで見ていた結月が心配して麻琴に声をかける。

「びっくりしたよ。あんなの跳ね返せばよかったのに! なんで持っちゃうかなぁ。本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫。なんか、反射的に… 止めないとと思ったら、意外と重くて…」


(結月の言うとおり、跳ね返すか逃げればよかったのに、もしあれで麻琴が倒れてたら…)

心配して声をかけてきた人に笑いながら「大丈夫」と伝える麻琴からスッと離れる。


「柊斗、すごかったな!ヒーローみたいだった」

「…」

同級生の声をスルーし歩く柊斗。


(あれは… 助けられたけど、色々複雑なんだろうな…)

その様子から気持ちを察する朝陽。


麻琴は囲まれている間に準備に戻ってしまった柊斗を追いかけ、声をかける。

「柊斗!

 助けてくれてありがとうございました。おかげで倒れずに済みました」


丁寧に頭を下げてお礼を言う麻琴に、色々言いたいこともあったけど…

「―…助けられてよかった。本当に怪我とかない?」


(さっきの感覚が背中に残ってる…

 びっくりしたからかな? まだドクドクしてる… )

「うん。突き指もしてないし、腰も大丈夫!

 逆に私の頭当たったところ痛くなかった?大丈夫?」

「全然」


―ドクン

 何だろ、柊斗の顔を見たら急に… 


控え場所に戻ると、心配していた桃花と天音、クラスメイトから声をかけられた。

「びっくりしたけど、少女漫画みたいで、見てるこっちがドキッしたよ」

「あはは…」


「さあ、午前の部最後は三年生の“借り人”競争です。ルールは…」


「○組の人」「○番の人」「○○部」「部活の後輩」「○○の先生」など比較的簡単なお題だが、50メートルを二人三脚でゴールしなければいけない。


お題を引いた三年生が、各控え場所で人を探して盛り上がっている。


「朝陽!」突然グラウンドに響く声。

朝陽は、反射的に「はい!」と立ち上がり、颯汰(そうた)の元へ向かう。

「あはは! 飼い主と犬みたい」

誰かが言ったことに、周りがドッと笑い出す。


二人三脚とは思えない颯汰と朝陽の息ぴったりな走りのゴールに、歓声が上がる。

ちなみにお題は『部活の後輩』で、みんな納得。


(みなと)の番になると、女子達が盛り上がりだした。

「呼ばれたらどうしよう」「お題によっては可能性あるよね!」


「これで、漫画みたいにお題が“好きな人”とかだったら、超盛り上がるのにね」

「でもその場合、湊さんだったら柊斗連れて行きそう」

「「「だね~」」」

そんな話を、結月、天音、桃花と話していると、湊が控え場所に来た。


「麻琴ちゃん」

湊が名前を呼ぶと、周りは叫び声を上げる。


ほとんどの人が「○○部の人」「○番の人」と探していたので、湊が名指しで麻琴を呼んだことに周りは驚いた。

「来てくれる?」

「あ、はい」


呼ばれて、立ち上がった麻琴を湊が引っ張ってスタート地点に向かった。

(どこに、掴む必要があるんだよ)


「えーあの子羨ましい」「お題何だろ」「まさか、本当にそういうお題!?」

湊の行動に、周りは大興奮。悲鳴のようなものまで上がりだした。


「全員ゴール。お題を確認します」

ゴールした順にお題が発表される。みんなが気になっていた湊のお題は…

「4位の藍葉くんのお題は…『同じチームの人』合ってますか?」「はい」

お題が発表された瞬間、みんなの納得というかガッカリというか…そんな感じの「あぁ~」が響く。


ただ一人、納得していない人もいた。

(そうだけど、それならサッカー部もいたし、二年生でもよかっただろ)


(ちょっと意地悪しすぎたかな)

後ろから刺すような視線を感じる湊。


「麻琴ちゃん、協力してくれてありがとね」

「いえ、足引っ張ってすみません」

「麻琴と湊じゃ、足の長さが全然違うからな!」

(事実だけど…)「それじゃ、戻ります」

「ありがとね~」


「あんま意地悪してると嫌われるぞ。弟に」

「ん~ 分かってるんだけどね。可愛くてつい」


競技が終わると、お昼ご飯を兼ねた休憩を挟んで午後の部がスタートした。

午後は、4チームのダンス披露と学年リレーがあり、白熱し盛り上がった。


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