第八話
「は?」
「だから、勘十郎さんは一か月前に病気で亡くなったんだ」
「父さんが、一か月前に死んだ?意味が分からねえ!俺が島を出たのは、5か月前だぞ!」
突然の父親の訃報に頭が追い付かない。
「はあ?嘘ついてんだろ、みんなして!仮にそれが本当で、なんで俺が知らないんだよ!なあ、明人!」
「……言うなって、言われてたんだ」
「誰に」
「勘十郎さんに。しん兄には、絶対に言うなって」
「父さんが?なんで!」
「ごめん、分からない。知子さんも了承してたから」
(俺には、教える必要もないってことかよ)
江戸が立ち尽くしていると、観光客の男が口火を切る。
「その話は一旦置いておきませんか?彼が空を飛べる能力者なら、今度こそこの島を脱出できる。そうじゃありません?」
「そ、そうだな。考えるのはそれからでもいい」
(コイツら、なめてんのか)
明人が俺を心配そうに見つめる。
周りを見る。
怪我人もいる。泣いている子どももいる。
俺は黙って、会話を聞く。
「ちょっと待てよ。能力で人は運べないって話だったろ」
「は?そんなのアイツのでまかせだ。わしらのことを見捨てるためのな!」
「……アイツ?」
「しん兄が来る前にも、飛べる人がいたんだよ」
明人が口を挟む。
「その人も、他の人を連れて飛ぶことはできないって。本島に助けを呼びに行ったんだけど……まだ戻ってきてない」
「あー……」
診療所のベッドを思い出す。
「多分、そいつ嘘ついてねえぞ。俺も人は運べなかった」
「……」
舌打ちをするものもいれば、再び絶望を表す者もいた。
すると、一人の男が呟く。
「これじゃ、本当に終読者ってやつが殺されるまで、この悪夢は終わらねえのかよ」
その言葉には、聞き覚えがあった。
「……また終読者か。なんなんだよ、それ」
「しん兄、ニュース見てないの?」
「ここに来る前、怪物とやり合ってな、そんとき、スマホ壊れた」
「そっか、じゃあこっちきて」
明人についていき、教室のテレビを見る。
画面は、災害情報のL字表示に切り替わっていた。
「全世界の海上で、巨大な怪物の出現が確認されています。各国の沿岸部で同時多発的に発生しており、国内では自衛隊が対応にあたっています。
雨が降っている地域では、一部の個体が陸へ上がっているとの情報も入っています。政府は沿岸部からの速やかな避難を呼びかけています。対象地域の住民は、指示に従い高台や屋内へ避難してください。
――ただいま沿岸部からの映像です。画面中央、糸のような物を出している人物が怪物と交戦しています。政府が存在を認めた“能力者”の一人とみられます。現在確認されている能力者はごく少数で、各地で応戦中とのことです。
繰り返します。怪物は海上に出現し――」
L字型の縦枠には赤く塗られた避難地域が並び、横帯には同じ文が絶え間なく流れている。
『全世界で終読者を捜索中。情報をお持ちの方は、下記ダイヤルまでご連絡ください。』




