33.お留守番
「モナばあちゃん、フォレストボアの情報もらってきたよ!」
その時、ドアを叩く音と共にニコが顔を出した。
(ドア叩く意味あるのかな?)
「そうかい。で、どうだった?」
「フォレストボアは、8頭もいるんだって、村長はSランクがいても二人で大丈夫かなって」
(それ、村長は暴露されたくない内容だぞ!)
「ククッ、そりゃすごい情報だね」
「二人ではありまてん。たん人でちゅ」
サミアンが鼻息荒くそう言うと、ニコは不満そうに口を尖らせた。
「おまえみたいなチビが討伐に参加できるわけないだろ?」
「タミアンは、チビではありまてん。フォレチュトボアの前にも立ちはだかりまちゅ!」
クリスは、サミアンを黙って見つめた。
サミアンは毎回、平気な顔で危険に飛び込んでいく。不死の体で200年生きてきたので、危険に対する意識が低いのかもしれない。
「クリチュたま?」
「なあサミアン。もしおれが一人で飛び出して、死にかけて痛くて苦しそうにしていたらどう思う?」
「クリチュたまが? いやでちゅ! タミアンが治ちまちゅ!」
「治せなかったら?」
「……」
サミアンはクリスを見上げ、しばらく考えると、口を開けて悲壮な顔になった。
「討伐に行ったらだめでちゅ!」
「うん。おれも初めて会った時みたいなサミアンは、もうみたくない」
クリスがそう言うと、サミアンは「ハッ」と何かに気づく。
「タミアン、今日はおるちゅ番ちまちゅ」
「うん」
クリスはそれだけ言うと、サミアンを持ち上げて、ぎゅっと抱き締めた。
「ちんぱいかけて、ごめんなたい」
「うん」
ずっと黙って二人を眺めていたガインが、口を開いた。
「フォレストボア8頭くらいなら危険はないぞ」
(空気読めっ!!)
怒りを覚えるレベルでデリカシーのないガインに腹を立てるクリスだったが、ニコはそんな男を尊敬の眼差しで見つめていた。
「さすがSランクだね!」
「ああ」
(「ああ」じゃねぇよ!)
「でも、フォレストボアは毎日のように来ていたけど、ここ2日は来てないみたいだよ。もう来ないかもって村長が言ってた」
「そうか、山に帰ったのならいいが、また現れる可能性はある。調べておいた方がいいだろう。俺達はこれから調査に向かう。村長にはそう報告しておいてくれ」
「わかった!」
ニコは、Sランク冒険者に直接用事を頼まれたことが嬉しいのか、すぐにモナの家を出ていった。
「サミアンは……」
ガインが言いかけると、サミアンはトコトコ歩いてモナの隣まで行き、その場にちょこんと伏せた。
「タミアンは、モナたまとおはなちちてまちゅ」
「そうか」
サミアンの言葉を聞いたクリスは、ただ優しく微笑んだ。
ガインとクリスは2人で山沿いの林に向かった。
「あそこは、勝手に飛び出さないと学んだサミアンを褒めるとこだろ? なぁ~にが『フォレストボア8頭くらいなら、危険はないぞ』っだ!」
「……それはおれのモノマネか?」
「そこは、どうでもいいだろ!!」
ガインにデリカシー教育をしながら林の中を行くと、複数のボアの足跡と、土を掘り起こしたような跡を見つける。
「掘り起こされた土の乾き具合からみて、ここにいたのは3日くらい前かな?」
「ああ、村長の言うとおり、山へ帰った可能性が高いな。もう少し奥も探ってみるか」
クリスとガインは、足跡を追いながら、林の奥へと入っていった。
途中、ガインが血の臭いを嗅ぎ付け、気配を消しながら慎重に近づく……
そこで見つけたのは、8頭のフォレストボアの死骸だった。
「ひどい。何があったんだろう」
「喰われているな。近くに格上がいるんだろう」
(Bランク魔獣の格上って……)
「ガイン、Aランクには滅多に遭遇しないって言ったよな」
「ああ」
(またなのか……)




