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サミアンの不思議な肉球~謎のもふもふを拾ったら家族が増えました~  作者: 三国華子


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38/51

38.爆誕

「おかあたま、あとどのくらいで王都につきまちゅか?」

「そうだな、ここからまだ2時間はかかる。疲れたのなら休憩するぞ。あと『おかあたま』はやめろ」


 クリス達は無事任務を終え、王都への帰路に着いた。

 そして、サミアンは当然のようにクリスを「おかあたま」と呼んでいる。


「クリスは意外と細かいことを気にするのだな」

「細かいことじゃない!! よく考えてみろ! おれはわざわざ男装しているのに「おかあたま」なんて人前で呼ばれたら台無しだろうが。それに、見た目には男同士のおもろい夫婦にみられるんだぞ! おまえそれでいいのかよ」


 クリスは、必死にガインに訴えかけるが、ガインはピンとこない顔で空を見上げ、少しの間考えると、クリスを見て言った。


「知らない奴が、おれたちをどう思うかは、おれたちに何か関係あるのか?」

「関係あるだろっ! 大体っ……」


 クリスは、言いかけて言葉を飲んだ。

(関係……ないのか?)

 他人がどう思うかは、クリスの中でも案外どうでもよかった。


「だ、だけど男装しているわけだし!」

「愛称だと思えばいいんじゃないか?」

「とうでちゅ! おとうたまの言う通りでちゅ」


 話がまったく通じない。

 この3人の中では、なぜかクリスが異端児だった。


「せめて『おにいたま』にならないか?」

「まだ言うのか……」


 そんな問答を繰り返していたら、気づいた時には王都に辿りついていた。


「おかあたま。やっとちゅきまちた」


 クリスの意見は通らなかった。




 報告の為ギルドを訪れる。すると、相変わらずクネクネした女性が勝手に話をつけ、ギルド長室に招かれた。


「おかえり、サミアン」

「ただいま戻りまちた。レオたま」

 レオルドは早々にサミアンを抱き上げ、腕に抱えた。

 以前一日中抱かれていたせいか、なぜかサミアンも定位置のようなアホ面をしている。


「フォレストボアの群れの討伐依頼だったな。何頭だ?」

「ブラッドベアが2頭だ」


 一瞬、空気が固まる。

 ガインはいつも、説明が足りない。


「フォレストボアが、ブラッドベアに喰われたあとだったんですよ~」


 クリスはすかさず補足を加えた。ガインはサミアン以上に手がかかる。


「そうか、それは骨が折れたな。ブラッドベアは、さすがにここでは手狭だな。解体所で獲物を確認させてもらおう」


 全員で移動する。

 周りの冒険者達は、ギルド長とSランクが揃って解体所に向かうのを見て、ガヤガヤと騒ぎ始めた。

 解体所に着くと、数人の所員が集まってきた。


「この辺でいいな。よし、ガイン出してくれ」 

「ああ」


 ガインは、短い一言で済ますと、マジックバッグから2頭のブラッドベアを出した。


「うん。まあ想定内だ」


 レオルドは、少し驚いた表情をしたものの、あまり動じた様子はない。

 だが所員は違った。ブラッドベアはAランクの中でも上位種で、グリフォンと同じくらいの価値がある。それを2頭同時に持ち込まれることなどあまりないのだろう。


「おお、一体は矢と短剣のみかよ! 相変わらずデタラメだなぁ」


 レオルドは感心したように、そう言った。


「うむ。俺の短剣がクリスの短剣に当たり、喉が潰れたようだ。運がよかった」


 レオルドは「運がよかった」で済ますのかよ?とでも言いたそうに片眉を上げたが、おそらくガインはいつもこんな感じなのだろう、無言で状態を調べ始めた。


「うん。2体とも矢傷は多いが、ブラッドベアは内臓がキレイなら大丈夫だ。おいっ、換金の準備をしてギルド長室に運んでくれ」


 確認を終えたレオルドは、近くにいた解体所の所員にそう告げると、またギルド長室に向かって歩きだした。


「あの、あとは換金して帰るだけなので、サミアンを離してはいただけないでしょうか」

「なにを言う! まだ来たばかりではないか! なぁ、サミアン。あ、おやつあるぞ」

「おやつっ!? おかあたま、タミアンは、ここもうちゅこちにいまちゅ」


(ここに入る前に、人前では言わないって約束させたのに!!)


 ここはまだ他の冒険者もいるホールだ。おれが「おかあたま」と呼ばれることに違和感を感じる者も多いだろう。


「おとうたま、レオたまのお部屋に行って、いいでちゅか?」


 サミアンは「おやつ」に我を忘れて、ガインのことも「おとうたま」と呼び出した。


 ここに、少し風変わりな夫婦が爆誕した……


「バキッ!」


 カウンターの後ろでは、クネクネがペンをへし折る音が響いた。





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