イマイチ決まらない
「テレレレテレレン♪」
ハルマは無表情でその効果音を口ずさむ。
日本じゃみんなに知られた、謎を解いた瞬間の効果音だ。
「よし、行くか」
ハルマたちは螺旋階段を下へ下へと降りていく。
「なぁ、まだ着かねぇのかよ?」
「……いや、ステータスウィンドウはこの辺の高さなんだけどな…どっから出るのか…」
ハルマは壁を探すが、階段からの出口は見当たらない。
それこそ壁をぶっ壊したくなってくるが。
「…おいハルマ、アレじゃねぇか?」
イノが指さしたのは、壁の上の方にあった、通気口のような小さな穴だった。
「はぁ? あんなとこ入るか普通? まずアイツらが届くのかよ」
「いや、それ以前に出口があそこしかねぇんだぞ? もうあそこしか考えられねぇだろ」
「たしかにそうだけどな…しゃあねぇ、あそこに入る形で話を進めようか」
そう言うとハルマは辺りを見回す。ハシゴになりそうなものがないか探すためだ。
「お前、ほんとに何も持ってねぇんだな…」
そう言うと、イノはリュックから縄ばしごを取り出した。先端はフックのようになっている。
「そんなの持ってたのかよ! 早く言えよ!」
「いや普通持ってくるだろ。穴に落ちた時とかどうすんだお前」
イノは縄ばしごの先端を投げ、上手く通気口の縁に引っ掛けた。扱いにはかなり慣れているようだ。
「よし、これで行けるぜ」
「うーわ、せっめぇなぁおい」
ハルマとイノは、通気口の中を進んだ。ほふく前進で。
暗い通気口を抜けると、明かりが見えてきた。
なんで明かり? と思いながら進むと、そこにはある程度の大きさの空洞があった。真ん中には何やら祭壇のようなものが置かれている。
「なにこれ」
「見たとこ、なんかのモンスターの巣かなんかだろうな。ところで、アイツらどこだ?」
「……うーん、こっからは見えねぇけどウィンドウは見えるんだよなぁ……」
通気口の出口付近は少し広くなっており、2人で並ぶことが出来たため、2人で今、そのモンスターの巣を覗き込んでいる状態だ。
「…乗り込むか?」
「なんでお前はいっつもそうなんだよ!! 傘あるからって調子に乗るなよてめぇ!!」
「…冗談だ」
「お前の冗談は笑えねぇんだよ…」
ハルマとイノがそんな言い合いをしていると、奥からなんか出てきた。
植物の根っこのような見た目をしたアイツは…
「マンドラゴラだ!! アイツらもしかして…」
「根っこに捕まったとでも言うのかよ…」
その通りだった。ウィンドウの位置がそれを示している。もてなされている可能性もあるが。
「いやそれはねぇだろ」
あ、ないっすよね。ほんとすんません。
「ならなおさら乗り込んだ方が良くないか?」
「いや、少し様子を見よう。僕らまで殺られたら終いだぞ?」
2人は少し様子を見ることにした。
すると、奥からまたなんか出てきて、祭壇のようなものに転がされた。
「メシアじゃん」
「はぁああああ!? あいつまで捕まってんの!? なにやってんの!?」
奥から運ばれてきたのは、手足を根っこのようなものに縛られたメシアだった。
本当に何やってんだ。
「おい待て、本当にマジで乗り込んだ方が良くないか? これマジで不味いやつだろ」
「…たしかにそれはそうなんだけど…」
そうこうしている内に、マンドラゴラが集まってくる。
そして、一斉に祈り始めた。すると、メシアから何かが出てくるような感じがした。
「待ってくれ、もしかしてアレ、生贄の祭壇とかじゃねぇよな…?」
「…いや、そんなハズ……いや、おい、ウソだろ…?」
イノの顔がどんどん蒼白になっていく。
「待て、本当に待て。あんなもんがここにあるハズねぇよ、アレは王城に安置されてるはず……そういうことかよ…」
「どうしたんだ?」
「元々、ここは王城だったんだ。この街が栄えたのも、城下町だったから。で、アレは王城の地下に安置されてたんだが…王城が移転する時に運ばれなかったらしい」
「つまり…なんだ?」
「アレは…正真正銘の"生贄の祭壇"だ!!」
イノが言った時、マンドラゴラは一斉に祈りをやめた。
気づかれた。
「…チッ、"祈り"を止められたのは良いが、不意打ちは出来なくなったぜ、イノ。どうする」
「不意打ちが出来なくなったとしたら、お前お得意のアレしかねぇだろうがよ…」
イノは呆れたようにため息をつく。ハルマは対象的に、そう来なくっちゃなぁ、と笑う。
「行くぜ、正面突破だ!!」
ハルマとイノは、通気口から飛び出した。そして、着地に派手に失敗した。
「行くぜ、イノ!!」
「おう!!」
すぐに起き上がると、鼻血を垂らしながら、2人は叫んだ。
本当に、この2人はイマイチ決まらない。




