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サミアンの不思議な肉球~謎のもふもふを拾ったら家族が増えました~  作者: 三国華子


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54/59

54.父親じゃない

 翌日は、書店や図書館などで熊族の伝記を調べた。

 白狼に関しては、700年以上前から記述があった。アルガへ攻め込んだ熊族が、白狼率いる狼族に敗北したというものだ。

 その後も何度か二種族の間では争いがあったようだが、熊族は常に白狼の前に敗北を喫したということだった。

 だが、白狼そのものに関する新しい情報は、特に得られなかった。


「ガイン、これからどうする? もっと調べるか?」

「いや、伝記を見ても、白狼を神格化するような表現が何もないところを見ると、口伝も期待できないだろうな」

「う~ん、王都に帰るか」


「王都に行くのか!?」

 

 ガインと今後について話し合っていると、ノインが突然声をあげた。

 そういえば、ノインがどうしたいのか聞くのを忘れていた。


「ノインは行きたくないのか?」

「狼族は王都へは近づかない方がいいんだろ?」

「わざわざ狼と名乗らなければ大丈夫だ。おまえもおれも目が青いからな」

「タミアンもでちゅ」

(おまえはそれ以前だ)


 ガインがそう言うと、ノインは、不快そうに顔を歪めた。


「なんだよ、Sランクなんて言ってもカッコ悪いじゃないか! おまえ、それでも『狼』か?」


 ガインは、何も言い返さない。

だけど、表情を変えることもなかった。

 

「おとうたまはかっこいいでちゅ!」


 クリスが、口を開こうとすると、先にサミアンが、耳と尻尾をたてて、怒りを露にした。


「かっこいいもんか! 狼の誇りはどこに行った! おまえなんか、父親じゃない!」

(父親じゃないけどな……)


 そう言うとノインは一人で走り出した。ここは市街地だ。

 小さいノインの姿は、あっという間に人混みに紛れた。

 

「探す?」

「いや、少し時間をおこう」


 孤児のノインに行く場所はない。この町の子供だから、宿の場所もわかっているだろう。

 この件は、クリスの一存でどうするか決めることではないように思えた。


「タミアンもお出かけちてきまちゅ」

「えっ?」


 そう言い残し、サミアンまで人混みに飛び込んで行った。

(おまえは、迷子になるだろっ!!)


「サミアンッ!」

「クリス、落ちつけ。あいつらは獣人だ。鼻も利くし、動きも速い。心配はいらない」

「でも子供だ!」


 クリスには、ガインの対応が冷たく感じた。獣人は自立が早いというが、人間のクリスには、小さい子供を一人にするのは、心配でしかない。


「なら、探しに行けばいい。だが、見つけてもしばらく様子を見てやれ。なんでもおまえの考えを押しつけるな」

「なんだと! おれがいつ押しつけた!」


 ガインは、何も言わない。

 いつもそうだ。


「おれ、探しに行ってくる」


 クリスは、サミアン達を追った。サミアンはああ見えて動きが速い。簡単には見つからないかもしれない。だけど、動かずにはいられなかった。


 


「ゼェ、ゼェ、お、おまえ、トロそうなのに、速いなっ!」

「タミアンは狼でちゅから」

「そ、そうか」


 ノインは、全速力で走った。

 なのに、後ろにはアホ面のままピッタリサミアンがついてくる。


 ノインは、街の広場にたどり着くと足を止めた。


「ハァ、ハァ、なんでついてくるんだ?」

「タミアンはノインのおにいたんだからでちゅ」

「おにっ、そうだった。おまえ200歳だったな」

「とうでちゅ、本当はおとうたまも弟でちゅ」


 さすがにそれは違和感しかない。

 広場のベンチに腰かけると、隣にサミアンが、乗ってきた。

 サミアンは、ただまっすぐ前を向いて、広場の様子を眺めている。ノインに、何か言いたくてついてきたわけではないようだ。


「おれ、帰らないから」

「とうでちゅか…… タミアンはかえりたいでちゅ」

「なら帰れよ」

「ノインが帰りたくなったらいっちょに帰りまちゅ」


 サミアンは、相変わらず広場を眺めている。時々、美味しそうな屋台飯を手にした人が通り過ぎると、目で追っている。腹が減っているのかもしれない。意識すると、ノインの腹もギュルギュル音をたてた。


 ノインは、サミアンを抱き上げ、顔の高さに持ち上げた。


「腹減ってるなら、あいつらの所へ帰れよ。おれ金ねぇし」

「ノインは、ちかたのない子でちゅね」


 そう言ってサミアンは、ノインの頭を撫でた。どうしても兄貴面をしたいらしい。

 すると、額の辺に何やら熱と光を感じた。

 

「ん? おまえ今何をした?」

「タ、タミアンは何もちてまてん」


 サミアンは、ばつの悪そうな顔で視線を反らした。



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