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アルト

騒ぎを聞いて、モミジやユウキ、そしてイノとツバキも集まった。


「どうしたの? …って、うわ…」


モミジは少女を見て言葉を失う。


「匿って欲しいんだと。俺は正直嫌だが、やられたのはモミジだしな。お前がよけりゃ家に上げるけど、どうする?」


ハルマは口元を押さえて絶句するモミジに言う。


「…わ、私は別にいいけど…」


「そうか、じゃあ上がれよ」


その言葉を聞くなり、少女は顔を輝かせた。




「で、聞きてぇことは色々あるけど、まずお前の名前はなんだ」


「え、先に謝らせて欲しいんですけど…」


「そんなのいいよ別に」


「モミジお前、そんな体勢で言っても全くもっていいとは思えねぇぞ」


モミジはできるだけ少女を見ないようにしながら言う。本当にいいのか。


「あぁいや、ただ傷を見たくないだけだから。…こんな小さな子が傷だらけって…なんか…ね」


「…まぁ、お前はそうか」


そう言うと、ハルマは少女に向き直る。


「謝罪はいいんだとよ。で、名前は」


「私の名前はアルト・ペリア・イースバリル。…アルトって呼んでください」


「そりゃまた長ぇ名前だな」


アルトは心なしか、ってか完全に何かに怯えているように見えるが、それを全く気にせず、どうでもいい感想をハルマは述べる。


「…元貴族だから。…今は、没落貴族だけど」


「ふーん、なんかあったのか? 興味ねぇけど」


基本的にハルマは金持ちが嫌いなのだ。もはやそれはニートの八つ当たりでしかないが。

ハルマは子供の頃の方がまだ分別があっただろう。段々幼児退行していっている。


「まぁいいや、話したくもねぇだろうし。んで、その傷なんなんだ」


「その…王城で…兵士に…」


「ボコされたと」


ハルマが言うとアルトは頷く。


「…なんでそんな事になったんだ?」


イノの疑問はもっともだ。犯罪者だとしてもいきなりボコされるなんて事があっていいはずがない。


「…私ね、あそこのマンドラゴラちゃんと友達なんだ」


「あぁ、俺らが殲滅した?」


「お前ホンットにデリカシーねぇな」


ハルマの合いの手にイノがツッコミを入れる。


「…でね、生物兵器の研究に参加させられそうになって…私は多分、その為に捕獲依頼が出されたんだと思う。それで、断ったら…こう」


「なーるほどね、じゃあもう王城には戻りたくないわけだ」


ハルマの言葉にアルトは小さく頷く。


「私なんて迎え入れて貰えないとは思ってる…。でももうあそこには戻りたくない…! お願い…一晩でいいからここに置いて下さい!!」


アルトは頭を下げる。


「…だとよ。お前らどうする?」


「んー…私は別にいいよ」


「僕も反対する理由はないわな」


「私もモミジちゃんがいいなら別に…ねぇ?」


「そういう先輩はどうなの? 私はいいけどさ」


全員異論が無いことを示す。


「だろーな。言うと思ったぜ…別に一晩と言わず、俺らと住むか?」


「…!!」


「もちろん、タダで、とは言わねぇぜ?」


「も、もちろん、雑用だってなんだってする…だから…!!」


「わーかってるよ、冗談だ冗談」


ハルマは苦笑いしながらアルトの頭を撫でた。


「じゃあ、まずは治療だな。イノ頼むぜ!」


「おう! あ、モミジ、服の洗濯頼むわ」


「りょうかい!」




「え、こんな綺麗な服…」


「いいっていいって! 私のお下がりだけど…」


アルトは着せられた服を見て戸惑う。もっとひどい扱いをされるものだと思っていたらしい。まぁ無理もないか。


「あ、ありがとう…」


アルトがモミジにお礼を言うと、台所からハルマの声が飛ぶ。


「アルトー! お前料理できるかー!?」


「え、で、出来ない…」


「出来ないってー!」


「まじかー!!!」


「まじー!!!」




「ちぇ、料理できたら手伝ってもらおうと思ったのによ」


「ごめん…」


「なんで謝るんだよ…」


謝るアルトにハルマは苦笑い。


「んで、なんでお前左手くっついてんだよ」


「その…癒術で無理やり…」


「まぁ、見たとこ適当だもんな。切り口ぐっちゃぐちゃだぜ」


「その切り口をぐっちゃぐちゃにしたのはどこの誰なのハルマくん」


そう言いながらモミジはハルマをシバく。


「…ってぇなぁ…。…ところで、ここで匿ってんのバレたら大変な事だよなぁ」


「…確かに。どうする?」


「……いいこと思いついた」


そのハルマの表情は、アルトの左腕を切り落とした時と同じ、不気味な笑みだった。

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