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[完結]【呪い系サイコホラー】こはるちゃん、いっしょに。  作者: てっぺーさま
最終章 堕ちていく

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人間観察

【闇堕ち少女、怨霊と化す!】


憎悪の炎は死んでも消えない!

呪い系バッドエンドサイコホラー。

 もともと社交的な性格だったため、キャバクラでの仕事は初日からすんなり順応できた。客との会話にストレスを感じず、割とどんな相手とも会話を弾ませることができた。しかも、毎回客から容姿を褒められるため気分も良かった。

 最初の一か月はあっという間に過ぎた。働き始めた当初は、ドリンクを断られるたびに落ち込むこともあったが、今ではケチな客を見分けるコツもつかめ、そういう客には無理にドリンクを要求しないようにした。それだけで、精神的な負担は大きく軽減した。また、客に送る営業LINEも、自分なりの定型文をいつくか用意してからは面倒だとは思わなくなった。


 客のあしらい方もすぐに覚えた。ほとんどの客は承認欲求を求めて来店する。だから、「すごい!」「やばい!」「かっこいい!」と笑顔で連発するだけでよかった。そんな単純な接客で、財布の紐のゆるい客は酔いに任せてどんどん金を落としてくれた。


 とはいえ、客商売ゆえに、ストレスが皆無というわけにはいかなかった。店にはさまざまな客が訪れる。中には、隣に座っただけで気分がよどむような厄介な客もいた。そんな客に当たったときは、数十分の時間が数時間にも感じられ、苦痛の時間となった。そんな場合は、無理に笑顔を作りながらも、早く時間が過ぎてくれと願うばかりだ。それでも、そういうハズレ客に当たるのは稀で、周囲のキャストと比べても奈央の客運は悪くなかった。中には、ことごとくハズレ客に当たるキャストもいて、それを目にするたびに、奈央は「運」の存在を実感した。


 この仕事の最大の魅力は、当然ながら収入面だ。フルで働けば、大手企業の課長や部長クラスの月収を稼ぐことも可能だ。それを思えば、つまらない男たちの機嫌を取るだけで金が入るのだから、いくらでも偽りの笑顔を浮かべられた。しかも、店に来る客のほとんどが自分よりも収入が少ないと思うと、ささやかな優越感も味わうことができた。


 高収入とはいえ、仕事に順応できず、すぐに辞めていく者も少なくなかった。客に少しでも身体を触られるのが我慢できず、数日で去っていく女も多かった。だが、奈央は肩を組まれたり、太ももを触られたりしても、さほど気にならなかった。当然、胸を触らせることはなかったが、その場のノリでズボン越しに客の股間を触ることもあった。

 辛い経験をしてきたことで、自暴自棄になっている部分も少なからずあっただろう。今さら純情ぶってみたところで過去の汚点が消えるわけではない。そのため、少しくらい身体を触られた程度では、下手に騒ぎ立てる気にもなれなかったのだ。


 キャバクラでの仕事に慣れてくると、奈央は自然と人間観察をするようになった。

 客層は十人十色だが、しばらく働くと傾向というものも見えてくる。やがて、大きく二つのグループに分けられることに気づいた。

 一つは、女好きで、賑やかに飲むのが大好きなグループだ。彼らは社交的で会話を盛り上げるのが比較的うまく、そんな客を相手にするときは、仕事であることを忘れて客といっしょに奈央も楽しめた。さらに、彼らはそこそこ気前もよく、キャストに好きなドリンクを頼ませてくれることが多かった。それはドリンクバックとして給与に反映されるため、実に歓迎すべきことだった。

 そんな彼らと対照的なのが、誰からも相手にされないような寂れたサラリーマンたちだ。彼らは会社や家庭で居場所がなく、心の隙間を埋めるためにキャバクラを訪れる。こうした客との会話は少しも楽しめず、むしろ辛気臭さが伝染(うつ)りそうで気が重くなった。しかも、彼らはキャストのドリンクを渋るなど金払いも悪かった。それも当然だろう。彼らは楽しく飲むのが目的ではなく、ストレスの吐け口を求めて仕方なくキャバクラを訪れているのだから。

 この手の客は会話が苦手な場合が多く、彼らは得てして自分の自慢話をえんえんと続けたり、自分に興味のあることだけを一方的に喋り続ける。驚くことに、彼らはそれを会話だと信じているのだ。三十代や四十代になっても、いまだ会話が言葉のキャッチボールだという基本すらわかっていない。自分のことばかり喋り続けて相手に質問することもない。そんな客は、話を適当に聞き流しておけば済むので楽ではあったが、私生活でもその調子なら、周囲から疎まれているに違いなかった。

 さらに、会話が苦手な客はカラオケに逃げる傾向があった。話術で若いキャストを楽しませることができないため、会話が途切れると安易にカラオケに頼るのだ。しかも、美声を披露してくれるならまだしも、中年男が下手なカラオケを熱唱する姿は見苦しく、楽曲のレパートリーにしても過去のヒット曲ばかりで個性のかけらもなかった。

 それでも奈央は、どんな客に対しても愛想よく振る舞うようにしていた。機嫌を損ねられては、自分も居心地悪くなるだけだからだ。ケチくさい客だろうが笑顔で接してやると、男たちは気を良くして帰っていく。そんな男たちは、()()()()()()()()()()という事実に気づかぬまま帰途に着き、自分がどれだけ無価値な存在かを知ることなく眠りに落ちるのだろう。

 奈央は人間観察を続ける中で、世の中には思った以上に無個性がはびこり、孤独で苦しむ男が想像以上に多いことを日々実感するのだった。

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