第十一話
海で暴れている化け物を倒すため、立ち上がる。
(目を合わせられない)
教室中の人が江戸を拍手で送りだす。
(耳鳴りがする)
精一杯の笑顔で応える。
(気持ち悪い)
扉を閉めても、拍手は聞こえていた。
まるで、英雄を戦場へ送り出すように。
江戸が去ったあと。
島の子どもたちが集められた教室から、高校の制服を着た少女が顔を出した。
「なにかあったのかな?」
彼女が廊下を見渡すがだれもいない。
教室の子どもが、不安そうにしているのを見て教室へ戻る。
「なんにもないよ!お絵描きしよっか!お姉ちゃん上手だよ~」
外は土砂降りの雨になっていた。
俺は歩きながら、これから自分がどうすればいいか考える。
「化け物殺したら、どうしようかな。母さんを置いたままだ。きちんと弔ってあげないと。それから、父さんのこともちゃんと、みんなから聞き出して。いや、いいか、何となくわかる。それが終わったら、俺が終読者を殺して、殺し…」
道端にえずきはじめる。
昨日の夜から何も口にしていないので、胃液しか出てこない。
「俺が、、終読者。世界をこんなにした張本人。もし、俺がいなければ、みんな普通に暮らしてたのかな。俺がいなければ、母さんは死なずにすんだのか」
ふらつきながら、海に向かう。
「俺は何も悪くない。何も悪くない。何もしてないし、世界を滅ぼす気も無い。何が『選ばれた』だ」
教室での出来事が蘇る。
この災厄がいつまで続くのか分からない。
どうすれば終わるのかも分からない。
ただ、誰が原因なのかだけは分かっている。
そんな状況で、恐怖に駆られた人間が何をするのか。
そこに理性が残るのかなんて、考えるまでもなかった。
現に、十一と言っただけの自分が殴られた。
十二だと知られれば、どうなるか。
そして俺も、さっきまで同じことを言っていた。
足が止まった。
「俺が死ねば、終わるのかな」
確証なんてない。
でも、その可能性だけはあった。
気づくと、港についていた。
荒れた海から、巨大な背びれがいくつも突き出ている。
魚。
甲殻類。
見たこともない海の生き物。
どれも異常なほど巨大で、その目はまっすぐ俺を見ていた。
「お前らも、俺を殺したいのか?いいぜ、死んでやっても」
落ちていた鉄パイプを拾い上げる。
「お前らを殺した後にな!」
常人なら震え上がるような怪物たちが、眼下で蠢いている。
だけど、さっきまでいた教室より、よっぽど心地よかった。




