22. 毎回じゃないっていったよな?
「シュシュシュンッ」
クリスは空中で、上を向いて口を開けたボアの口内めがけ、3本の矢を放った。
そして、そのままボアの背中に着地すると、腰の短剣を右の目に深く突き刺した。
「ギエェェェ!!!」
暴れるボアから短剣を引き抜き、角度を変えてもう一度突き刺す。
ボアから振り落とされるが、クリスの短剣が脳まで達したのか、ボアはその場に「ドォン」と音をたて、横倒しに倒れた。
「ハァ、ハァ、ハァ」
息が荒い。
心臓も爆発しそうなほど、強く鼓動している。
そこへ、サミアンを咥えた黒い狼が現れた。
「倒したか?」
(倒したかじゃねーよ)
極限の緊張を強いられたクリスの意識がプツンと途絶える。
「クリチュたま~~~!」
その場にはサミアンの悲鳴だけがこだましていた。
「カッポ、カッポ」と馬の蹄の音が聞こえる。
(あれ、おれ、なんで馬に揺られているんだ?)
「目が醒めたか?」
やけに近くでガインの低い声が響いた。
「クリチュたま?」
「んっ……」
クリスが目を開けると、そこは馬の上だった。
目の前には心配そうにクリスを見つめるサミアン。
そして背中にも温もりを感じる。
状況はなんとなくわかったが、一応後ろを振り返ってみる。
「なんだ?」
ガインがいる。
なぜか、3人で1頭の馬に乗っている。
「これ、どういう状況?」
「おまえが目を覚まさないから、眠ったまま運んだ。日が暮れる前に次の町の門をくぐりたいのでな」
「おれ、なんで寝ちゃったんだろう?」
「覚えていないのか? おまえは1人でアーマードボアを討伐し、その場に倒れた」
(アーマードボア……?)
「ああっっ!! アーマードボアッ!!」
「思い出したか?」
「ああ。それよりおまえ、Aランクは滅多に遭遇しないって言ったよな?」
「……ああ」
「金貨何10枚は毎回じゃないっていったよな?」
「……ああ」
「言ったよなっ!」
「……言ったな」
「なんで毎回遭遇してるんだよ!」
「おれが知るか!」
自分を取り戻したクリスは、ガインの馬を降り、自分の馬に乗り換える。
「クリチュたま。ごめんなたい」
サミアンは、ガインの馬の上でうつむきがちに呟いた。
自分のせいでクリスが危ない目にあったと思い反省しているようだ。
クリスは両手を広げ、サミアンに飛び移るように促した。
「クリチュたまぁ~~~」
サミアンは、馬の上をジャンプして、クリスの馬に飛び移った。
そしてクリスのお腹に顔を押しつけると「わんわん」声を出して泣き出した。
(犬だけに)
「もう、勝手に飛び出したらダメだぞ」
「はいっ、ズビッ、もうちまてん。クリチュたま~、ズビッ」
(途中の「ズビッ」が気になるが、しばらくこのまま泣かせてあげよう)
そうして3人は王都手前の町まで到着した。




