27.200年の孤独
「『ふろうふち』ってなんでちゅか?」
「歳をとらないし、死なないってことだな」
(なぜ、レオルドに聞くんだ?)
「タミアン、とちとらないち、ちんだことありまてん」
(「し」が多い!)
「ほら、コイツもこう言ってるぞ」
なぜか、レオルドは100%サミアンを信じることに決めたようだ。
クリスも少し、心を動かされている。最初から先入観でそんなわけないと思っていたが、思えば不思議なことだらけだ。
ガインも肉球型の痣も、異常な治癒力も、白狼と同じ力だと言っていた。
本来疑うほうが、難しいのだが……
(なんか、アホ面でこっち見とる)
サミアンの見た目が、肯定することを拒否する。
ガインも頭の中で、否定と肯定を繰り返しているのか、額に汗まで浮かべている。
レオルドは、そんなガインとクリスを「しょうがない奴だな」とでもいいたげな顔で、見ていた。
「お前ら頭固すぎるんだよ。おれは人を見る目には自信がある。嘘つきはすぐにわかる。んでもって、サミアンは嘘をつくような奴じゃねぇ」
目が覚めるとはこういうことか。
レオルドの言葉に、今までサミアンの言葉を妄言だと決めつけていた自分を殴りたくなった。
サミアンは、嘘はつかない。
(わかっていたじゃないか……)
「ガイン、おれもサミアンは白狼だと思う」
クリスがそう言うと、ガインも観念したのか、黒い髪をガシガシ掻いて「はぁ」と息をついた。
クリスは以前、リトナのギルドの受付でアリアとした会話を思い出した。
「サミアンおまえは何歳だ?」
「にひゃくたいでちゅ」
「……」
つかの間の沈黙が訪れる。
「タミアンはこの中で一番おにいたんでちゅ」
「そ、そうか。おれは信じるぞサミアン!」
レオルドはそう言うが、さすがに顔がひきつっている。
「200年の間に痣が出現したことはなかったのか?」
今まで全力で否定していたガインは、完全降伏したのか、冷静にその言葉を紡いだ。
「タミアンにやたちくちてくれたのは、クリチュたまが初めてでちゅ。だから『ありがとう』ってちたら、ピカッてなりまちた」
(200年だぞ!? 一人もいなかったのか? あの汚い姿で200年も一人ぼっちでいたのか?)
「クリチュたま?」
クリスの目からは大粒の涙が溢れた。滝のように次から次へと涙がこぼれる。
みんなは知らない。出会った時のサミアンがどんな姿だったのか、子供達に何をされていたのか。
もっとひどい目にだってあったかもしれない。
瀕死になっても死なず、傷が治ってはまた……
「ずっど、ひどりだっだのがよ~!」
クリスは叫んだ。
サミアンの200年の孤独を思うと、叫ばずにはいられなかった。
「たまにご飯をくれるひとはいまちた。でも、タミアンを洗ってきれいにちてくれたのは、クリチュたまが初めてでちゅ」
クリスは、嬉しそうにそう言うサミアンをレオルドの腕から奪い、抱きしめる。
「クリチュたま? どうちて泣いているんでちゅか? どこか痛いんでちゅか?」
(そうだよ! 心がめちゃくちゃ痛いっ!!)
「ぞんなの、ザミアンががわいぞうだ!」
クリスはサミアンを抱きしめたまま泣き続けた。
サミアンの200年分の涙を代わりに流しているかのように、涙が枯れることはなかった。




