19. 半分貰うぞ
「おまえに高速で近づくグリフォンの両目を同時に射貫くことができるのか?」
「ひっ、ひいっ。で、できませんっ!!」
「おれにも無理だ。だがクリスはできる。他に言いたいことはあるか?」
「ひっ、ございませんっ!」
ガインが胸ぐらから手を離すと、男はその場に崩れ落ちた。
そして、ガインはクリスの方を向き、言い放つ。
「おまえも言われっぱなしで、ヘラヘラするな。それはおまえ自身への冒涜だ」
そんなことを言われると思っていなかったクリスはショックを受けた。
だが、ガインが正しい。
こうやって細かい場面で、自らの価値を下げていたのだと思い知る。
「ああ……」
クリスにはそう答えることがやっとだった。
珍しく落ち込んだ様子のクリスに、サミアンがすり寄る。
サミアンなりに慰めているようだ。
そんな心配顔のサミアンを見ていたら、少しだけホッと心が緩み、前向きな気持ちを取り戻した。
(そうだな。これから自分の価値を証明することはできる。自分の心持ち1つで、自分の価値は変わるんだ。落ち込むだけ時間の無駄だな)
クリスはサミアンを抱き上げると、ガインに向かい「報酬は半分貰うぞ」と言って受付に向かった。
「ああ、勿論だ」
背中からガインの声が聞こえてくる。
この一件でクリスはベルカのギルドで一目置かれる存在となった。
「こちら、グリフォンの討伐報酬金貨80枚になります。こちら特別報償の対象となっておりますので、王都に報告後、追ってご連絡いたします」
(金貨80枚!? グランドバジリスクより多いじゃないかっ!「半分寄越せ」とか言っちゃったぞ!!)
「特別報償金は、討伐報酬を下回ることはないぞ」
クリスの心の叫びが聞こえたのか、ガインはイタズラそうな微笑みで、クリスにそう告げた。
ガイン行きつけの高級料理店の個室に入る。
サミアンが「初討伐成功を祝いたい」と言い出したので、その意見に賛同することにしたのだ。
「とりあえずこれは、討伐報酬の半分だ」
そういってガインがクリスの前に金貨40枚の入った袋を置いた。
(ここにくる度、金貨が10枚単位で増えていく……)
クリスは遠くを見つめるような目で袋を見つめた。
これから、これ以上の額を手にすると思うと、現実逃避したくなる。
「ガインはいつもこんな生活なのか?」
「こんなとは?」
「ギルドいく度、金貨が何10枚も入ってくる」
「そうでもない。なかなかAランクに出会うこともなければ、今回のように一人じゃ無理な場合も多いからな」
(そうか、たまたまか。よかった)
「ガインたま! タミアンのほうちゅうがありまてん!」
気がつくと、サミアンが頬を膨らませている。
(まあ、今回はグリフォンのエサになりかけたからな)
クリスは袋から金貨を1枚取り出すと、サミアンのリュックを開け、中の小銭入れに入れた。
(あんまり多いと何買ってくるかわからんからな……)
「金貨でちゅ!! リュックがたくたんかえまちゅ!!」
「たくさん買ってどうする! 1つで十分だ!」
なぜか「えー」と不満げな顔をするサミアンだが、料理が並べられると、すっかり忘れて食べ出した。
「ガイン、これ……」
「ああ、ひき肉の煮込みを作ってもらった」
前回のことを覚えていたのか、サミアンに用意されたのは、最初の宿で出されたような素朴なメニューだった。
「クリスは何か買いたい物はないのか?」
「そうだな。この痣を消したいから伝承とか書かれた本が欲しいかな」
「その痣は狼族に伝わる物に似ているが、つけたのが犬ではな。犬族の伝記でも探してみるか」
「タミアンはおおかみでちゅ!」
「ああ、わかった狼族の伝記も探すよ」
(めんどうなので、適当に答える)
「ならば明日にでも王都へ向かおう。ベルカより多くの情報が得られるだろう。いずれにせよ報償金の受け取りは、王宮に出向かねばならんからな」
「王宮っ!?」
「当たり前だ。報償金の出所がどこだと思っているんだ?」
(えー、めんどくさ)




