怪物箱
「んん…おはよ…ってうわぁ!? ハルマくん!?」
「殺すぞ」
そのリアクションをするなとハルマは言ったはずである。
「……いや、あの、ごめん、その…さっきは寝ぼけてました」
「お前の場合寝ぼけじゃなくてボケだろ」
「殴るよ」
「殴り返してやろうか、てめぇのダガーで」
「殺す気?」
ハルマの特殊能力を忘れてはならない。武器さえ使えば相手をほぼほぼ確殺する能力である。
「…すいませんでした」
モミジは素直に頭を下げた。素直なのは良いことだ。
「もう暗いな…俺部屋戻るわ」
「うん」
部屋に戻ったハルマは、先程までの事を思い出す。
自分の体に伝わるモミジの熱と柔らかさ。寝れるわけない。
「あの状況で寝ろっつー方が無理な話だよなぁ…」
ハルマはモミジの感触を反芻するように頭に思い浮かべる。
「…無い割には柔らかかったなぁ」
何してんだてめぇ。殺すぞ。僕この物語の上では最高地位にいるからな。お前殺せるからな。
「…まだ寝れそうにねぇや…」
火照ったハルマの体が冷めるには、まだ時間がかかりそうだった。
次の朝。
「さぁおはよう世界!!」
寝れたようである。良きことだ。
この日は久しぶりにダンジョン攻略に行くことになった。ニートしててもなぁ。
「これなんてどう!? 最高難度!!」
ユウキが指さしたのは、未だ探索成功者が居ないという魔のダンジョン。
「死ぬ気しかしねぇ」
「先輩がそれ言う…?」
ユウキががっくりと肩を落とす。だが、すぐに気を取り直し、
「見てこれ、報酬もいいじゃん! やろ!」
「なんでそんなテンション高ぇんだよ」
「お金を前にして立ち止まれるわけないじゃん。何言ってんの」
「お前が何言ってんだ」
「…もう、爆殺してでも連れていく。私はお金がほしいんだ」
そう言うと、ユウキは杖を構える。
結局、その最高難度のダンジョンに挑む事になった。
「ふっっるい遺跡だなぁ」
「そこかしこにトラップもあるらしいから気をつけろよ」
緊張感が微塵もない。そりゃあそうか。
出てくるモンスター次から次へと瞬殺してるよ。
「あ、お宝!」
それは隠し部屋のようなところで。
宝箱を見つけた。
「なにかあるかな!!」
ユウキはうきうきしながら宝箱に近づく。
「これみよがしになんでこんなもん置いてあんだよ」
「罠じゃないかな…」
ハルマが突っ込むと、ツバキは大槌を構える。
ツバキ大正解。
ユウキが宝箱を開けた瞬間、中から触手が飛び出してきて、ユウキの身体を捕らえた。
「やっぱ怪物箱じゃねーかよ!!!」
「あ…助け…う…」
ユウキはみるみるうちにそう大きくない箱に飲み込まれていく。
「四次元ポケットかよ、あのミミック野郎!!」
ハルマは慌てて傘でぶん殴るが、ミミックは蓋を器用に動かしガードする。
箱はミミック本体ではなさそうだ。
ツバキの大槌はユウキまで叩き潰す訳にも行かず、出番なし。
イノは麻酔弾による催眠を狙うが、これもミミックは地面の岩やらで器用にガード。
「なんでミミックとかいうクソザコ級がこんなつえーんだよ殺すぞ!!」
そうこうしているうちに、ミミックは逃げていく。
「あ、こら待て!!」
ハルマたちは駆け出した。




