23. 庇護欲か?
ガイン視点のお話です。
初めてパーティを組んだ。
白狼を探す旅をしているガインは、今までパーティーを組んだことがなかった。
パーティーを組むには同じ目的が必要だと思っていたからだ。
出会ったのは、どう見ても犬にしか見えないにもかかわらず、自分を「狼」だと言い張る白くて丸い何か、そして、なぜか男の姿で旅をする少女クリスだ。
クリスの手の甲には、伝承に聞くものと似た痣があった。
200年ほど前にトルクトスが人間に侵略された時、先頭に立って戦った狼族は「根絶やし」という言葉が大げさではないほどまでに、数を減らした。
残ったのは里に残っていた女子供の数人で、その時点で伝承も曖昧になった。
それゆえ、ガイン自身、その痣が何なのかもわからないのだ。
今では更に数を減らした狼族だが「白狼は生きている」という事だけは確信のように語り継がれている。そしてガインの家系であるビスカルディーニ家は、白狼の血を引き、白狼を守ることを定められた一族だった。
それゆえ、若き日のガインは白狼を探す旅に出たのだ。
(まさかこのおれが、自らパーティーに誘うことになろうとは……)
クリスは不思議な少女だった。
最初に度肝を抜かれたのは、グランドバジリスクの両目を、一度に射貫いた瞬間だ。鳥肌が立つ程見事な一射だった。
だが、この時はこんなに上手くいく確率は5射の内の1射程度だと思っていた。
それが覆されたのは、グリフォン討伐だ。クリスの両目打ちは偶然ではなく、むしろ外す可能性が5射の内1射なのではないかと思われた。
アーマードボアの相手を任せたのも、その腕を信頼できたからだ。
サミアンの安全を確保したら駆けつけるつもりではいたが、見事に1人で仕留めてみせた。
だが本人は自分の価値を全くわかっていなかった。
グランドバジリスクの報酬を渡したら「両目を潰しただけだから、受け取れない」と言ってきた。
その「両目を潰す」ことにどれ程の価値があるのかも知らずに。
ガインは少しイライラした。
他人の事などどうでもいいと思って生きてきた。
人の生き方に口を挟もうと思ったこともない。
それなのに「相応しい道具を持てば少しは自己評価があがるか」と思い矢筒を与えてみたり、悪口を言った冒険者相手に喧嘩をふっかけてみたりと、最近の自分はどうかしている。
最初はクリスが女だとは知らなかった。ならば、妙に気にかかるのはなぜなのか?
ただ、クリスが自分の価値がわからなくなる程、人と接してこなかったのだということはわかる。
人に認められずとも、ただ実直に腕を磨き、ここまで一人で旅をしてきたのだ。
ガインは、そんな不器用なクリスがもどかしくて堪らない。そして自分のことでもないのに、ついついいつも首を突っ込んでしまう。
この感情はなんだろう。
(庇護欲か……)




