45.勝ち誇る女
「おかあたま、タミアンのちるち残ってまちゅね」
クリスの手を見ながらサミアンが嬉しそうに尻尾を振っている。
クリスも前ほど、この痣が嫌ではなかった。
(サミアンとの絆だしな)
「それよりクリス、おまえ『お母さん』呼び承諾したのか? ガインと夫婦になったみたいだぞ」
(それなー)
「できれば止めてほしいけど、言っても聞かないし……」
ガインとサミアンを見ると、ガインは、特に気にした様子もないし、サミアンは大喜びだ。
「まあ、愛称だと思うことにするよ」
周囲の誤解はあるだろうが、気にしなければいいだけだ。
今のクリスには、この3人の関係がとても心地いいものだった。
「で、このあとはどうするつもりだ? 国に帰って叔父さんと対峙するのか?」
レオルドはそういいながら、サミアンをチラチラ見ている。クリスと共にこの国を出て行くことを心配しているのかもしれない。
「今回、刺客をだいぶ捕らえたからしばらく今回のような襲撃はないと思うぞ」
ガインの言葉には一理ある。
いくら叔父とて、裏で働く人員には限界があるだろう。あれほど任務に忠実な手練れを養成するには、時間と金がかかる。
そう何回も送り込めないだろう。
「提案なんだが、おまえの叔父さんの件、おれに任せてくれないか? アルヴェリア王国の王都ギルド長は古い友人だ。内密に調査を依頼することもできるだろう」
レオルドは、かっこよく言ったが、サミアンと離れたくないだけである。
(まあ、後で調査費請求されても、金はある。怖いほど)
「じゃあ、お願いしようかな。しばらく狼族の件も調べたいし……」
クリス達は、狼族の伝承を引き続き調べることにした。
サミアンの中に封印されたものが何なのかわからなければ、サミアンはこの子供の姿のまま、また長い時を生きることになる。
(おれとガインには寿命がある。せめて自分を守れるようにしてあげたい……)
クリスが、サミアンに微笑むと、サミアンは不思議そうに首をかしげた。
クリス達は、ギルド長室を出て、ホールに向かった。
なぜか不審人物の取り押さえに協力したということで、町から報酬がでるらしい。
(元はといえば、おれが引き寄せたわけだが…… あとで寄付でもしよう)
カウンターでは、クネクネがクリスを睨んでいる。
(正直行きたくない……)
「こちら、不審人物7人分の報酬で、金貨70枚になります」
(金貨ななじゅうまいっ?)
「多いな」
「はい、今回の不審者に関してはなんらかの組織に所属していることが推測されることと、市街地での武器使用もありましたので、この金額になります。ガイン様の勇姿、私も拝見したかったですわ!」
先ほどまでクリスを睨んでいた女とは別人のようだ。
「今回はクリスの手柄だ」
(余計なことを言うなっ!!)
ガインが報酬をしまう隙に、クネクネが片眉をあげ「チッ」と言いたげな顔でクリスを睨む。そして、クリスの胸元に視線を向ける。
「あら? あなた…… 女性でしたの?」
「え、まあ、一応」
「オホホホッ、そうでしたの」
クネクネは、なぜか上体を反らし、勝ち誇ったような顔をした。
(男の姿の方が、ライバル視されていた意味がわからない……)




