52.そして母になる
クリス達は手続きを終え教会を後にした。
ノインを煙たがっていた他の子供たちも、いざ離れるとなると寂しいのか、別れ際には涙ぐんでいた。
「あまり収穫はなかったな」
「あったよ! 大有りだよ! 子供が増えたんだぞ!!」
「いや、白狼についてだ」
「知ってるよっ!!」
ガインが「白狼」について話していることはわかったが、あまりにもサラッと子供を引き取ったので、一言物申したかっただけだ。
「タミアンに弟ができまちた」
(えっ? おとうと?)
「ふっざけんな。おれが兄貴に決まってんだろ! おれは4歳だぞ」
嬉しそうだったサミアンは、急に真顔になった。
「タミアンは200たいでちゅ」
「嘘つけっ!」
まあ、そうなるだろう。
自分達も前はそんな反応だった。
「ノイン、白狼については、親から聞いているか?」
「当たり前だ! ビスカルディーニは白狼を守る為に存在するんだ」
「それがその『白狼』だ」
1分ほど、沈黙が続いた。
「嘘だ」
どうしても受け入れられないらしい。
「嘘じゃないさ。サミアンは伝説の白狼の子供で、不老不死の力を引き継いで200年も生きているんだ」
クリスが言うと、ノインは確認するようにクリスを見上げた。
(受け入れろ、事実だ)
「そんな…… 狼はこんなに丸くない」
一昔前のガインと同じセリフだ。
「ほんとうでちゅ、だからノインはタミアンのおとうとでちゅ」
弟という存在がよほど嬉しいのか、尻尾が千切れそうな勢いで揺れている。
こんなアホ面で言われても、尚更、受け入れがたいことだろう。
(がんばれ、ノイン)
「それより大丈夫なのか? 簡単に子供を引き取って。子育てには責任が伴うんだぞ! ヤバイ奴を世に排出したら、周りに迷惑をかけるんだ」
何を考えているかわからない男にも、一言物申す。
ガインはクリスを見つめると少し間を空けてから、口を開いた。
「おまえはいい母になると思った」
(はいっ!?)
ガインはそれだけ言うと、前を向き、何事もなかったかのように歩いていく。
だが、ノインはそれが気に入らないようだ。
(おれも気に入らない)
「おれは、こんな弱そうで、男か女かわからないような人間が、母親なんて認めない!」
「おれだって、クソガキを子供にするつもりないわっ!」
子供と同目線で、言い合いになる。ガインの言う「いい母」の基準が、全くわからない。
そうこうするうちにギルドに到着した。
査定を頼んであったレイザーホーンの報酬を受けとるためだ。
「おれ、冒険者ギルドって初めてだ!」
「タミアンは、ぢょうれんでちゅよ。王都のギルド長もタミアンには、いちもくおいてまちゅ」
(あながち間違いではない……)
サミアンはどうしてもアニキ風を吹かせたいらしい。
「ガイン様、クリス様、こちらレイザーホーン6頭分の報酬で、金貨30枚と、角の状態が良かったので追加分12枚になります」
周りの冒険者たちが、ザワめく。クリス達にしては普通の額だが、多くの冒険者達には、驚くべき金額だ。
もちろん、足元でノインも驚いている。
「父上は当然として、おまえも強いのか?」
ノインの言葉に、ギルド中の視線がクリスに集まる。
クリスはまだ有名ではない。どこのギルドでも最初はこの反応だ。
「クリスはAランクのアーマードボアを一人で倒した」
ガインの一言で、周囲は納得したようだ。
ノインは……
目を丸くしてクリスを見上げている。
「『母上』と呼んでも?」
(なんでそうなるっ!!)




