史上最強の地獄耳
飛び降りたハルマたちだったが、彼らを見るなり、マンドラゴラ達は逃げ出した。
「あ、おいこら待てお前ら!!」
彼らを外敵と見なしたのだろうか。
「待てハルマ、メシアの解放が先だ!」
幸いなことにメシアは祭壇に放置されていた。
「チッ、これ解くのはかなり時間が…」
「ナイフを持ってこいバカ」
イノは小型のナイフを取り出し、根っこを切っていく。
ハルマがまるで役に立っていない。
「おーい、メシア起きろー」
イノがメシアをぶん殴りながら起こそうとする。
「なんでぶん殴ってんだよ」
「なんとなくに決まってんだろ」
「お前割と頭おかしいよな」
ハルマがため息をつくと、メシアが目を覚ました。
「んん…んぅ…????」
「おはよう」
「え? あ、あぁ、おはよう」
メシアはまだ意識がはっきりしないのか、ぼんやりと挨拶を返す。
ハルマがメシアの頬に平手打ちを叩き込む。
「目ェ覚めたか?」
「いきなり何するんだい…覚めたよ」
メシアは引っぱたかれたところを擦り、顔を顰める。
「ところで、モミジ達がどこにいるか分かるか?」
「…ごめん、さっきまでは起きてたんだけど、運ばれる時に眠らされて…ってこれ!?」
メシアは自分のいる場所を見て驚愕する。
「生贄の祭壇らしいが」
「…生贄の祭壇、なんだけど、コイツの本質は"奪魂"だよ。アイツらにはぴったりな代物って訳だ」
メシアは祭壇から離れると、再び顔を顰める。
「魂を喰う、ってやつか」
「そういうこと。あの子達も早く追っかけないと…」
「なんでだ? コイツがなきゃ無理だろ」
「食料確保の術がない生き物なんて居ないさ。アイツら、魂くらいなら自分で吸えるよ」
「は!?」
「コイツを使ってんのは効率がいいからさ」
「なるほどな。アイツらが人間から魂を吸うにはどんくらいかかるんだ」
「うーん…今回は数が多いから…3人でもって1時間って所かね…」
「は!? 1人20分!?」
メシアの言葉にハルマは驚愕する。
「いや、これは抜くまでの時間だよ。食べるのにはもうちょい時間がかかるから、食い切られるまでは生きてる。ただし…」
「ただし?」
「半分以上喰われちまうと、数日は心神喪失状態のまんまだね」
「嘘だろ…誰から狙われるかとか分かるか?」
「…アタシが最初に狙われた理由を考えればわかるだろう?」
メシアの言葉に、イノは素早く反応した。
「まさか…ユウキか?」
「なんでだ?」
イノの言葉にハルマは首を傾げる。
「メシアはウィザードだろ? つまり、4人の中では1番魔力があるはずだ…」
「…そういうことかよ!」
「にしても、なんで僕らは狙われなかったんだ?」
イノの疑問は当然のものだ。
「簡単なことさね。イノのは今回のマンドラゴラの群れが喰える物じゃなかったのさ。アンタら、シマウマとかが食べる草を食べられるかい?」
「無理だね」
「そういうことさ。そしてハルマは…」
「…俺は?」
「単純に力量がおかしいのさ。まさか催眠魔法が効かない人間なんてこの世にいるとはね」
「…は? つまり、単純に"攫えなかった"って事か?」
「そ。アンタ、もしかして転生前徹夜とか繰り返してたんじゃないかい? それがこっち来た時に耐性としてそのままついたんだろう?」
「耐性どころかもはや無効だな…とりあえず行くぞ。アイツら助ける」
ハルマはマンドラゴラ達が逃げ出した方向に向かって走り出した。
2人も、あとを追った。
「…この辺か?」
「そのはずなんだけどねぇ」
メシアがマップを開き、ハルマがウィンドウを追う。
そして、イノはその後を形見を狭くしながらついていく。
マップを開くのはユウキの方が得意なようで、メシアは少し精度が低い。ただし、彼女たち3人を探すには充分な精度だった。
「くっそ…早く見つけねぇと…」
「焦る気持ちは分かるけど、そんなに焦っても何も無いよ…」
メシアはハルマを宥めるように声をかける。が。
「分かってる…分かってるよ!! …けど、ユウキが死ぬんだぞ!?」
「それくらい分かってる。だから早く見つけるためにも一旦落ち着こう。ね?」
メシアが慌てるハルマを抑える。
「…分かった。悪い」
「よし、じゃあ、探そう」
「待て! 静かにしろお前ら!」
ハルマが正気を取り戻したとき、イノが叫ぶ。
「…なんか聞こえる…」
「は? なんも聞こえねぇぞ?」
「静かにしろって!! 僕も微かにしか聞こえねぇんだ…」
イノは目を閉じ、両耳に神経を集中させる。
その様子を、2人は黙って見守る。
「…マンドラゴラの足音だ!! 近いぞ!!」
「…そんなの、よく聞こえたな」
「耳がいいとかそういう次元じゃないよ…」
マンドラゴラは軽い。それ故に足音もとても小さい。
だが、イノはそれさえも聞き取ってしまうのだ。地獄耳恐るべし。
「こんなの普通だろ。早く行くぞ!!」
それを聞いて、ハルマとメシアは耳を澄ませる。
そして、2人は顔を見合わせると、首を横に振った。
なんかサラッとイノの恐ろしい特技が炸裂しましたね。
もっと炸裂させていきたいなぁ。




