第一章:弾け飛んだ数珠と、庭の白い影
はじめまして。ご覧いただきありがとうございます。この物語は、猫嫌いだった私が、生まれつき耳の聞こえない一匹の白猫(白玉)と出会い、血を流しながら本気でぶつかり合って「無二の相棒」になるまでの、1年間の実話を元にしています。全4話の短い物語ですが、一人の男と一匹の猫が命がけで紡いだ奇跡を、ぜひ最後まで見届けてください。
猫なんて、これっぽっちも好きじゃなかった。 人生において、猫という生き物と自分が交わるなんて、一ミリも思っていなかった。 俺は、生粋の犬派だったからだ。 あの子が旅立ったのは、今から一年前のこと。 ティーカッププードルだった愛犬は、生まれつき首が悪かった。最後の方は両足を脱臼してしまい、小さな体でずっと痛みに耐えていた。 体が不自由で、思い切り走り回ることもできない。それでもあの子は、俺のことが大好きで、どこにいても、その潤んだ瞳でずーーっと俺のことを見つめていた。 あの子が亡くなったという知らせを旅先で聞く、ほんの直前のことだ。 俺は普段、数珠なんて絶対に身につけない。けれど、その日に限って、なぜか引き寄せられるように数珠を手首に巻いていた。 そして訃報が届く直前――その数珠が、まるで役目を終えたかのように、パチンと大きな音を立てて弾け飛んだ。 経年劣化による偶然だったのかもしれない。ただの不吉な予兆だったのかもしれない。
あの子の命日の、ぴったり二ヶ月後の朝。 物語の歯車は、俺の知らないところで、完璧な必然として回り始めていた。「おい、裏の庭に子猫がおるぞ! はよ見にこいや!」 親父が朝から怒鳴り込んできて、まだ眠い俺の布団を剥ぎ取った。「別にいらん」と突っぱねたものの、あまりのしつこさに渋々庭へ見に行った。一回目は「やっぱり飼わない」と決めたはずだった。なのに、二回目にその姿を見たとき、どうしても目が離せなくなってしまった。 そこには、寄り添うように二匹の子猫がいた。 俺は吸い込まれるように、片方の、真っ白な女の子を抱き上げていた。 数日間、慣れない頭を悩ませて、その雪のように白くて丸いフォルムから「白玉」という名前を贈った。 それが、俺と白玉の、最悪で、壮絶な始まりだった。
第1話を読んでいただきありがとうございました。天国の愛犬が遺した不思議なバトン。そして庭で見つけた真っ白な子猫。ここから、想像もしなかった壮絶な日々が始まります……。面白い、続きが気になると思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】や【評価】で応援していただけると嬉しいです!




