カレー
モミジの衝撃的な告白のあと、ハルマはリビングでゴロゴロしていた。
「はーい邪魔邪魔ー」
掃除機をかけるツバキに顔面を蹴られる。
ツバキは意外にもきれい好きなようで、家の掃除を自ら買って出ているという。
「はいはい、俺が悪かったですよー」
ハルマは立ち上がり、自分の部屋へ向かった。
「ふー、さみーさみー」
すっかり冬だ。凍りついた空気は肌をピリピリとさせる。霜焼けにならないようにしないと。
ちなみに僕はもう手遅れだ。
ハルマは部屋に入るなり布団に潜り込む。
「はー、生き返るわー。最高だな、布団」
いい感じに暖かい。
段々とまぶたが重くなってくる。
「う…やべ…ねる………」
まぶたは完全に落ち切った。
「ん、んー…よく寝た」
ハルマはむくりと起き上がる。
「今、何時だ?」
時計を見ると、針は6時を指していた。
「…やっべ、飯作らねぇと!!」
そう。忘れているだろうが、ハルマはこの家の炊事担当である。もう6時だから、夕飯は遅くなるだろう。
ハルマは部屋を飛び出し、キッチンに向かった。
「先輩おっそい!」
そこに居たのはユウキだった。
「…え? お前料理出来んの?」
「馬鹿にしないで貰える?」
ユウキはどうやらカレーを作っているようだ。
「いい匂いー…あ、ユウキちゃんが作ってたんだ」
モミジも匂いにつられ、台所にやってくる。
コトコトと煮込まれたルーがカレーの香りを家中に振りまいていた。
「はいできたよー」
ユウキとハルマがテーブルにカレーを並べると、みんなぞろぞろと集まってくる。
「つい最近までこのテーブルには3人しかいなかったのにね」
「いつの間にか倍になってんな」
ツバキとイノはそんな事を口にしながらカレーを食べる。
「ん、美味いなこれ」
「だから馬鹿にしないで貰えるかな」
カレーを食べて驚くハルマを、ユウキがどこからか取り出した巨大ハリセンでシバく。
「んなもんどこから出したんだよ」
「さぁねぇ?」
ハルマが振り向くと、もうハリセンは無かった。
不思議だ。
カレーを食べ終わったハルマたちは、リビングでぐだぐだとし始めた。
テレビではお笑いの特番がやっていた。なぜか知らんが。というかこっちにもお笑いがあるのか。
「んー…特に金にも困ってねーし、暇だな…」
ハルマが来てからというもの、貯蓄に困る事は無くなった。
というのも、日銭稼ぎが爆速で終わるからである。
前までその日その日を生きてきたモミジ達にとっては、ハルマはありがたい転生者だった。今では貯蓄も十分にあり、1週間以上暇を持て余すことさえあった。
「………」
不意に服の裾を引っ張られる感覚があった。
振り向くと、モミジが誰もいない所を指さしていた。
「……? なんかいんの?」
「違うよ…」
モミジはため息をつきながら、ハルマの腕を引っ張り、リビングから少し離れたところへ移動した。
「…なんだよ急に」
「……あのさ、私たち、恋人っぽいこと何もしてないじゃん…?」
確かにしてない。
…いやしてるわ。思いっきりしてる。めちゃくちゃしてる。
「…いやその、デート、とかってしてないし…?」
それは確かにしてない。
…いやしてるわ。付き合う前だけどお前ら2人で服買いに行ってるぞ。
「だから…その…明日にでも…行けたらいいなぁ…って」
話聞けよ。
「別にいいけど…」
お前もいいのかよ。いや別に僕も文句はないけど。
「じゃあ、明日にでも」
「…うん」




