25.特別報奨金
「どうちてでちゅか!? タミアンも王宮にいきたいでちゅ! タミアンもパーティーメンバーなのにっ!」
王宮に上がるにあたり、正式に召集されたガインとクリス以外は中に入れないことがわかった。
困ったクリス達は、王宮に向かう前に冒険者ギルドに立ち寄り、レオルドにサミアンを預けることにした。
なぜレオルドかといわれれば、レオルドがサミアン大好きなことに加え、もしサミアンが勝手な行動をしても確実に捕獲できるからだ。
レオルドは、今でこそギルド長をしているが、若かりし頃はSランク冒険者として活躍していたらしい。
「じゃあな。サミアンは任せろ」
そう言って微笑むレオルドの左腕には、これでもかと暴れるサミアン。
レオルドの表情とサミアンの動きがちぐはぐ過ぎて、サミアン自身もなぜ脱出できないのか不思議なようだ。
レオルドの右手が、恐ろしい速さでサミアンを抑え込んでいるとも知らずに……
(面白いものを見た)
トルクトス王宮
王宮の正門で身分を確認され、案内役の兵士について長い廊下を歩く。
白い石造りの床は磨き上げられ、クリスの顔が映りそうなほど光っていた。
壁には大きな絵画や装飾品が並び、贅を尽くしたといった印象だ。
今のクリスは男物の服を着た冒険者である。
磨き上げられた王宮を歩いていると、さすがに今の格好が場違いなものに思えてくる。
隣を見る。
ガインはいつもより少しだけ、険しい表情をしているが、概ねいつも通りだ。
「緊張とかしないのか?」
「5回目だからな」
(そうだよね。Sランクだもん)
「なんか機嫌悪くない?」
「そう見えるか? 気をつけよう」
「?」
クリス達は大きな扉の前まで案内された。
「Sランク冒険者ガイン殿。Aランク冒険者クリス殿。ご入場ください」
衛兵の声とともに、左右から扉が開かれる。
中には左右に騎士や文官が並び、その奥、一段高くなった場所に国王が座っている。
二人は並んで進み出た。
決められた位置まで来ると、クリスは右足を引き、片膝をついた。
右手を胸元に添え、頭を下げる。
隣ではガインも片膝をついていた。
「面を上げよ」
国王の声に、2人は顔を上げる。
「久しいな、ガイン」
「ご無沙汰しております、陛下」
言葉遣いこそ丁寧だが、ガインの声は普段とほとんど変わらない。
国王もそれを気にした様子はなかった。
「ベルカと王都を結ぶ街道のグリフォンを討伐したそうだな」
「はい」
「十年ものあいだ、幾度となく討伐隊を送りながら仕留めることのできなかった魔獣だ。よくやってくれた」
「お言葉、ありがたく頂戴いたします」
淡々と答えるガインに、国王の視線が隣へ移った。
「そなたがクリスか」
「はい。クリスと申します」
「報告は受けている。グリフォンの両目を二本の矢で同時に射貫いたそうだな」
「はい」
「見事な腕だ」
「もったいなきお言葉、痛み入ります」
クリスは軽く頭を下げた。
「うむ。グリフォンが討伐されたことで、すでに街道の補修も始まっている。あの道が再び使えるようになれば、人や物の流れも大きく変わるだろう」
実際、王都へ向かう途中でも工事をしている者達を何度も見かけた。
自分達が倒した一匹の魔獣が、それだけ多くの人間の生活に影響を与えていたのだ。
「その功績を称え、国より特別報償金を授ける」
国王が手を上げると、控えていた文官が前へ出た。
「特別報償金、一人金貨100枚でございます」
(一人とは……)
以前なら腰を抜かしていた金額だが、最近は金貨数十枚単位のやり取りが続いている。
クリスの金銭感覚は、だいぶ壊れ始めていた。
「ありがたく頂戴いたします」
クリスは礼を述べ、差し出された目録を受け取った。
その一連の動作を、ガインが横目で見ていた。
授与を終え、二人は再び頭を下げて謁見の間を退出した。
扉が閉じる。
「終わったな」
「ああ。思ったより早かった」
クリスは何事もなかったように歩き出す。
だが、ガインがついてこない。
「どうした?」
振り返ると、ガインが妙な顔でクリスを見ていた。
「おまえ……」
「王宮に来たことがあるのか?」
「ないけど?」
即答した。
少なくとも、この国の王宮には来たことがない。
「そうか」
「?」
今日のガインは、いつもの率直さに欠ける気がする。
(デリカシー会議が役にたったか?)




