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転生推理

「で、この子誰」


ツバキがユウキを指さして言う。


「あぁ、さっき言った俺の知り合い。元の世界の知り合いだよ」


「へぇー。そういう話はあんま聞かないなぁ」


「え、マジ? みんな転生者とかには慣れてるみてぇだからよくある話だと思ったわ」


意外なツバキの発言に、ハルマは目を丸くする。


「んー、その辺の話はよく分からないけど、転生者同士が元の知り合いって話はあんまし…」


「ほぇー。たまたまにしちゃ迷惑な偶然だな」


「迷惑なんだ…」


ハルマは何気なく言ったつもりだったのだが、ツバキは顔を引き攣らせる。あれ、なにかおかしなことでも言ったのかな、とハルマは首を傾げる。そんなハルマにはさすがのツバキさんも呆れ顔である。


「……まぁなんでもいいからとりあえず帰ろうぜ。モミジが心配だ」


ここでモミジを扇いでいたイノがこちらを向く。

たしかに、木陰とはいえ外にいるのは危険だろう。


「じゃあ帰るか」


ハルマはモミジをかつぎ上げる。


「い、いや、僕らも疲れてるからさ、なんにもやってねぇハルマが運んでくれるのは万々歳なんだけどさ…」


イノが少し言いづらそうに口を開く。


「なんだよ」


「運び方、もう少し考えてやったら?」


ハルマは、モミジの腰に手を回し、そのまま肩に乗っけるような形…文字通り担ぎあげていた。ハルマの背中側にモミジの上半身、腹側にモミジの下半身が、ハルマの肩の上から垂れ下がっている。

ハルマにこんな筋力あったか。こっち来てから鍛えられたことにしておこう。

筋力云々はともかく、足首つかんで引きずるといい、文字通りかつぎ上げるといい、ハルマはモミジに対して扱いが酷すぎる気がする。


「じゃこうか?」


今度はモミジの向きを変え、モミジの頭が前側に来るようにした。違う。そうじゃない。僕らが言いたいのはそういう事じゃないんだ。


「…普通におんぶすれば良くない?」


呆れたようにユウキがハルマに声をかける。


「…あぁ、その手があったか」


「あ、恥ずかしいとかそういう理由じゃないんだ!?」


忘れてた、と言うようにモミジを背負い直すハルマに、イノは渾身のツッコミを叩き込んだ。



「で、なんでユウキはついてきた」


「住むとこないんだもん」


家に着いてモミジをソファに寝かせたハルマはユウキに問いかける。するとユウキは当たり前だろうとでも言うかのように返す。


「なんでないんだ」


「だって昨日来たばっかだもん」


「は?」


これはハルマには聞き逃せない発言だ。

ハルマがこの世界に来てからこれまでで、少なくとも1週間は経過している。昨日は流石にありえない。


「…え? 1週間前?」


ハルマが経緯を説明すると、ユウキは怪訝そうな顔で聞き返す。

6日間も転生時期に差異があれば、もし『死ぬ』ことが転生のトリガーであるとすると、ハルマの死亡がユウキに伝わっていないのはおかしい。


「じゃあここから考えられるのは2つの仮説だな」


「どこから考えられるの」


「バカかよ」


ユウキはシリアスな空気をぶち壊す天才なのかもしれない。


「① 転生のトリガーは『死』ではない。

② 転生時、飛ばされた時間軸がズレている。 立てられる仮説はこのふたつだ」


「…あー! そゆことか!」


ハルマに説明され、ようやくユウキも話の趣旨を理解する。そんなユウキに、ハルマは大きくため息をつく。


「だがまぁ、①はないだろう。意識がこっちに来ている以上、俺自身がこっちに飛んでいるとしか考えられない」


「え? VRとか夢の可能性も…」


「まぁその可能性もあるが、食材に味があり、それに感覚があることに説明がつかない。その時点で夢は却下、俺たち2人は別に何かの実験に協力してる訳でもないからVRの可能性も却下される。んな高性能なVR、まだ開発されてねぇだろ?」


「たしかに」


「そうなってくると②の可能性がかなり大きいな。…でもなんで別の時間軸に飛ばす必要がある? 出会わせないためだったら6日なんて短すぎるし、なにより同じ場所に転生させる理由が分からない……」


「神様がミスったとか?」


「…そんな簡単な理由だといいけどな」


真相に近づいてはいるのだろうが、そんな実感は全く湧かない。

下手な推理で、真相から遠ざかっている気さえする。


「…今はなんにも分かんねぇな」


ハルマとユウキは、大きくため息をついた。

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