47.奥が深いなSランク
三日後、途中で適当に魔獣を狩りながら、熊族の町バルガンに到着した。
熊族の町と言っても、あくまでも200年前の話だ。今では他の種族や人間も多く暮らしている。
「賑やかな町だな。ボルグさんみたいな人がたくさんいる」
「ここに暮らす獣人の半数は熊族だからな」
バルガンは鉱山も近く、労働者も多い。王都のような洗練された商業都市ではないが、飲食店や道具屋などが多く建ち並び、活気に満ちていた。
クリス達は情報収集も兼ねて、冒険者ギルドを訪れた。カネッサのような小さな村とは違い、伝承に詳しい者を探すのも一苦労だ。
とりあえず受付を素通りし、解体所へ向かう……
「レイザーホーンを討伐したのだが、こちらでいいのか?」
「え? ああ、これはガイン様、バルガンにようこそ。レイザーホーンですね。こちらで引き取らせていただきます」
「うむ」
ガインはレイザーホーンを次々と取り出す。
「えっ、あっ、お待ちくださいっ! まだ出てくるのでしょうか?」
「あと3頭だ」
すでに3頭のレイザーホーンが山になっている。6頭はさすがに、作業の邪魔になりそうだ。
「す、すみません。やはり倉庫の方にお願いできますか?」
「ああ、かまわない」
ガインは一度出したレイザーホーンをしまって、まとめて倉庫に預けることになった。
査定には時間がかかるというので、一旦ギルドを後にする。
「最初に頭数は伝えた方がいいぞ」
クリスは、毎回ガインの言葉が足りないと思っていた。
余計なお世話だと思いつつも、今後のために一言言っておくことにした。
「最初に伝えると、大げさに持ち上げられるのでな。後から伝えた方が、相手が驚いているうちに去ればいいので面倒がない」
(確信犯だったのかっ!)
確かに事前に伝えたら「さすがはガイン様!」となるだろう。
毎回だと面倒になる気持ちもわかる。「さすが」と言われて喜ぶような奴は、クリスの手柄を奪ったSランクのような輩になるのだろう。
(奥が深いなSランク)
時間の空いたクリス達は、情報収集のため教会を訪れることにした。
トルクトスという土地は、他の人間の国と違い、多宗教国家だ。
獣人達には、種族にもよるが、白狼のような神格化された存在もおり、人間の間で広く信仰されている『聖竜教』も、ここでは布教に苦戦しているようだ。
だが人間が治めるようになり、トルクトス国内にも「聖竜教」の教会が建てられた。熊族は元々無宗教だったので布教が進み、ここ
バルガンにおいては、町民の70%が「聖竜教」を信仰しているらしい。
「教会は行きたくありまてん」
いつもは先頭を歩きたがるサミアンが、二人の後ろで二の足を踏む。
「なんで?」
「孤児院がありまちゅ」
「サミアンは孤児院が嫌いなのか?」
そういえば、最初に会った時もそんなことを言っていた。
「むかち、庭に繋がれて大変な目にあいまちた」
どうやらトラウマのようなものがあるらしい。わざわざ傷を抉るのも可哀想な気はするが、サミアンが子供の姿のまま永遠に生きるとしたら、このままでいいとも思えない。
クリスはサミアンを抱き上げ考える……
「今度は繋がれない。おまえには新しい家族がいる」
クリスが答えを出す前に、ガインが言った。そしてクリスの腕からサミアンを引き取り、腕の中におさめた。
「教会にいる間は、ずっとここにいれば問題ない」
「おとうたま……」
サミアンは、まだ不安を残したような顔をしている。
よほど怖い思いをしたのだろうか……
「ガイン、やっぱり教会は……」
「行きまちゅ! タミアンはこわくありまてん!」
サミアンは、残像が見えるほど大きく震えていた……




