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寒気

「じゃあここに住むね」


「まてまてまてまてまてまてまてまて」


ユウキの軽すぎる発言にハルマはいち早くツッコミを入れる。


「って言われてももう決定事項なのです」


「マジかよ」


「私の中では」


「帰れ!!!!!」


この2人で漫才師をやったら売れるのではないかと思わされるいつものやり取りをすると、ハルマはため息をつく。


「お? お? ようやく折れてくれましたかな?」


「誰が折れるか!!!」


ついに堪忍袋の緒がぽっくりと逝ったのか、ハルマはユウキの顔面に蹴りを入れる。


「ちょ、顔はないでしょ顔は!!」


「攻撃力2だからいいだろ」


「そういう事じゃなくてぇ!!!」


今度はユウキが涙目で訴える番だ。

年頃の女子の顔面に蹴りを叩き込む男など、広い世界を探してもこの男だけだろう。


「ううー、血は出てないからいいけど…」


ユウキは鼻を押さえながら、血が出ていないかを確認する。

たしかに顔面に衝撃来ると鼻痛くなるもんね。


「顔面にマジの蹴り入れて鼻血の一筋も垂らせないとか自分の攻撃力の低さに涙が出るな」


「カラッカラの目で何を言うか」


ユウキはハルマを睨む。


「おぉー、怖くねぇ」


「怖くないのかい!!」


「だって俺、防御力カンストしとるし」


完全にキレたユウキはハルマに金的をぶち込んだ。


「っってぇ!!!」


効いた。さすがに急所への攻撃は効くらしい。しかも蹴り。それも全力の。

この程度の反応で済んだのは、やはり防御力のおかげだろう。


「だからなんでそんなに硬いのさ…」


「それは防御力的な意味だよな…?」


ユウキは露骨に顔を顰め、ハルマも顔を顰める。


「あの、痴話喧嘩はすんだ?」


タイミングを見計らっていたのか、ツバキが声をかける。


「死にてぇのか?」


「あっはいすみません」


ハルマの火力を理解しているツバキはすぐに謝る。

機嫌の悪い時にハルマをからかってはならない。自然の理である。


「あー、えと、そのぉ、結局ユウキちゃんはどうするの?」


いつの間にか持っていたポシェットから手鏡を取り出して顔を確認するユウキを指さしながら、ツバキはハルマに尋ねる。


「アレ別に野宿でいいだろ」


「無理だよ!?」


「じゃあ外にちいさな小屋でも建てれば…」


「犬じゃないからね!?」


「なら階段下でいいか」


「魔法使いでもないって!!!」


ハルマの素晴らしき提案を、ユウキは次々と却下していく。


「…おはよう」


2人の大騒ぎに気づいたのか、モミジがむくりと起き上がる。


「おう、おはよう」


「なんの騒ぎ?」


「こいつがここに住みたいんだと」


「ふーん…」


モミジは寝起きもあるのか、興味なさげだ。


「でも空き部屋なんて物置くらいしかないよ?」


「えぇ…」


ツバキの言葉を聞いたユウキは思い切り嫌そうな顔をする。物置に住みたい女子なんていない。男子にもそんなやついない。


「寝袋に詰めてここに吊るしときゃいいだろ」


「私ってミノムシか何か!?」


「そこまで嫌いなんだ…」


「一緒に住む方向で考えてやってるだけでもありがたいと思ってもらいたいものだ」


ハルマは腕を組んで難しそうな顔で言うが、お前にはここに住むことになった経緯を思い出していただきたい。

お前強引にここに住ませて貰おうとしてたぞ。


「あー、でも、お前拘束すきだし良くない?」


「さすがにそうやって住みたいとは思わないかな」


「待って待ってちょっと待って」


モミジが待ったを入れる。

この会話でハッキリと目が覚めたようだ。


「もしかして前言ってたのって…」


「そうこいつ」


同年代ではなかったのか。しかもお前ら幼馴染なのか。


「言ったの!?」


「どうせ会うとは思わねぇし」


「…死にたい」


「でも、ツバキからしたら嬉しい情報なんじゃねぇ?」


「…えっと、ユウキちゃんは拘束されるのが好きってことでいいの?」


「おう」


「……やったぁ」


ツバキがニヤリと笑いながら言うのを見て、ユウキは二の腕をさすった。

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