PSYCHOPATH
そうして、洞穴のような場所に着いた。
「ここだな」
「もうお前の耳が恐ろしいよ」
「あ、聞こうと思ったものくらいしかここまで聞こえねぇから大丈夫だぜ!」
「それでも怖いわプライベートなんてねぇじゃねぇか」
「耳栓して暮らせってか」
「そういう事だ」
「殺すぞ」
「その気持ちはこの先のマンドラゴラに向けてくれ」
「そうするか」
「そろそろいいかい?」
「「「突撃っ!!」」」
ハルマたち3人は、洞穴に突撃した。
そこでは、メシアと同じように手足を拘束されたユウキが、今度はマンドラゴラ達に囲まれて祈られていた。
「よし」
イノは銃を構える。
「大量虐殺のお時間でーす!!!」
サイコパスのような言葉を発しながら、イノは正確に1匹1匹撃ち殺していく。
「よっし、捕まえたァ!!」
ハルマが1匹を捕まえる。
そして、イノがそいつを除く全員を撃ち殺したところで。
「おい、ほかの2人、どこにいる?」
ハルマは捕まえた1匹に尋ねる。
意思の疎通は可能だったようで、マンドラゴラは洞穴の奥を指さした。
「どーも」
ハルマは、そのままそのマンドラゴラを握り潰し、地面に叩きつけ、踏みつけたあと、折り畳み傘で3回くらいぶん殴った。
「おーい、モミジー、ツバキー、いるかー!?」
すると、遠くの方から、いるー、と声が飛んできた。
「あっちか」
「二人とも無事かー!?」
今度はイノが声をかけると、無事だよー、と返ってきた。
メシアが寝ぼけたユウキを背負うと、3人は走り出した。
「お前らは起きてたんだな」
「まぁ、吸う時眠ってた方が楽だからねぇ。吸われる人から眠らされたんだろ」
メシアが言う中、イノは器用に根っこを切っていく。
「あー、良かったぁ…一時はどうなる事かと…」
解放されたモミジはハルマに抱きついた。
「ほんとだねぇ、ハルマでさえ一時は発狂してたからねぇ」
にやにやしながらメシアは言う。
「ちょ、言うな!」
「え? そうなの?」
「あ、いや、その…」
「ユウキが最初に狙われそうって知ってからねぇ」
「へ、ふーん、先輩、なんだかんだ言って私の事心配してくれたんだぁ」
メシアが言うと、ユウキもにやける。
「へぇー、やっぱりユウキちゃんのこと嫌いじゃないんだねー」
モミジもハルマに抱きついたまま、にやにやする。
「ちょ、お前らぁあああああああ!!!!」
「さて、本来の目的に戻ろうか」
「すみませんでした」
危うく折り畳み傘でぶん殴られそうになった3人はハルマに土下座する。
本来の目的ってなんだったか。
「ダンジョンの奥底にいるやつを捕獲、だろ」
そうか、そうだったな。
ダンジョンの最深部は、ハルマ達がいたところからそう遠くなかった。
重厚な扉があった。絶対ここだ。
「じゃあ、アサシンらしく私が突撃するよ」
「大丈夫か?」
「いや、さっきはかっこ悪いとこ見せちゃったからね。少しはいいとこ見せないと」
「死ねクソ惚気」
イノの心のライフはもうゼロだ。僕の心のライフももうゼロだ。
「じゃあ、行くよっ!!」
モミジは扉を押し開けると、突撃した。
「やぁ、よく来たねぇ! 私はダンジョンの長…」
そこに居たのは幼気な少女だった。
モミジは構わずダガーを掲げて襲いかかる。が。
「いやぁ、相手の名乗りは待たなきゃダメじゃないかぁ」
その刃が少女に届くことはなかった。
少女の手が文字通り伸び、モミジの首を締め上げていた。
「え…あ…」
モミジはダガーで少女の腕を切りつけるが、ビクともしない。
「あははぁ、痒くもないなぁ、そんなの」
へらへら笑いながら、少女はモミジに視線を向ける。その瞬間、その眼光は鋭いものに変わった。
「じゃあ、死のっか」
そう言うと、少女はモミジの首を絞める手に力を込めると、ハルマの足元に、モミジを転がした。
その拍子に、ダガーもハルマの足元に転がる。
ハルマの目に、モミジの苦しそうな表情が映る。
そこには、何故かある状態異常がついていた。
「呼吸困難…?」
「ふふーん、私はねぇ、相手に色々なデバフを付けることができるんだぁ」
「何へらへら笑ってやがんだよ」
「えー、だっておかしくなーい? 自分から突っ込んできてそのカオ! 面白すぎるでしょー!」
そういうと、少女はケラケラと笑い出す。
「…そっか」
「でしょでしょー! 面白いでしょー?」
「…あぁ、本当に」
ハルマは足元のダガーを拾い上げる。
「お前のそういう表情を考えると…」
「え」
「笑いが止まんねぇよ!!」
ハルマもモミジと同じように、少女に襲いかかる。
だがひとつ違ったのは、少女の反応だ。
気迫に押されたのか、少女は右に飛び退く。
が、少し遅かった。
ハルマのダガーが、いやモミジのダガーなんだけど、とりあえずそれが少女の左肩を掠めた。
────ボトッ。
何かが落ちた音がした。間違いなく、ダガーが落ちた音ではない。
ハルマは不気味な笑みを浮かべる。
「へへ…これでも、おもしろいか?」
「…え? …え?」
少女は現実が受け止められないのか、乾いた笑みを浮かべながら、自分の左腕を見る。
否、自分の左腕が"あった場所"を見る。
「…え、あ、あ、あ、…ああああああああぁぁぁ!!!!」
少女は叫ぶ。鮮血が左肩から吹き出す。
「へぇ、お前にも赤い血が流れてんだな」
落ちたのは。
少女の"左腕"だった。




