剣術修行
「ふっ…ふっ…ふっ」
「はい、千回目です。」
「ふん!」
今、俺は訓練場でさっき作った重剣を使ってカロリール家特製の木製人形に向かって素振りをしていた。
重剣の重さは約10kgである。通常同じ大きさの大剣は3kgで作られている為、約三倍の重さの剣である。これには10%程度重金が含まれている。
これを千回素振りして、木製人形に打ち込む。この作業をしたすらに繰り返している。
木製人形はカロリール家に仕えている魔術師によって魔術で強化されている為、普通の剣で傷つかないようになっている。このような訓練用の人形はその家によって硬さは違うが、うちのは特別硬くされている。
ちなみに、打ち込まれた人形はぶっ壊れてしまった。流石に俺の力と全体重を乗せた一撃には耐える事はできない。
それと同時に重剣も壊れてしまった。こっちももっと硬くしないといけないのだが、10%を超えると一気に重さが跳ね上がる為、これ以上重金の含有量を上げる事ができないのである。
「おい、はやく片付けて新しい人形と剣を持ってこい。」
オスカーが、木っ端微塵に粉砕した剣と人形を見て、驚愕して固まっている新人の兵士に命令している。
何故剣も壊れるのか?それは俺の一撃に耐えれないわけではない。俺の切り方が悪いからなのだ。
前にも言ったが、ピックには、戦闘の才能はない。魔術も武術に関しても凡人であり、危機察知は皆無である。
気術と洞察力など戦闘に使えるものでも才能があるのもあるがそれは置いておいて。
剣に関しては、どこに当てていいかは洞察力で分かる。剣を持つのも肉体と気術で可能である。ただ力任せに振り切る為、人形に当たる衝撃と力によって剣が負けてぶっ壊れる。そういう仕組みである。
俺の一撃でも、ちゃんと綺麗に切れば壊れる事はない。騎士団長がお手本に見せてくれたから。それは確かである。
だから、前もってたくさん作っていたが、そろそろ無くなってきた。
こんだけやっても、体重は1グラムも減ってはいない。自分の足元には、汗の水溜りが出来上がっているのに。
そもそもがおかしかった。水溜りが出来るくらい汗が出て体から水分が抜けているのにも関わらず全然喉が渇いていない。
これは前にもピックが水分抜きダイエットをした証拠である。それをした為、血液や細胞により多くの水分を蓄えるように作り替えられている。それに加えて体内に水袋という水分を蓄えるタンクの役割をする内臓が出来上がっている。
小型タンクと大型タンクである。
水袋は体から水分が抜ける時にその減った分を身体に送る仕組みになっている。その為、身体には血管のような管が通っている。この管を道管と呼ぶ。道管は水袋が使用される時のみに使われるものであり、通常は血管と同じく血液を運んでいる。これによりピックのデカイ身体にも末端まで血が巡っている。
だから、いつも道管が使われる時はちょっと貧血気味な症状が出てくる。今も結構だるい。
「ピック様、水でございます。」
そんな俺に気づいていたオスカーが常温の水を渡してきた。少し塩味がする。
塩を少し混ぜていた。汗で無くなった塩分も取れるようにという気遣いである。
こういうところはメイドとしてよく出来ているのに何故?あんな事になったんだろうか?
まぁ、今考えても仕方が無いから、どうでもいいけどね。
よし、これで全て壊れたな。
これで今日の修行も終わりだな。




