53.ダサさの極み
「ガイン様、クリス様、お二人はパーティー登録されているようですが、パーティー名はつけないのでしょうか?」
報酬の支払いを担当してくれた受付嬢は、二人分の名前を呼ぶのが面倒だったのか、パーティー名申請をすすめてきた。
「パーティー名?」
「はい、記録を見ても、素晴らしいものばかりで、このままでしたら、伝説のパーティーにもなり得ます。今のうちにパーティー名を決めてしまうのはいかがでしょう?」
確かにパーティー名は、空欄のままだ。
ガインと組んでから、依頼数もそれなりにこなしてきた。そろそろ決めてもいい頃かもしれない。
するとサミアンが、カウンターに飛び乗り、口を開いた。
「タミアンが、きめまちゅ!」
(悪い予感しかしない!)
「いや、おれが考える」
普段何も言わないガインが、即座に名乗りを上げる。やはり、サミアンの名付けは心配なのだろう。
だが、ガインに任せて大丈夫だろうか?
(それはそれで心配しかない)
「じゃあ、おれが決めるよ」
「タミアンがきめまちゅ!」
「いや、おれが……」
話が平行線だ。
「ちかたありまてん。ぢゃんけんできめまちょう。ぢゃ~んけ~ん」
「えっ?」
「あっ?」
「ぽ~~んっ!」
結果は慌てたガインとクリスがグーを出し、パーを出したサミアンの勝利だった。
サミアンは、パーしか出せないのに、咄嗟にグーを出してしまったことが悔やまれてならない。
一部始終を見ていた受付嬢は、文字が書けそうもないサミアンに向けて口を開いた。
「それでは、こちらで記入いたしますので、パーティー名をお願いします」
「はい!」
サミアンの考えるパーティー名に不安しかない。だが、まかり間違ってかっこいい名前を思いつくかもしれない。
クリスとガインは、祈った。
「パーティー名は……」
(神よ!!)
「『なかよちかぢょく』でちゅ!!」
(ダ、ダサさの極みっ!!!)
クリスの想像以上にダサかった。ガインも隣で、見たことないほど絶望している。
受付嬢はパーティー名申請をすすめたことを後悔しているのか、額に汗しながら、口を開いた。
「パ、パーティー名を『なかよち家族』で承認いたします」
(承認するな~~~!!)
「ふう、いい名前おもいちゅいてよかったでちゅ」
スッキリした顔でそう言うサミアンの後ろで、クリスとガインは崩れ落ちた。
これからずっと、ことあるごとにこの名で呼ばれるなんて考えられない。違った意味で「伝説のパーティー」になってしまう。
話に加わらなかったノインは、一人でキョトン顔をしている。
とりあえず受付で、打ちひしがれていては邪魔になるので、手前のバーに移動する。
いつもエールかワインしか飲まないガインは、珍しくストレートの蒸留酒を注文した。
よほど、現実を忘れたいのだろう。
「とれでは、パーティー名が決まったことをちゅくちて、かんぱ~い!」
「かんぱ~い!」
子供たちの元気で明るい声が響いた。
「かんぱい」
「かんぱい」
その後、大人二人の死んだような声が小さく聞こえる。
SランクとAランク冒険者のパーティーともなれば、緊急招集などの観点から、その情報は各地のギルドへ共有される。
こうして「なかよち家族」の名は、めでたく全ギルドに知れ渡ることとなった。
報告を受けたレオルドは、王都アルガのギルド長室で、腹を抱えて笑った。




