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サミアンの不思議な肉球~謎のもふもふを拾ったら家族が増えました~  作者: 三国華子


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9. Sランク冒険者

ブクマありがとうございます。

本日は、朝、夜の2回更新になります。

「ゲイルシュライク28羽ですか!?」


 アリアの声がギルド内に響いた。

 ギルド内の視線を一身に集めたアリアは恥ずかしそうに自分の口元を押さえた。


「すいません。動揺してしまって」

「いえいえ、ここに出しちゃっていいのかな?」

「クリス様はアイテムボックスをお持ちなのですか?」

「いや、おれじゃなくて……」


 クリスはサミアンをヒョイと持ち上げると、カウンターの上に乗せた。


「タミアンのリュックはたくたんはいりまちゅ!」

「えっ? マジックバッグですか?」

「違います。これは銀貨3枚で買える普通のリュックです。ただリュックを手に入れたことで、能力が目覚めたみたいで……」

「まあ……」


 サミアンが色々言いたそうだが、めんどくさいので、口をふさぐ。

 サミアンごと抱え、リュックの中からゲイルを取り出すと、カウンターの上に山ができた。


「討伐報酬、銀貨2枚が28羽分で、金貨5枚と銀貨6枚になります。今ご用意しますね」


 正直ありがたい臨時収入だ。トルクトスまでの路銀としては十分すぎる額だ。


 差し出された報酬に手を伸ばしたその時、隣のカウンターにいた男が、突然クリスの手首を掴んだ。


「え?」

「おまえっ! この痣をどこで!?」


 クリスの腕を掴んでいるのは、黒いフードを被った怪しげな大男だった。


「痣?」

(この肉球のことか?)


 クリスは、痣のことを知る獣人を探しに行くところだ。

 この男は明らかに何かを知っている。

 だが、突然腕を掴まれて、恐怖しか感じない。

 この腕の主は、自分より強い。普段ならこんなに簡単に腕を掴まれることはない。

(たとえ、目の前の金に目が眩んでいたとしてもっ!!)


「ガイン様! 落ち着いて下さいっ」

 

 その時カウンターの向こうのアリアが、大男に向かい声をかけた。


「ああ、……すまない」


 アリアの声に我に返ったのか、男は謝罪と共に、あっさりとクリスの腕を解放した。

 アリアは、ほっと胸を撫で下ろすと、改めてクリスに向けて口を開いた。


「クリス様、こちらはSランク冒険者のガイン様です」

(Sランク~!?)


 Sランクは世界でも数えるほどしかいないはずだ。

 こんな国境の小さな街のギルドで遭遇するような存在ではない。


「ここでは騒ぎになりますので、二階の商談室でお話されては? 使用許可を取ってまいりますので」


 アリアは、ガインとクリスに交互に視線を向け、そう提案した。


「頼めるか?」


 ガインは、アリアではなく、クリスを見つめたままそう言った。


(有無を言わせないってやつだな……)


 カウンターの下ではサミアンが、心配そうに見上げている。

 クリスは安心させるようにサミアンに微笑むと、アリアに向かって「お願いします」と告げた。 

 


 場所を替えて改めて向き合う。

 落ち着いて話せるようにと気を利かせたアリアが、リラックス効果の高そうな、いい香りのお茶をサーブして、部屋を後にする。


「おれはBランクのクリス。特に拠点は持たずに活動している。ここへはトルクトスへ向かう路銀を稼ぐために立ち寄っただけだ」


「そうか、先程は失礼した。おれはガイン、Sランクだ」


 それ以上の説明はなく、沈黙が流れる。

(こっちから話を切り出すべきなの? でもなんて切り出せば?)


 クリスが思考を巡らせていると、隣に座った(正確には、ソファに乗っているだけだが)サミアンが、突然口を開いた。


「タミアンでちゅ、ランクはありまてん」


 自己紹介がしたかったらしい。

 だが、緊張感がわずかに薄れる。


「その犬は獣人なのか?」


 ガインは少し驚いたような声を出すと、目深に被っていたフードを下ろした。


「えっ……獣人?」


 男は、真っ黒な三角耳を持った獣人だった。そしてその瞳は、サミアンとよく似た、綺麗なブルーだった。


「狼っ!? あ、目が青いから犬か?」

「……不本意だがそう思ってくれて構わない」


 あれっ? 既視感。


 犬の獣人って、自分を「犬」と認めなくない病なのか?


「タミアンはおおかみでちゅ」


(ああ、ここにもいた…… そして簡単にしゃべるな!)


 ガインが犬の獣人と聞いて、なぜか優越感を感じたのか、サミアンがドヤ顔で告げる。

 だが、サミアンをじっと見つめたガインは「狼はそんなマヌケ面で丸っこくない」と言い捨てた。

(何気にヒドイ……)


「クリチュたま、気を付けてくだたい。このひとは悪いひとかもちれまてん」


(おれもそう思う)


「恐らく、おれはクリス殿の敵ではない。その痣について聞きたい。それは、今は姿を消した狼族に伝わるものに似ている気がする」


「その言い伝えとは?」


 なぜか壮大な話になったが、事実を知ったガインが、サミアンをどうするつもりなのかわからない。

 クリスは、警戒して慎重に話を進める。


「ここから先は、痣の主だから話せることだ。他言無用で頼む」


「……わかった」

「わかりまちた」


 変な沈黙が訪れる……


「すまないが、タミアンとやらは部外者なので、退出いただけるか?」


(ですよね……)


 ひとまずサミアンを部屋から出した方が話が早そうだ。そう考えたクリスだが、サミアンはいつも、クリスに少しも考える時間を与えない。


「タミアンはぶがいちゃではありまてん! タミアンとアクチュしたらピカッてひかりまちた!!」


(あ、ぜんぶ言っちゃった)




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