デートの行き先
「…なんで待ち合わせすんの?」
これは今から1時間前のハルマの発言。
デートをするにあたって、待ち合わせをしようとモミジが言い出したのだ。
「…いやぁ、その…デート…だし?」
「関係ねぇよ」
「いやまぁ、その、恋人気分を味わおうかなと」
「そんなんで気分出るのか? 俺は別にどっちでもいいけど」
「じゃあ、1時間半後に白極堂の前ね!」
「とんだ嫌味を見せつける気かよお前は」
「はー…。ハルマくんとデートかぁ」
モミジは小さく息を吐くと、左の手のひらで自分の頬を打つ。こうでもしないと、顔が勝手ににやけてしまうから。
「ぅう…こんなんじゃほっぺた腫れちゃうよ…」
机においた小さな鏡を覗きこみながら、モミジは自分の顔を確認する。にやけてる。
「…もういいや。遅刻するのもヤだし、早めに出よう」
そう言うと、モミジは肩掛け鞄を持って部屋を出た。
「おー、今日はアホお一人様のご来店すか」
「ぶん殴っていい?」
モミジが白極堂に着くなり罵声を浴びせるのは、毎度お馴染みキョクヤくんである。
「カオキモいっすよ」
「二言目がそれ!? しかも女子に対して!?」
「絶妙ににやけてて」
「…自覚はあるから」
モミジはそう言うと、小さくためいきをつく。
「ま、なんかいいことあったんすかね、例えばどこぞのニートとデートとか?」
「…!? なんで知って…!!」
「あはは。まさか当たってるとはね。カマ掛けただけなんすけど」
「ちょっと!」
顔を赤くして抗議するモミジに、キョクヤはまぁまぁ、とおちつかせる仕草をする。
「うち武具屋なんでね。いるでしょ? 見た目で武具選ぶひと。そーゆーののお陰で、その人の服でこれからの予定がある程度わかるんすよ。まーあんたはもとからアホみたいに分かりやすいっすけどね」
「なにそれ」
モミジは頬を膨らませる。
「…っとまぁ、ここでナンパヤローが来るのがデート回の定番っすけどねぇ。…おっと、ちょうどいいチャラ男が来やがった」
キョクヤは顔に似合わず、ニヤリと笑う。
「…おお、なんか可愛い子いる」
チャラ男は、これまたちょうどよくモミジに反応する。小説っていいねぇ。全てがご都合主義。
「…えっと、今1人?」
「……チッ、もう少し攻めろよ」
キョクヤが超小さく舌打ちをする。お前はできるのかよ。
「んー、今はね」
「お、マジ!?」
「あと10分くらいかな、1人なのは」
「…へ?」
へ? じゃねぇ。理解をしろ。
「だーかーら、待ち合わせ中なの」
「いや、10分でもいいからさ、暇じゃ…」
「いやー、10分も早く着いちまった。モミジ居るかな」
スーパータイミング。さすがご都合主義。安定の主人公。
「10分もってなに、10分もって」
「いや、お前なら3時間くらい遅れてくるんじゃねぇかなって」
「さすがに3時間はないよ」
チャラ男をよそに、2人は談笑をはじめる。
「え、えー…待ち合わせの相手って、もしかしてコイツ?」
「…こいつら誰?」
「知らない人」
「そっか、じゃー気にしなくていいな」
「うん、じゃあどこ行く?」
「決めてねぇの!?」
チャラ男達が諦めて帰っていくのを尻目に、ハルマとモミジは行き先について話し始める。それにしても、こういうのってハルマが決めといた方がいいのでは…。いや、誘ったのはモミジだしなぁ。
まぁぐだぐだなのは変わらない2人だ。
「じゃあ…映画とかどう!?」
「映画なんてあるのか」
「うん」
「どんなのがあるんだ?」
「犬が生まれ変わりを繰り返して元の飼い主の所に帰る映画」
「どっかで聞いたなぁ!!!」
ハルマさんが転生する前の世界にもそんな映画があった気がする。気のせい…では無さそうだ。
「じゃあ…18禁ゲームが原作のアニメ映画!」
「それもう見た!!!」
だからどこかで聞いたことある。というか健全なところからのいきなりの振れ幅がすごい。
結局、行き先は決まらなかった。




