18. 立ちはだかる……
セルディア王国リトナの冒険者ギルド
「この者の捜索を依頼したい」
アリアの前にはクリスによく似た冒険者の人相描きが置かれていた。
そういえば、クリスが訪れる少し前に、この人物に酷似した女性の捜索依頼が出ていた。
「まあ、この方でしたら知っておりますわ」
「なにっ? 本当か?」
「ええ、名前までは覚えておりませんが、10日以上前にこの町を出て行かれましたわ」
「そ、そうかっ、で、どちらに向かった?」
「えーっと、確かセルディアの王都でしたかしら? しばらくこの国で活動するようなお話だったと思いますわ」
「そうか、情報提供感謝する」
アリアの前には、有力な情報提供者への報償金、金貨3枚が置かれている。
(これは、ありがたくいただいておきましょう。それにしてもタミアンちゃん達、大丈夫かしら?)
トルクトス王国ベルカ
ベルカの冒険者ギルドに戻ったクリスたちは、例のごとく直接解体所を訪れた。
「よう。パーティー結成おめでとさん」
ボルグの言葉に全員が目を丸くする。
「ククッ、なんで知ってるのか? って顔だな。ソロでSランクまで登り詰めたガインが、突然心変わりしてパーティーを組んだんだ。ギルドじゃその噂で持ちきりだぞ」
「そうか」
(あまり目立ちたくはないが、当然と言えば当然か……)
「それよりパーティー初討伐はどうだった? またワイバーンなんて狩って来たんじゃないだろうな?」
ボルグが笑いながら冗談を言うが、ガインは「今回はワイバーンじゃない」と冷静に言いながら、マジックバッグからグリフォンを取り出した。
「グ、グリフォンじゃねぇか!? こいつは10年も前からベルカと王都を結ぶ街道に住み着いていて、商隊はずっと遠回りを余儀なくされてたんだぞ。コイツがいなくなったとなれば交易が変わる。間違いなく国から特別報償金が出るぞ!」
(あまり目立ちたくないのだがっ!?)
「うむ。それは面倒だな」
「いや、面倒って……」
ガインの一言に、ボルグは呆れてそれ以上言葉が出てこない。
討伐してしまったものは、仕方がない。討伐の証拠がなければ、王都までの最短ルートは閉ざされたままになってしまう。クリス達の事情でマジックバッグにしまい直すわけにはいかないだろう。
グリフォンを確認したボルグは、目を細めた。
「こりゃあ……」
正確に両目を射貫かれた首。そして、羽の根元の矢傷。
「ガイン。おまえ思わぬ拾い物をしたな。今回もAランク魔獣を両目撃ちとは……」
「ああ、コイツは仲間に恵まれなかっただけで、実力だけならAランク上位だ」
(まだおれ自身信じられないけどな)
褒められ慣れていないクリスは二人の会話が、なんだかこそばゆくて仕方ない。
「グリフォンを討伐できたのは、タミアンのおかげでちゅ」
クリスだけが褒められるのが気に障ったのか、サミアンがボルグの前で訴える。
「坊主も戦ったのか?」
「はいっ!!」
「ああ、いい囮になった」
「囮って、おまえら……」
ボルグがクリスとガインを鬼畜でも見るような目で見つめる。
「こいつは、自ら囮になった」
「はいっ! タミアンは、みぢゅからグリフォンの前に立ちはだかりまちた!!」
(えっ? サミアンの中ではそういうことになっているの?)
「『立ちはだかった』って…… 危ないからホドホドにしておけよ。坊主」
「はい。ごちんぱいありがとうごだいまちゅ」
ボルグから無事に受領証を受け取ったクリスらは、換金のため、ギルドに立ちよった。
「おおっ!! ガイン様だ」
「グリフォン討伐おめでとうございます!!」
(めっちゃ目立っている)
グリフォンを見た解体所の所員が、ふれ回ったのだろう。
ギルド内は、大物討伐後特有の興奮に包まれていた。
慣れているのか、ガインは、構わず受付に向かう。
少し遅れて歩き出したクリスは、心無い一言にさらされることになった。
「けっ、Bランクがガイン様のおこぼれを貰うとは。上手くやったもんだ」
(うん。まあそう思うよね)
クリスは気にせず通り過ぎようとしたが、長い三角耳をピクリと動かしたガインが振り向き、戻ってくると、悪口を言った冒険者の胸ぐらを掴んだ。




