第九話
世界中が終読者を探していた。
目的は、考えるまでもない。
この超常を終わらせるためだ。
「これは、終読者のせいで起きてるってことか?」
「分からない。けど、それしか考えられないじゃないか!」
母さんは、この異常の中で死んだ。
父さんが一か月前に死んでいたことすら、俺は知らなかった。
怪物に家を壊され、逃げ惑う人たちを、この目で見てきた。
その元凶が終読者だというのなら――
「俺が倒してやる。その終読者とやらを」
(俺の能力はおそらく結構強い。これはきっと、そいつを倒すために授かった力なんだ)
しかし、その災厄は未だ見つかっていないらしい。
予想するに、海王類のような化け物か、空から降りてくる天使といったところだ。
「くそ!終読者ってやつのビジュアルが分かれば、探せるのに!!」
「それは、ヒトじゃないかな」
「いや、ヒト型かもしんないけど、なにか特徴があんだろ。俺がさっき、ボコしたウツボみたいなやつかもしれねー」
「あるのかなあ、元ヒトでしょ。終読者って」
「ヒト?」
「うん、人間」
「…元ヒトって、なんで分かるんだよ?」
「なんでって、『十二位階神書』を最後まで読めるヒトが『終読者』だよ」
「え」
胸の鼓動が、少しだけ速くなる。
「そ、そうだったな」
「そういえば、しん兄は『十二位階神書』、どこまで読めるの?」
「そりゃ、普通に十――」
言葉が止まった。
『12 不滅の命、進化をもたらし、転づる』
十二。
十二位階神書。
最後まで読めるヒト。
終読者。
(……待て)
「十? 十いくつ?」
明人が急かす。
その声に、周りの何人かもこちらを見る。
「十、十……十一だ」
気づけば、そう答えていた。
辺りが静まり返る。
すると、奥で腰をかけていた中年の男が反応する。
「お前が、お前が終読者なのか!!!お前が!お前のせいで!!」
心臓が飛び上がる。
男は俺に向かって、錯乱したかのように走り出す。
男は俺に殴りかかる。
そのまま馬乗りになり、何度も拳を振り下ろす。
「ち、違……!」
訂正する暇すらない。
明人と周りの大人、数名が急いで止めに入った。
「佐藤さん!落ち着いて!しん兄は十一!終読者は十二だよ!」
明人は男を必死に引きはがした。
「そ、そう、だったな…」
男は人が変わったように、静かになり、ぐったり座り込む。
明人は床に倒れた俺を心配する。
分かった。
十二位階神書終読者――
江戸真理。
こうして俺は、物語が始まったその日に、世界中から命を狙われる側になった。
『12 』




