39.おじいたま
「何なんだ?『おとうたま』『おかあたま』ってやつは?」
レオルドは、部屋に入るなり、サミアンに訊ねた。
「タミアンのあたらちいかぢょくでちゅ」
サミアンは嬉しそうに尻尾を振るが、多分その説明じゃ伝わらない。
だがレオルドにとって、サミアンの言うことは絶対なので「そうか、そうか」と頭を撫でている。
「おれは家族じゃないのか? 寂しいなぁ」
レオルドは、あざとくおやつを手渡しながら、ぼやいた。
「ありがとうごだいまちゅ お、おじいたま!」
「お、おじっ……まあいいか」
「おにいさま」と言われるとでも思ったのだろうか?
端からみたら、孫を溺愛する「おじいちゃん」そのものなのだが……
そんな話をしていると、クネクネが報酬を持ってやってきた。
なぜか、部屋を出ていく時に、クリスにだけ見えるような角度で舌打ちをして出ていった。
(誤解なのに)
レオルドは、クリスとガインの前に大きな袋をドンと置いた。
「ブラッドベア2頭の討伐報酬、金貨160枚と、村からの依頼分、金貨40枚で、金貨200枚だ」
(1人金貨100枚……桁が増えた)
クリスは、もう驚かない。
ただ遠い目をした。
(そう、流されるままに……)
そこからはカネッサ村の話になり、モナの話を共有する。
今回カネッサ村の狐族を訪ねるよう薦めてくれたのは、レオルドだった。ギルド長という立場もあり、様々な種族に精通している。
「正直、一番狼族と親交があったのは狐族だ。あと調べるとしたら、俺の地元の獅子族の集落や、いざこざのあった熊族くらいか……」
ただ、あまり期待はできないという。とりあえず、クリスの痣は悪いものではないし、白狼は見つかった。急ぐ必要はないのだが、サミアンの記憶が欠けている理由も、人型になれない原因も、まだわかっていない
サミアンのためにも調査を続けることを決めた。
用が済んだので、ガインが席を立とうとする。
すると、レオルドが「あー、おいおいちょっと待て」と引き留める。
「実は他にも話があって、寄ってもらったんだ」
そう言ってレオルドは、机の書類の中から2枚の紙を引き出して、クリスの前に置いた。
(あっ...…)
それはクリスによく似た女性と、クリス本人に見える男性の人相書だった。
「これは手配書じゃねぇ。捜索依頼書だ。だからおれの権限で、トルクトス国内全域はギルド長預かりとなっている」
「………」
「話を聞かせてもらうわけにはいかないか? クリス、いや『エレノア』か?」




