50.毎日かくれんぼ
「あなたもちんぢてくれまてん」
「『あなた』じゃない『ノイン』だ」
ノインと名乗った少年に、サミアンは既視感を覚えた。
黒い三角耳に、青い瞳……
「はっ!! ノインは、おとうたまに似ていまちゅ」
「おとうさま? お前の父親がこんなかっこいい狼なわけないだろ?」
そこへ他の子供たちが、姿を表した。
「サミアンちゃん、ノインに構うのはやめたほうがいいわ」
「そうだぞ、そいつは青い目のくせに自分を狼って言ってる変な奴だ。神父様に嘘でも言うなっていわれてるのに」
他の子供たちが、そう言うと、ノインは「けっ!」と顔をそらした。
クリスに「狼と名乗るな」といわれているが、この少年が嘘つき呼ばわりされるのを、黙ってみていられない。
「ノインたまはうとをついていまてん。タミアンも目が青いけど、狼でちゅ」
サミアンがそう言うと、大きな笑いが起きた。
「やだっ、サミアンちゃんたら、優しいのね。ノインなんて庇わなくてもいいのよ」
誰も信じてくれないのは辛いことだとサミアンは思った。
ノインがこんなところで一人で不貞腐れるのも納得だ。
「サミアーン、帰るよー」
その時、中庭の方から、クリスの声が聞こえた。
ここにいるのは全員、孤児達だ。サミアンが帰るのが寂しいような妬ましいような、何ともいえない空気になる。
「タミアンちゃん、もう帰っちゃうの?」
「いや、あの二人とサミアンは全然似てなかった。きっとここに預けるつもりで、神父様と話をしていたのさ」
「ああ、きっとそうだな」
「そうね。これからも一緒よタミアンちゃん」
子供達は、サミアンがここの仲間になると思って、大はしゃぎだ。
サミアンは、この世の終わりのような顔で、話を聞いていた。
(タミアンは、ちゅてられてちまうのでちゅか!?)
「大丈夫よタミアンちゃん。お姉さんがついてるわ」
「そうだぞ、ここにいれば毎日かくれんぼできるぞ」
「……毎日かくれんぼ」
サミアンは、少し考えた。
かくれんぼは楽しかった。だけど、クリスと出会ってからの日々とは比べようもない。
「おい、おまえら、勝手なこと言って、コイツを困らせるな」
落ち込んだサミアンを気づかったのか、ノインが他の子供達を黙らせる。
サミアンは、ただでさえ爪弾きにされているのに、自分の味方をしてくれたノインが、気に入った。
「ノインたま、いっちょに来てくだたい」
「なんでだよ。見送りなんてしないぞ」
「タミアンのおとうたまに会ってほちいでちゅ。かっこいいので」
ノインは、少しだけ、さっきサミアンが「似ている」と言ったことが気になった。
「まあ、見るだけなら」
そう言って、他の子供達と共に中庭に移動する。
「おーい、サミアーン」
呼んでも戻って来ないのでもう一度声をかける。
すると、裏庭の方から他の子供達と一緒にサミアンが戻ってきた。
短時間で随分仲良くなったものだと思いつつ、眺めていると、その中の一人が、こちらを見て動きを止めた。その後、ものすごいスピードで、こちらに向かってくる。
「父上っ!!」
(ちちうえぇっ!!)
クリスの横では、小さいガインがガインに飛びついていた。
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