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知識と思い出

 今、おれは、屋敷の図書室で本を読んでいる。

 どうやら、字は普通に読める。初めて見る文字なのに分かる。不思議な感覚だ。


 身長や体重が一気に変わったのに、一切違和感なく動かせてる時点で何となく予想できていたが、知識や肉体は忘れていないらしい。


 自分の家の本だけあって初めて読んだ本であるのに、先の話や書かれていることが思い出してきた。たぶん、前にピック本人が読んだ本なのだろう。


 肉体に関しても、この世界の貴族は3歳から魔法に関しての勉強を始める。それに伴い魔力操作も習う。平民ならともかく、貴族なら、3歳で魔力を操ることができるということである。


 なので、自分もやってみると普通にできた。

 手足を動かすの様に自然と動かせた上に簡単な魔法も発動できた。見張りのメイドには、不思議がられた。まぁ良いだろう。


 だが、これで分かった。

 知識と思い出は全く違うものなのだ。

 俺は自分がこの身体に入った事により思い出が塗りつぶされた事で、ピックとしての思い出が上書きされたんだと理解した。

 多分、思い出は元に戻る事はないだろう。家族や専属メイドなどの名前は自然と出てくるのに、そいつらとの思い出は一切思い出せないから。非常に気持ち悪かった。


 まぁ。それはどうでも良い。どうせ、無口な上にダイエットなど以外では、微動だにしない性格と表情のお陰で、バレる事はないだろう。


 とりあえず、俺はピックの人生を不本意ながら奪ってしまった訳なので、設定集に書かれていたピックの望みを叶えてみようと思う。


 そもそも、ピックの死因。

 それは、自殺である。

 自殺方法はルートによって変わるが、全てのルートで自殺をしてしまう。理由は全て同じである。

 それは、人生に疲れたからである。


 家族や周りから期待、それを叶えられない自分の無力さ、どんなに頑張っても1グラムも減らないダイエット。何よりピ(・)ッ(・)ク(・)に(・)は(・)こ(・)れ(・)か(・)ら(・)先(・)の(・)人(・)生(・)が分かっていた。

 その為、人生の全てに諦めて死んだのである。


 なので、まず、ダイエットを成功させる。それにより、ピックの長年の夢を叶える。


 その次に、武人として成功することである。

 そもそも、このピックはカロリール家の血筋でありながら、戦闘センスが皆無なのである。

 これが、ピックに対して世間が色々言う理由の最たるもので、こいつの病む原因の第一位である。


 ピックの肉体的には歴代を通してもピカイチと言って良いほどの身体なのだが、技術的には凡人であった。ピック自身もあ(・)る(・)望(・)み(・)にかけて努力はしていたのだが、それも実らずに自殺という結末を迎えた。

 どうにかして、ピックを歴代に名が残る武人にしたい。


 一応プランはある。

 でも、この方法は、俺が思いついたのではなくもともと設定集に書かれていたピックが思いついていた方法である。あの時はなんとも思わなかったが、今になってようやく理解した。これを実行すれば確実にゲームに登場したピックよりは強くなっているどころか誰にも負けない生(・)物(・)になっていただろう。

 それでも、ピック自身は嫌がっていた。それはこの家の戦闘方法から逸脱した戦い方になるからだ。


 別に、家系的にNGという訳ではない。この家は正々堂々、真剣に、全力で挑むのであれば、なんでもありが、心情であり、歴代にも奇妙で歪な戦闘方法を用いる人は確かにいた。


 でも、ピックが憧れたのは、家系に代々伝わる流派で戦う家族の姿にあった。だから、この方法を思いついたが墓場まで持っていった。

 そんなの使って良いのか?という葛藤はあったが、実戦する事にした。

 自分にはこれ以上の方法は思い浮かばないし、やらなければ、ゲームでのピックの二の舞なのは分かっているからである。

 俺は自殺なんてするつもりはないが、もしピックが死ぬ事が運命レベルでの事であった場合。それを跳ね返す力が必要だ。その為にも手段は選んでいられない。


 そして最後の望み。

 これはどちらかというと、俺の望みにもなる。

 それは、このピックの才能を100%発揮する事である。

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