17. 初パーティ戦
アルヴェリア王国 ローヴェル辺境伯邸
「エレノアはまだ見つからんのか」
「はっ、セルディア王国まで捜索範囲を広げ、人相書をばらまきましたが、まだこれと言った情報は掴んでおりません」
(もう死んでいるのか……いや、あの娘は剣術も弓も14歳にして並みの騎士以上だった。そう簡単にくたばるなんてことは……)
「人相書は女の姿だけか?」
「は? どういうことで?」
「奴は、男の姿で我々の目を眩ませているやもしれん」
「は、でしたら1つ耳よりな情報がございます。セルディア王国リトナの冒険者ギルドに出入りしている男が、人相書に似ていると……」
「なにっ? それを早く言わんかっ! すぐに刺客を送り込め! おそらくその男がエレノアに違いない!」
トルクトス王国ベルカ
「ガイン、1つだけ聞いていいか? 狼の目って金色じゃないのか?」
クリスはどうしても不思議に思っていたことをガインに尋ねた。
「普通はな。この瞳は白狼とその血を引き継ぐビスカルディーニ家のみの特徴だ」
「なるほど、人間の間では『狼は反乱を引き起こす危険因子』として、子供の頃から金目の犬型獣人を見つけたら通報するよう教えられるけど、こうして生き残っていたんだな」
「通報するか?」
「はっ? するわけないだろ。何年前の話だよ。だいたい、獣人の地を侵略したのは人間だろ?」
少し緊張した面持ちで質問に応じたガインは、安心したのか、フッと表情をゆるめた。
「ふう。よかったでちゅ。タミアン通報たれないで……」
「安心しろ、誰もおまえを狼だとは思わない」
(だから、ハッキリ言い過ぎなんだよ)
翌日はパーティー結成記念として、ギルドで申請後、グリフォン討伐に向かった。
「討伐依頼はずっと出ていたのだが、奴らはワイバーンより頭がよくて強い冒険者には近寄らない。空の上では、こちらからは手が出せないしな」
なるほど、ガイン程の冒険者でも、一人では限界があるようだ。
弓と短剣を扱うクリスにとっても、Aランクの大物を単独で相手にするのは骨が折れる。
「タミアンは、なにちゅればいいでちゅか?」
(頼むからおとなしくしていてくれ)
グリフォンが出現するといわれる地点に向かうと、クリスとサミアンは、ガインと別れ高台の崖に向かった。
「ダメだな、そう簡単に近づいて来ないよな」
木の上で身を潜めて、グリフォンが近づいて来るのを待っているが、高台は相手も常に警戒しているようだ。ちなみにガインは気配を消して下の森に潜んでいる。
クリスはサミアンのリュックから、今朝宿で用意してもらったサンドイッチを取り出し、サミアンに渡した。
(長期戦になるな。覚悟はしていたけど)
「ふう。おなか一杯でちゅ。タミアン、ちょっとおたんぽちてきまちゅ」
「えっ?」
サミアンはクリスに止める暇も与えず、木の枝をピョンピョン跳びはね、地上に降りていた。
「あ、馬鹿っ!」
サミアンは崖の縁をのんきに歩き出した。
グリフォンは強い冒険者には近寄らないが、それ以外は格好の「獲物」だ。
遥か遠方をゆったり飛んでいたグリフォンが、獲物を見つけ、急速に近づく。
「速っ!」
だが、驚いたのは一瞬だった。
クリスは反射的に二本の矢を抜き、同時につがえる。
「間に合えっ!!」
2本の矢はサミアンの目前まで近づいていたグリフォンの両目を直撃する。
突然視界を奪われたグリフォンは、上へと急上昇を試みるが、クリスはすかさず、羽のつけ根の柔らかい部分を狙い矢を放つ。
「ギェェェ!!」
羽ばたきを遮られたグリフォンは、ガインの待つ森へと落下していく……
「ザンッ!!」
下をのぞき込んだクリスは、その光景に表情を失った。
「届いたら一撃なんだよな……」
「クリチュたま! タミアンは強いぼうけんちゃなのに、グリフォンが近づいてきまちた!!」
(来ないと思っていたのかよ)




