女子の定義
「…ん…んあ…」
「お、おい…大丈夫か?」
「ぴゃぁっ!!」
心配になったハルマが耳元で声をかけると、モミジはびくりと肩を震わせる。
「…耳元でささやくのはやめて…しぬ…」
「…お、おう…」
ハルマは曲げた腰をもう一度伸ばし、モミジの耳かきを再開する。モミジが時々あげる、ん、とか、あ、とかの声にハルマはいちいちビビる。奥を突いてしまったら大変だからだ。
「…これで終わり、かな。けっこー溜まってたぞ」
「えぇ…終わりかぁ…」
ハルマがモミジの耳から耳かき棒を引っこ抜くと、モミジは大きなため息をつく。
「…てか、溜まってたとか言わないでくれる? 私一応女子だよ?」
「家の中をパーカー1枚でうろつくような奴がか?」
ハルマの顔面にモミジのグーが叩き込まれる。当たり前だ。
ちなみに前まではそのパーカー1枚の下に下着を着用していたのだが、最近はそれすら着用していない。悪化した。
「殴るくらいならその習慣やめろよ」
「うっさいなぁ!!!」
モミジは顔を赤くして叫ぶ。うるさいのはお前だ。
「…まぁいいや、その状態で外にさえ出なければ」
「え、だめなの?」
「殺すぞお前」
モミジは本当に女子なのだろうか。女子としてのプライドすら持ち合わせていないようだ。というか前は出なかった気がする。悪化している。
「いちいち着替えるのめんどくさくない? だったらこれでいいよ。お風呂入る時もこれ脱ぐだけだし」
そう言いながらモミジはチャックを下ろすマネをする。
「お前、そのうち露出狂になりそうで怖いよ」
「なんで!?」
さらに恐ろしいのは自覚がないことだ。バカにつける薬はないとはこの事だ。
「まぁそれはそれで置いといて。胸とか形崩れるって言うぞ、ちゃんとブラしないと」
「私へのあてつけ?」
しまった。モミジには年相応の胸がないんだった。ここであろう事か発言の選択ミス!! 痛恨のミスです。さぁここからハルマ選手、どう巻き返していくのか…?
「せめて下くらいは穿いとけよ。パーカーとかすぐ翻るぞ」
「裾絞れる奴だから大丈夫」
あーーーっとモミジ選手、ここで天賦の才能「大馬鹿者」を発揮したーーーーーッ!! 盗撮などの可能性は考慮していないのか!? 一体何が大丈夫なのでしょうかねぇ、解説のりぺあさん。
いやぁ、全く分かりませんねぇ。ハルマ選手の言った、「翻る」という事に関しての反論すら出来ていないように思えますねぇ。ついでに言うと、なんで僕は実況解説の一人芝居をやってるんでしょーかね、実況のりぺあさん。
…おっと? ここで2人の会話に進展が見られました。では、続きを見ていきましょう。
「お前なぁ…そんなんで大丈夫とか世界を舐め切ってるぞ」
「なんでさ」
「お前みたいなタイプが好きな奴もいるんだぞ? 少しは見た目に気遣えよ」
「つまりハルマくんみたいな変態がいるってことでいいんだよね?」
「そういうことだ」
「あ、認めるんだ…」
「だからマジで見た目には気遣えよ」
「…はーい」
モミジ選手、ノックアウトーーーーーッ!! 途轍もなく熾烈で、途方もなくどうでもいい戦いが今、ここに終結しました!!!!
「…仕方ない…ズボン履くか…」
「下着つけろよ」
女子ってなんだっけ(哲学)




