57.全ギルド
翌日クリス達は、王都に向けて出発した。
「白狼」の秘密に関しては、あまり情報が得られなかったが、サミアンの母が姿を消したことに、聖竜教が絡んでいる可能性があることはわかった。
ノインという新たな狼族に出会えただけでも、バルガンの町に来た甲斐はあっただろう。
だが、クリスとガインのストレスは、限界まで達していた。
これからの冒険者生活を「なかよち家族」のパーティーメンバーとして過ごさなければならない罰ゲームのような状況が、王都への足を遅らせていたのだ。
「クリス、遠くにレイザーホーンの群れが見えるぞ」
「なに? それは狩っておかねば、農家の人たちが苦しむことになるな」
ちなみにこの辺は荒野で、畑などない。普通の冒険者はBランクの群れなど、避けて通るだけだ。
だが、この時のクリスとガインは変なテンションだった。なんでもいいから現実逃避したかったのだ。
「ノイン、ここでサミアンを守れ」
「はいっ! 父上!」
ビスカルディーニの男ノインは、白狼であるサミアンを守ることが自分の使命だと目覚めたらしい。サミアンがウザく感じるほど、ついて回っている。
「いくぞ! クリス」
「ああ!」
二人はレイザーホーンの群れに突っ込んで行った。
クリスの同時射ちを初めて見たノインは、大興奮だ。
「すっげぇ! 一度にあんなに……」
ガインが大剣を一振りするごとにレイザーホーンが倒れて行く。
時々レイザーホーンから光線のようなものが出るが、クリスの矢がそれを阻止していく……
それだけでなく、すれ違いざまに、短剣で太い血管を切り裂き、着実に倒して行く。
「サミアン、父上と母上はこんなに強いのか?」
「はい、おとうたまとおかあたまは、ちゅよいでちゅ。でもなんであんなに張り切っているのでちょうか?」
「きっと、おれたちに、背中を見せるためだ! おれたちにも強くなれと無言で言っているんだ」
「なるほどっ! かっこいいでちゅ」
子供達は勝手に勘違いをしてくれた。ただのストレス発散だというのに……
途中で何度かレイザーホーンの群れを狩りながら、一行は王都に到着した。
「なんか、気が重いな」
「ああ、直接解体所に行くか」
「どうちてでちゅか? おじいたまには会わないのでちゅか?」
すっかりレオルドに懐いたサミアンは抗議する。ノインにギルド長に一目おかれる姿を見せたいのかもしれない。
「レオルドにはいつでも会える」
「そうだぞ、しばらく王都にいるからな」
不満顔のサミアンを宥め、ガインとクリスはさっさと解体所に向かった。
「ガイン様、クリス様お帰りでしたか」
解体所の所員が出迎える。
数が多いことを説明し、倉庫に案内してもらった。
「では、ここに…」
言われるやいなや、二人はマジックバッグから、次から次へとレイザーホーンを出して行く。
全て出し終えると「じゃあ報酬は明日以降で」と伝え、足早にギルドを出て行こうとした。
「よっ!『なかよち家族』!」
倉庫の出口には、滅茶苦茶楽しそうなレオルドがいた……
ガインとクリスは、顔を手で覆い項垂れた。
一番、パーティー名を知られたくなかった相手だ。
男同士の夫婦に見られても動じないガインが、クリス以上に項垂れている。
人目はどうでもよくても、自分の中の何かと葛藤しているのだろう。
「なぜ知っている?」
「いや、SランクとAランクのパーティーだぞ、全ギルドに通達されるのは当然だろう?」
「全、ギルド……」
これで、どこに言っても『なかよち家族』と呼ばれることは決定した。
「ククッ、まあ、折角来たんだ、上がって行けよ」
そういってレオルドは、サミアンを抱き上げる。人質をとられたようなものだ。
レオルドは、ノインに視線を移す。
「ガイン、おまえ子供いたのか?」
(レオルドさん、やっぱりめんどくさい)




