見たくもないモノ
「協調性がないですね」
またか、と俺はおもう。
三者面談の度に言われる台詞だ。
「あ、でも、みんなに合わせる努力は見られますよ。私もそれに手を貸している状態で…」
慌てて取り繕うように、教師は言う。
嘘だ。俺はもう、周りにあわせる努力なんざ、とうの昔にあきらめている。
評判をあげるのに必死なのだろうが、もはや清々しいくらいだ。
俺は昔から、どこか人とずれていた。
感覚も、思考も、なにもかも。
そんな俺が協調性を失うのに、時間がかかるわけがなかった。
俺も一応、授業中は座っているだとか、飯は残さず食うだとか、最低限のことはできていた。
ただ、周りとあわなかった。それだけ。
偉人には奇特な人が多いと聞くが、その理論でいけば、俺が大成することになる。ありえん。
とまぁ、そんなくだらないことを考えながら三者面談を終える。
親も、もう分かりきった事のため、協調性に関してはもはや何も言わない。
医者には、何かの障害を疑われてまでいる。
感覚からズレているのだから、周りになんて合わせようがない。同じものを見ていても、人がどのように感じたかなんて分かるはずがない。
【分からないもの】に合わせるなんて、テレパシーでもない限り無理だ。
小さな頃は、ただただストレスだった。
誰とも分かり合えないし、誰とも共感できない。
しかも、これがなんなのか、周りの奴らどころか、俺自身も、それこそ【分からない】から、何も理解されず、放っておかれた。
今は、どうということは無いのだが。慣れとは恐ろしいものだ。
そんな感じで、のっそりと育ってきた。
大学にも、一応合格することが出来たのだが、やはり合わず、1年経たずに中退した。
そして、今の俺ができた。
正直、この世界で俺が、なぜ普通にあいつらと生活出来ているのか、全く分からない。
克服したわけでは、なさそうなのだが。
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「…マくん、ハルマくん!」
その声で、ハルマは目を覚ました。馬車の中で眠っていた。
「宿、着いたよ?」
モミジが、ハルマの顔をのぞき込んで言う。
「…そっか」
「…? どったの? 元気ない?」
「…いや、別に」
ハルマは露骨に顔を顰めていたが、何かを察したのか、モミジはそれ以上の追及はしなかった。
「…みんなは?」
「もう宿行ったよ」
「待っててくれたのか?」
「一応そうだね」
「んだよ一応って…まぁ、ありがとな」
そう言って、ハルマとモミジは馬車から降りる。
ひとつ屋根の下で、何も起こらないわけもないことはなかった。今までもか。




