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サミアンの不思議な肉球~謎のもふもふを拾ったら家族が増えました~  作者: 三国華子


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14/49

14. 自分の価値

(1度の移動で金貨120枚……そりゃ特大サイズのマジックバッグも買えるはずだ)


 ギルドを出て、宿を探すため街を歩く。


「タミアン、おなかちゅきまちた」


 そういえばサミアンは、峠で冒険者を助けたあとから、よく眠る。ガインが運んでくれるおかげで、クリスの腕は痛まないが。

 痩せた体であれだけの治癒魔法を使ったのだ。体力が落ちているのかもしれない。


「ガイン、先に食事にしてもいいか?」

「もちろんだ。獣型でも小さければ入れる店がある。ついて来てくれ」


 ガインの地の利も助かるが、さすがは獣人の町だ。王都はしらないが、この辺は明らかに人間より獣人の方が多い。

 サミアンと旅を始めてからというもの、ゆっくり食堂で食事をしたのは、最初の宿だけだ。この国に来たのはサミアンにとっても正解だったかもしれない。


(え? ここ?)


 ガインが立ち止まった先には、普段クリスが立ち寄る店とは、格の違う店が建っていた。


「あの~。ガインさん?」

「なんだ?」

「おれたち、ここで食事するほどの持ち合わせが……」

「かまわん。おれのおごりだ」


(言ってみてぇ~!こんな高級そうな店の前でこのセリフッ!!)


「ここは個室もあるからな。サミアンも気兼ねなく食事ができるだろう」

 

 店に入ると、ガインの顔を見たウェイターは、何も聞かずに個室に案内した。


「いつもこんな個室で食事とは、ガインもすみに置けないなぁ」

「なにを勘違いしている? 個室じゃないと、知らない奴に話しかけられてゆっくり食事が出来ないだけだ」


 なるほど、Sランク冒険者には有名税があるようだ。

 たくさん稼いでも、無駄な出費も多そうだ。

 

「先におまえの分の報酬を渡しておこう」


 席に着くとガインはクリスの前に、重そうな袋をポンと置いた。


「報酬?」

「ああ、グランドバジリスクの討伐報酬の半分で、金貨30枚だ」


「き、金貨30枚っ!? そんなに受け取れるわけないだろう!? おれは両目を潰しただけだぞ!」


 クリスがそう言うと、ガインは少し面白くないものをみるように、眉間にシワを寄せた。


「おまえ、ずっとソロなのか?」

「ああ、レイドなら参加したことがあるけど、不正が多いからやめた。ここ2年程は誰とも組んでいない」

「そうか、おまえの弓の腕は、パーティーで活動していたなら、もうとっくにAランクになっているはずだ」 

「えっ?」


「先日のグランドバジリスク。おれ1人では難しかった。アレの邪眼の効果は身体能力低下、剣士には一番厄介な能力だ。それに警戒心も強く、弓を一度外せば、2射目以降が当たることはほぼ無い。一度で両目を潰せたからこそ、おれに攻撃の機会があったんだ。それができる弓の使い手は世界に数人。おまえは、もっと自分の価値を知ったほうがいいだろう。そんなんだから、レイドでカモにされるんだ」


(褒められたのだか、貶されたのだか、わからんのだが……)


「クリチュたまは、ちゅごいんでちゅ! ゲイルを1度にタン羽射ることができまちゅ!」

「3羽? 3本同時ということか? それはすごいな」


 2人からの賛辞に、クリスはいたたまれない気持ちになった。


(おれは、そんなすごい奴じゃないのに……)


 サミアンと旅を始めてから、たった数日で世界が変わったような気がする。

ひとりで旅した三年間には、こんなふうに自分を認めてくれる者はいなかった。

サミアンの孤独を癒していたつもりが、自分が癒されていたことに気がつく。

 

「あ、ありがとう」


 クリスは金貨30枚を、自分への正当な評価として受けとることにした。



 目の前には、きれいに盛り付けされた料理がならぶ。


「うまっ! この肉、歯がなくても噛みきれそう」


 クリスは、高級肉を噛みしめながら感動していた。

 だが、ふとサミアンを見ると、あまり食が進んでいなかった。


「どうした? サミアン?」

「タミアンは、ちいたいお肉をお鍋で煮たのが食べたいでちゅ」

「小さい肉? ああ、ひき肉か」

(それ最初の安宿のメニュー!)


 サミアンには、クリスと最初に食べたあの食事が、一番のご馳走だったようだ。


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