鉱石の希少価値
「うぇぅ…ぐす…」
数分後、顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしたツバキと、ホクホク顔のビャクヤが店の奥から出てきた。
「ひっでぇ顔www」
「笑わないでよ!!」
ハルマは、ツバキの顔を見た瞬間吹き出した。
「んで、どうだったよ」
「スタイル良くなってた!!」
「それは良かったな!!」
ハルマが尋ねると、ビャクヤは即答。
的はずれな気がしなくもないが、このふたり的にはこのやり取りが正解だろう。
「……なにされたの?」
「聞かないでもらえるとありがたい」
怪訝な顔で尋ねるモミジだが、ツバキに回答を断られる。
「あーー。セクハラか」
「察してくれるのはありがたいけど言わないでよ!!!!!」
にやにやしながらモミジは言う。鬼だ。
いたずらのつもりでモミジがツバキの体に手を伸ばそうとすると、ツバキはすぐに飛び退く。モミジがその行動を不思議に思っていると、
「あーー、ツバキっち今感度爆上がりしてるからあんま触んないであげて」
ビャクヤの声が飛ぶ。どの口が言ってんだ、とハルマは突っ込むが、突っ込むところは実はなんともうひとつある。
「感度爆上がりってお前なにしたんだよ……」
イノが突っ込んでくれた。ふぁいんぷれー。
「バケツ一杯の媚薬を頭からぶちまけて、」
「まてまてまてまてまてまて」
早速ハルマの待ったが入る。入らない方がおかしい。
「え? なんかおかしかった?」
「いやおかしくはないが」
「どっからどう考えてもおかしいっすよね!? え!? 自分だけすか!?」
首をかしげるビャクヤと、首を縦に振るハルマに、キョクヤの盛大なる突っ込みが入る。キョクヤってこんなキャラだっけか。もういいやどうでも。
「どこがおかしいの?」
超絶純粋に尋ねるビャクヤ。
「すいませーんここに約一名リア狂いまーす」
「失礼な!!」
「そう思うなら自分の行動見直してほしいっすね!!!!!」
姉弟喧嘩が始まった。
ところでハルマたちはどうしてここに来たんだろうか。装備の見直しだった。
「ほえー、この杖かっこいいなぁ」
「そうか?」
ユウキが手に取った杖を、ハルマは眉をひそめながら見る。
「ええ? この流れるようなフォルムとか、先端の鉱石、これなんだろう?」
「ルビー」
「はい??」
ビャクヤの言葉に、ユウキは目を丸くする。
「…え? そんなに驚くこと?」
どうやらルビーは、この世界では希少価値が低いらしい。たまたまルビーの希少価値が低いのか、鉱石全般の希少価値が低いのか、気になるところだ。
「だって、ルビーなんて魔力媒介くらいしか出来ないじゃん。魔力『供給』ができる鉱石が好まれるんだよ」
「へー、それってどんなのだ?」
「いやー、そんなの高すぎて置けないよ」
ハルマが興味本位で聞くが、ビャクヤは両の手を振って苦笑する。
「うちは狩人もなりたての素人がくるような店っすから。そういうのもわからん奴相手にそんなアホみたいに高いもん置いても採算が採れないんすよ」
キョクヤはそう言うと、大きくため息をついた。
「まぁどうしても欲しいって言うなら、方法はあるにはあるよ!」
「なんだよ」
「王都に行ったらどうかな? 王都の武具屋ならあると思うよ! 高いけど!!」
「…観光地のお土産的なアレか?」
「そうそう! 謎の加算!!」
観光地では、限定品でなくても高く売られる。ビャクヤによれば、今回もその類らしい。
「まぁでも、行ってもいいんじゃない? 前のダンゴムシ討伐でお金もあるし」
楽観を極めたユウキがアホ面添えて口を開く。
いや、こいつは元からアホ面だった。
「…じゃあそうすっか。サンキュー、ビャクヤ」
「どもども!」




