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皮肉屋監査官 Fen (フェン)と異能の相棒  作者: Silvertiger
第28話 昇進したら闇の王に慕われました その2

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第28話 昇進したら闇の王に慕われました その2

 ◆ 理不尽の源泉


 数時間前 ― エイデン の研究室にて

 地下にあるエイデンの研究室は、

 いつものように薄暗く、

 モニターの光だけが青白く空間を照らしていた。


 エイデン

「……よし。これで全社向けバージョンアップの準備は完了だ」


 ゴンタは椅子を逆向きに座り、

 スナック菓子をつまみながら画面を覗き込んでいた。


 ゴンタ

「さすが、エイデンくん。

 君はすごいね。他にも応用が効きそうだね」


 褒められたエイデンは、

 珍しく少しだけ誇らしげに胸を張った。


 エイデン

「うん。

 これは“同時配信アルゴリズム”の改良版なんだ。

 映像やデータを、異なる場所に安全に“同時に配信”できる」


 ゴンタ

「……なんて言った?

 “同時に配れる”のね?」


 エイデン

「え? うん、まあ……データならね。

 でもこれは社内システムのアップデート用で.......」


 ゴンタ

「ちょっと、見せて」


 エイデン

「えっ、ちょ、待って!

 これはまだテスト段階で――」


 しかしゴンタは、

 エイデンの説明を最後まで聞くことなく、

 モニターに映るコードを一瞬で読み取り、

 そのロジックを“概念として”咀嚼してしまった。


 ゴンタ

「……ふむふむ。なるほどね。

 こういう仕組みか。

 じゃあ――応用できるね」


 エイデン

「ちょっと待って!

 今、何をしたの!?

 コード触ってないよね!?

 なんで理解できるの!?」


 ゴンタは立ち上がり、

 軽く手を振った。


 ゴンタ

「ちょっと、出前を届けに行くよ。

 エイデン、ありがとね」


 エイデン

「いやいやいやいや!!

 “出前”って何!?

 どこに!?

 どういう意味!?

 ゴンタ!?

 ゴンタ!!」


 エイデンの叫びを背に、

 ゴンタは軽やかに研究室を後にした。


 その数分後――


 世界中の会議室に、

 同時にコーヒーとドーナツが届けられることになる。


 エイデン

(……絶対、俺のせいじゃない……)



 ◆新たな任務 Government Accountability Office

( GAO(政府監査院))特別顧問


 パロアルト本社。


 夜の街を見下ろすCEOの執務室は、

 まるで王の居城のように静まり返っていた。


 フェンが入室すると、

 CEO――アレクサンドリア(Alexandra R. Theronhart )は窓際に立ったまま、背を向けて言った。


 CEO

「フェン。あなたに新しい任務を与えるわ」


 フェン

「……本社監査部の仕事はすでに山積みです。

 これ以上の兼務は――」


 CEO

「これは“監査”よ。

 ただし、相手は政府」


 フェンの足が止まる。


 CEO

「あなたを GAO(政府監査院)の特別顧問 として推薦したわ。

 議会はあなたを歓迎している。

 あなたの“正しさ”は、彼らにとって都合がいいから」


 フェン

「……CEO。

 なぜ私を政府監査に?」


 CEOはゆっくりと振り返り、

 その瞳に“支配者の光”を宿していた。


 CEO

「この国は腐っている。

 議会も、大統領府も、官僚も。

 あなたのような“純粋な刃”が必要なのよ」


 フェン

「私を……政治に利用するつもりですか?」


 CEO

「利用?

 違うわ。

 あなたは“この国を正すための刃”。

 そして私は、その刃を正しい場所に導くだけ」


 フェン

「……あなたの“正しい場所”が、本当に正しいとは限りません」


 CEOは微笑んだ。

 その微笑みは、氷のように冷たく、

 しかしどこか慈愛すら感じさせる。


 CEO

「フェン。

 私はあなたを信頼している。

 あなたも私を信じなさい」


 フェン

「……どういう意味ですか?」


 CEO

「いずれわかるわ。

 まずはGAOへ行きなさい。

 あなたの“正義”が、この国を動かす」


 フェンは一礼し、部屋を出ようとした。

 扉が閉まる直前、CEOの声が背中に届く。


 CEO

「――そして、私の“王国”を完成させるのよ」

 フェンは振り返らなかった。

 だが、その言葉は胸の奥に深く刺さった。





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